「同族嫌悪かな…」エルフのフリーレンが“人間”の僧侶ザインを嫌った本当の理由に、ファン感嘆「“継ぐ”物語が素敵」

僧侶として天性の才を持つ新キャラクター「ザイン」との運命的な出会いが描かれた、アニメ『葬送のフリーレン』第13話(12月1日)。シュタルクとフェルンがザインを旅の仲間に加えようと提案する一方で、フリーレンは人間である彼に「同族嫌悪かな」と不可思議な感情を抱いていた。それは同じ“魔法の才にあふれた者”としての発言か、はたまた別の理由か。彼女の何気ない一言は、やがて勇者ヒンメルとの“出会いの物語”へとつながっていく……。フリーレンの本当の想いを知った視聴者からは「脚本の運びが見事」「“継ぐ”物語が素敵」など、感嘆の声が飛びかった。

(以下、アニメ最新話までのネタバレを含みます)

◆“底なし沼”からの救出

勇者ヒンメルの死去から29年後。“一級魔法使い”の資格を取るために魔法都市オイサーストを目指していたフリーレンたちは、深々とした森林を抜ける道中で薬草集めにいそしんでいた。そんな中、手提げのカゴをいっぱいにしたフリーレンの前に見知らぬ男が顔を出す。……というより、顔が出ていた。その男は底なし沼にハマり、すでにほぼ全身が沈みかけていた。手を汚したくないフリーレンはひとまず腰を据え、男の話を聞くことにした。なんでも男は昔、“冒険者”に憧れていたと言う。

その男には子どもの頃、ともに冒険者に憧れていた親友がいた。大人になったある日、男は親友から「一緒に冒険者にならないか」と誘いを受けたが、差し出されたその手を取ることなく今ここにいる……。「あの時、あの手を取っていたら何かが変わっていたんだろうな。今でも後悔しているよ」。10年も昔の話だと寂しそうに笑う男に、フリーレンは尋ねる。「なんで私にそんな話をするの?」。男は自分の“昔話”になぞらえて「お前がこの手を取ったら、何かが変わるかもしれないぜ」と、泥まみれの左腕を伸ばす。だがいよいよ余裕がなくなってきた男に彼女は「もう少し時間いい?〈底なし沼から引っこ抜く魔法〉、思い出すから」と変わらずそっけない。沼が男の喉元までを飲み込まんとしてようやく、スポンっという軽快な音が森に響き渡った。

無事助かった男を彼の村まで見送ったフリーレンたちは、「礼くらいするぜ?」という“お呼ばれ”も断って先を急ぐ。……しかし運命の悪戯(いたずら)か、この後一行はひょんなことから村へと引き返す羽目になる。

底なし沼にハマっていた男 「冒険者になりたかった」と語る目はどこか憂いを帯びていた

◆埋もれていた、天性の才

「あ、かまれちゃった」。背後から聞こえたシュタルクの声にフェルンたち2人が振り返る。どうやら毒ヘビにやられたようだ。一見ケロッとしているシュタルクの鼻から、ダラダラと血があふれている。フリーレンはあきれながらも魔法で毒の除去を試みるが、“それ”は本来、僧侶の分野。手練れの魔法使いである彼女でも対処は難しく、手持ちの“毒消し”も効きそうになかった。僧侶ハイターの愛弟子・フェルンは言う。「冒険者の死因の2割は毒だそうです」。一行は急ぎ、底なし沼から助け出した男の村へと引き返した。

村の教会を訪ねると、シュタルクの様子を見た神父が言った。「手遅れですね。数時間後には脳が溶け始め鼻から全部流れ出て……、死にます!」。あまりにショッキングな宣告に震え上がる3人。だが神父はこうも言った。「私の弟なら、あるいは……」。するとそこへ、見覚えのある男が顔を出す。「あれ、兄貴。こいつらだよ。俺のこと助けてくれたのは」。先ほどまで底なし沼にハマっていた、あの男だった。

思わぬ再会も束の間、男は気だるそうに鼻血を流すシュタルクを見るや否や、その肩にそっと手を乗せた。「これでチャラだな」。男の手から優しい緑色の光があふれ出す。シュタルクの鼻血がピタリと止まった。なんと男は、神父が不治と判断した毒を一瞬で治療してみせた。あっけに取られる一行を残し、男は笑顔でその場を立ち去る。「あれは天性の才だ」。つぶやくフリーレンに、神父は自分たち兄弟の“身の上”を語り始めた。

