絶対に許せない…両手を縛られた女性、監禁され暴行 働くネカフェで悲劇、襲ったカッター男に懲役17年求刑 今もトイレ、電車、エレベーターで女性恐怖「絶望のどん底だった。この先もずっと恐怖」 弁護士、障害の可能性を強調

さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 昨年6月、埼玉県川越市内のインターネットカフェで女性従業員を人質に立てこもりけがを負わせたなどとして、逮捕監禁致傷などの罪に問われた住居不定、無職の男(43)の裁判員裁判の論告求刑公判が7日、さいたま地裁(北村和裁判長)で開かれた。検察側は犯行態様について「悪質極まりない」として男に懲役17年などを求刑。弁護側は懲役11年を求めて結審した。判決は13日。

 論告で検察側は、争点となっている男の責任能力の有無や程度について、過去に起こした別の立てこもり事件で服役していた際などに精神障害を疑われるような言動がなかったことや、今回の事件でも状況に応じた行動をしていたことなどを挙げ「責任能力の疑いを差し挟む余地はない」と指摘。被害者に対して長時間にわたり恐怖を与え続けたとして「計画的で悪質極まりなく、矯正は困難で再犯の可能性も高い」とした。

 一方で弁護側は犯行時や公判中の言動などから、男が反社会性パーソナリティ障害を患っている可能性があるとし、同障害が犯行に影響を及ぼしていた可能性があると強調。犯行当日の男の行動については「当初の計画を大きく変更しており、行き当たりばったりだった」として計画性も否定した。

 起訴状などによると、男は昨年6月21日、川越市内のインターネットカフェにカッターナイフと包丁などを所持して来店。清掃作業をしていた同店の女性従業員に対してカッターナイフを示し、同日午後9時50分ごろから翌22日の午前3時17分ごろまでの間、個室内に監禁して両手首を縛ったり顔面を殴るなどの暴行を加え、全治7日間のけがを負わせたとされる。

 男は2012年、愛知県内の信用金庫で立てこもり事件を起こしたとして、昨年4月まで服役し、出所していた。

■被害女性「一生刑務所に」

 この日は検察側と弁護側の論告、弁論に先立ち、被害女性の意見陳述が行われ、女性の弁護人が証言台に立ち代読した。女性はインターネットカフェの狭い個室で監禁され男から受けた一連の暴行について「絶望のどん底へ突き落とされたようだった」とし「心が壊れないように自分の気持ちを保つのに必死だった」と振り返った。

 事件後は電車やエレベーター、トイレなどの狭くて閉鎖的な場所に恐怖心を覚えるようになり、今でも生活に大きな支障があるという。「当時のことを忘れることができず、この記憶がこの先ずっと続くと思うとつらく、絶対に許せない」とした上で、最後に「どうか、どうか一生刑務所の中に入れておいてください」と厳罰を訴えた。

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