「カラフルな花束、食べてみて」 空港発ヒットで全国1位 ナンポーの新菓子は「薔薇甘紅芋」

 那覇市の菓子製造・販売会社、ナンポー(安里睦子社長)が開発した「薔薇(ばら)甘(かん)紅芋(べにいも)」が、じわりと人気を集めている。取扱店舗が那覇空港内などに限られながら、4月下旬の店頭デビューから9月末までに3万箱を販売。ビジネス系月刊誌「日経トレンディ」(10月号)が選ぶ「“空港発”ヒットランキング」で全国1位を獲得し、11月末には「苺(いちご)」バージョンを売り始めた。開発の背景には、新型コロナウイルス禍での経営危機があった。(デジタル編集部・新垣綾子)

 薔薇甘紅芋は、県産紅芋で作った口当たりが滑らかなスイートポテト。焼いたチョコレートと塩ちんすこうを混ぜた土台に紅芋ペーストが乗る。バラの花をイメージした手のひらサイズの形状が特徴で、個包装された6個が六角形の箱に入っている。コンセプトは「貴方に贈る、食べる花束。」。安里社長(51)は「インスタ映えも狙ってこのデザイン。おしゃれでしょう」と胸を張る。

 税込み2160円で、同社の商品としては最高額クラスだ。多くの種類があり、手頃なイメージも強い紅芋菓子だが、「これまでとは違う高級路線で、味も見た目も満足できる商品を作り、紅芋の付加価値を上げたかった」と安里社長。立てた戦略は、その店で最も目立つ「一丁目一番地」に、ナンポー側の思いを理解して陳列、販売してくれる店舗にのみ商品を卸すことだった。

 その結果、約300店の取引先のうち条件を了承したのは、空港内の土産品店や那覇市おもろまちの免税店などわずか8店舗で、ほかに購入できるのはナンポーの直営店やオンラインストアだけだ。

 2020年春以降のコロナ禍で、沖縄の観光業は深刻な打撃を受けた。土産品を扱うナンポーの売り上げもそれ以前の1割程度に。正規・非正規を合わせ約140人いた社員は次々と辞めて60人ほどに激減した。

 未曽有の窮地の中で、ナンポーが選んだ道は「しばらくは製造・販売を諦め、コロナ後を見据えた商品の開発と見直しに集中する」こと。安里社長を筆頭に砂川美由紀工場長(46)、小禄百合香ブランドマネージャー(39)ら女性リーダーが中心となって、ひたすら新たな目玉作りに突き進んだ。

 既存の機械ではバラ模様のあんを絞り出せず、経営難の中で約4億円の投資を決め、埼玉県内の機器メーカーと新たな生産ラインを構築した。季節や産地によって紅芋の硬さや色に違いが出るため、メーカー側との幾度もの話し合いや試作を重ね、安定して商品供給できる体制を整えた。

 商品が完成間際となったタイミングで、幸運な巡り合わせがあった。高級外車ブランドが主催する全国的なゴルフイベントで、車のオーナーたちに提供する土産品のコンペに出品し、選定されたのだ。「富裕層の人たちに評価されたことは大きな自信になった」と安里社長は言う。店頭デビューに選んだ4月27日は、自身の誕生日。「ここから新しい未来をつくっていくという覚悟を込めた」と明かした。 

 紅芋の次は、県産イチゴを使ったチーズケーキで、空港に加え、ホテルなどにも卸す。安里社長は「コロナ禍での蓄積を、満を持して広く発信していく。薔薇甘シリーズとして、カラフルな花束を届けたい」と意気込んでいる。

 さらに詳しいウェブオリジナル記事はこちらから(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1248755)。

 

ナンポーの新商品「薔薇甘紅芋」。六角形の箱の中敷きには薔薇の葉が描かれている
ナンポーの安里睦子社長(中央)と砂川美由紀工場長(右)、小禄百合香ブランドマネージャー=10月、那覇市のナンポー本社

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