2人の両親は早くに他界しており、神父は男手ひとつで歳の離れた弟・ザインを育ててきたと言う。「冒険者になりたい」。子どもの頃のザインはよくそう言って、教会の屋根に登っては遠くを見つめていた。幼きザインの目には希望が満ちていた。しかし今では“夢”を諦め、“つまらない人生”を過ごす弟を神父は憂いていた。「どうか、あの子をこの村から連れ出してやってはくれませんか。きっとあの子は、ずっと背中を押してくれる誰かを探しているんですよ」

「もう脳みそ、鼻から出そうになる経験はごめんだぜ」。毒ヘビの一件で僧侶の重要さが身に染みていたシュタルクは、神父の頼みを受け入れようとフリーレンに提案。しかしなぜだろう。彼女はひとり、浮かない顔をしていた。フェルンが理由を尋ねても「同族嫌悪……かな」と、ぼやいた声が返ってくるだけ。エルフのフリーレンが、人間のザインを……? 彼女の言葉の真意は、2人にはさっぱり分からなかった。

才能あふれるザインの現状を憂い、神父(画像左)はフリーレンたちに弟を託す

◆同族嫌悪

夜、再びザインと顔を合わせたフリーレンたちは驚いた。底なし沼にハマっていた男が、今度は身ぐるみを剥がされていたのだ。「村長の1人勝ちさ……」。どうやらギャンブルで負け越した様子。タバコを吸い、センチな雰囲気を醸し出してはいるが、その実は“パンツ一丁のおっさん”。僧侶でありながら彼は、なんとも自堕落な生活を送っていた。

見かねたフリーレンが“話”を切り出すも、仲間を探すなら他を当たれとザインは視線を逸らす。冒険者になりたかったのは昔の話。「今さらだよ。俺はもっと早くあいつを追いかけるべきだったんだ」。ザインが口にした、10年越しの後悔。……不意に、フリーレンの頭の中で“同じ言葉”が響く。『今さらだよ』。それは、かつての自分の言葉だった。

今から80年以上前、フリーレンがまだひとりで暮らしていた頃のこと。「僕たちと一緒に、魔王を倒そう」。そう言ってきた勇者がいた。この時のフリーレンは500年以上も魔族と戦っておらず、すでに戦い方も忘れてしまっていた。もう取り返しがつかないほどの年月が経ってしまった。そんな風に語るかつての彼女は、勇者ヒンメルたちに「今さらだよ」と返した。フリーレンは過去の自分と今のザインの姿を重ね合わせ、「同族嫌悪」とぼやいていたのだ。

しかしだからこそ、フリーレンは思い出した。深く暗い、まるで底なし沼のような後悔の中にいた自分に、“あの日”ヒンメルが笑顔で言ったその言葉を。『それがどうした、フリーレン。僕は今の話をしている』

――「私は、今の話をしている」。ヒンメルの言葉を借りて、告げるフリーレン。それでもザインは「他を当たれ」と断り続ける。“あの日”の選択を後悔していないフリーレンは、彼を意地でも仲間にすると決める。たまには自分も誰かの背中を押してみるのもいい。かつて勇者ヒンメルが、そうしたように……。

才能あふれるザインの現状を憂い、神父(画像左)はフリーレンたちに弟を託す

◆背中を押してくれる誰か

あれからフリーレンたちはザインの勧誘に何度も挑戦し、そのたび断られていた。この村に滞在して、もうしばらくが経つ。何か“手”を探るため、彼の兄である神父を頼った一行はひとつの情報を得る。「年上のお姉さんが好きですね」。真顔で話す神父の言葉にフリーレンは首をひねるが、ふと自分が長寿の種族エルフであることに立ち返る。さっそく本人を前に、フリーレンは“先生からの教え”である投げキッスを披露して見せた。「坊やにはまだ早かったかな」。したり顔の小さな“お姉さん”に、ザインはため息をつく。こんなのはお姉さんじゃない。そもそも、何度言えば分かるのか……。「もういい加減にしろ!」。ついにザインは声を荒げた。

