68歳の高校生 スピーチで文科大臣賞! 長崎・五島の下山さん 学ぶ喜び伝え、全国で快挙

最高賞の文部科学大臣賞を受賞した下山さん=五島市池田町、五島高

 定時制、通信制の高校に通う生徒の「生活体験発表大会」第71回全国大会で、長崎県五島市の県立五島高定時制3年、下山春雄さん(68)が最高賞の文部科学大臣賞に輝いた。下山さんは「学生生活を送っていることが夢のようなのに、このような賞までいただけるとは。学ぶことは何歳になっても大事。人生を豊かにする」と喜びを語った。
 全国大会は11月19日に東京であり、各都道府県などの代表計60人が出場。10月の県大会で最優秀賞を受け県代表となった下山さんはこの日も順調に進み、沖縄県の16歳の生徒と共に最高賞を受賞した。
 テーマは「目標を掲げて」。下山さんは10代の頃、家庭の事情で高校進学を断念し、建築業に就いた。しかし、60歳を過ぎて「胸にしまい込んでいた」高校で学びたいという気持ちが沸き起こり、2年前に入学。皆勤賞を目標に勉学に励んだという。全国大会では「まだまだたくさんの目標がある。初心を忘れず、これからも一歩ずつ進む」と述べ、7分間のスピーチを結んだ。
 下山さんは県大会後、教諭や生徒らに聴衆役になってもらうなどして練習を重ねた。本番では数百人の聴衆を前に緊張したが、審査員らの目を見て訴えることができたという。発表者の中には70代の生徒もいて、さらに刺激を受けた。
 10人きょうだいの8番目として現在の新上五島町若松郷で中学まで育ち、五島市福江島に移ってからは住み込みで建築業に従事した。独立後、妻つよ子さんと結婚し、二男二女が誕生。自身の経験から子どもたちには思う存分学ばせたいと睡眠時間を削って働き、大学院や専門学校を卒業させた。
 下山さんは「友人や先生方、家族、お客さんも自分事のように喜んでくれた」と感謝。22日には、50歳以上も年の離れた同校全日制の全校生徒約400人を前に発表する予定だ。「学ぶ楽しさをくみ取ってもらえればうれしい」との思いで壇上に立つ。

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