「親友を追いかけたいんじゃないの?」。改めて問うフリーレンに、ザインは一呼吸置いて答える。「あいつは『3年後には帰ってくる』と言ったんだ。あれから10年も経った。もう死んでいるに決まってんだろうが……」。まるで自分に言い聞かせるように話すザイン。弟の言葉をフリーレンの後ろで聞いていた神父は何も言わず、ただ彼を見つめていた。だが、勇者ヒンメルたちとの旅をきっかけに“10年の重み”を知ったフリーレンは、「まだ、たったの10年だよ。今会いに行かないと近い未来に後悔するよ」と返し、そして繰り返す。「私は今の話をしているんだよ、ザイン」。真摯に語り続けるフリーレンに、ザインはようやっとほほ笑んだ。

……ところが、出てきた答えは「いけない」。実は彼にはもう一つ、村を離れられない理由があった。ザインがまだ幼かった頃、あのハイターが村を訪れていた。ザインほどではなくとも十分な才を持つ神父に、聖都で働かないかと勧誘に来たのだ。もし聖都へ移るとしたら、弟であるザインもまた聖都へ。神父はハイターに感謝を伝えつつも、結局「あの子から故郷まで奪うことはできません」と、その申し出を断る。早くに両親を亡くした弟を想ってのことだった。そんな2人のやりとりを、幼きザインは影から見つめていた……。

「兄貴を置いて村を出るなんて、そんなことできるわけねえだろ」。10年前、ザインが親友についていかなかったのも同じ理由だった。思わぬ形で弟の本心を知った神父は眉間にシワを寄せる。そして、声を荒げた。「お前と私を一緒にするな!」。気づけば、兄は弟の頬をたたいていた。「私はあの時の選択を一度だって後悔したことはない。それに比べてお前はなんだ。いつまで後悔し続けるつもりだ」。兄の言葉が、その手のひらが弟の背中を押す。初めて見る兄の表情に茫然(ぼうぜん)自失のザインは、赤く腫れた頬にただそっと触れていた……。

夕暮れ時。川辺で時間をつぶすフリーレンたちの元へ、ザインがやってくる。「兄貴に謝ってきた」。落ち着いた声でそう切り出すと、「勘違いしないでほしい。優しい兄貴なんだ」と続けた。そうしてフリーレンの隣に腰かけたザインは、真っ直ぐ前を見据える。「俺、冒険者になることにしたよ。あいつを追いかける。まだ10年しか経ってねえしな」。小さく笑みを浮かべるザインを見て、フリーレンもまたほほ笑んだ。……翌朝、村を発つフリーレンたちの輪の中には、晴れやかな顔で兄に見送られるザインの姿があった。

タバコもギャンブルも好きなザインはハイター以上の“生臭坊主”? だがその実力はフリーレンのお墨付きだ
ちなみにフリーレンの“投げキッス”は、ザイン以外の者には効いていたようだ

◆過去と現在が重なる緻密な物語に、ファン感嘆

僧侶ザインとの出会いを主軸に描きながら、ヒンメルたち勇者一行の出会いの物語にもスポットが当てられた第13話。フリーレンが発した「同族嫌悪」という言葉を通して過去と現在が奇麗に折り重なっていく様に、ファンからは「脚本の運びが見事」「ヒ→フ→ザへと”継ぐ”物語が素敵」と感嘆の声が多く上がった。

「同族嫌悪」という言葉の意味も、初めは文字通り“種族の話”や“ザインの才能”についてのものと見ていた視聴者が多かった。しかし物語が進むにつれてその真意が明かされると、「気持ちが分かるからこそイライラする同族嫌悪ね」「立ち直れなかった自分を見ているようで嫌だったんだろう」「フリーレンは当時の判断は正しかったと思ってるということか」と、彼女の気持ちに共感する声があふれた。

また、僧侶ザインの仲間入りを喜ぶ声も多数。「これからどう変化や影響をもたらすのか想像がつかない」「ギャグ描写が増える?」「フェルンはザインにどう当たるか楽しみ」など、コミカルなキャラクターながら天性の才を持つザインの活躍に期待が寄せられていた。

『葬送のフリーレン』第14話「若者の特権」は、12月8日(金)よる11時10分から「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」(全国30局ネット)にて放送予定。※金曜ロードショー拡大のため通常放送時間から変更

©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

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