B2第10節までの注目ニュース5選――東はアルティーリ千葉、西はライジングゼファー福岡が首位

12月4日までに第10節を終えたB2は、各チームがレギュラーシーズン19試合を消化した。ここまでの展開を、第10節終了後の今週に入ってから明らかになったベルテックス静岡のB1ライセンス申請断念の一報までを含め、5つの注目事項に触れながら振り返ってみたい。

1. コート内外で快進撃! アルティーリ千葉
昨シーズンB1昇格に1勝届かずに終わったアルティーリ千葉が、開幕節から快進撃を見せている。第10節を終えて17勝2敗(勝率.895)の成績はB2全体のトップ。東地区では2位の越谷アルファーズ(12勝7敗、勝率.632)を5ゲーム引き離している。第10節にはその越谷とアウェイで対戦したが、GAME1は終盤に熊谷尚也のクラッチ3Pショットとスティールが飛び出し68-65で勝利し、GAME2も残り5秒からアレックス・デイビスが殊勲のティップインとブロックショットで越谷の追撃を絶ち、81-80で連勝という結果。スターティングガードの杉本慶とベテランフォワードの小林大祐が離脱した状態ながら、第11節を前に連勝を9まで伸ばしている。

A千葉の力強さはコーチングスタッフとプレーヤーだけのものではないようだ。オフシーズンにB1タレントの熊谷と前田怜緒、かつてB1で2度ブロック王となったアレックス・デイビス、昨シーズン豪NBLでオールNBLセカンドチーム入りというデレク・パードンを獲得し、11月に入ってからも中国出身で身長226cmのビッグマン、劉 傳興(リュウ チュアンシン)をアジア枠に迎え入れるという大型補強を見ても、トップマネジメントの今シーズンに向けた並々ならぬ意気込みがわかる。

千葉ポートアリーナでのホームゲーム平均入場者数は、11月7日のBリーグ発表時点で4,920人だったが、B1上位クラブにも肩を並べるこれだけの集客力は、裏方の支えとなるスタッフの献身抜きいは語れない。その後を含め第10節まで9度あったホームゲーム全体でも4,869人と高水準を維持している。今シーズンから親しみとともに“A-xx(アックス)”の呼称で呼ばれるようになった地元のファンが応援を楽しみ、その思いがチーム力に還元された結果としての好成績。この経過は、A千葉のチームとクラブ、そして彼らを取り巻くコミュニティーの総合力の成果と言えるだろう。

2. 10連勝後も好調を維持するライジングゼファー福岡

そのA千葉を、B2全体2位の15勝4敗(勝率.789)の成績で追走しているのがライジングゼファー福岡だ。福岡は、11月13日(第7節)の青森ワッツとのGAME1に107-102で勝利して10連勝を達成した時点までは、リーグ全体トップの成績だった。

プレーの特徴としては、現時点までアシストランキング1位のポイントガード池田祐一(平均6.8本)を一つの核として、得点源が分散していることが挙げられる。チームのリーディングスコアラーであるブライス・ワシントンは平均13.4得点で、これはリーグのトップ10に届かない数字。しかしパブロ・アギラール(12.7得点)、ギャビン・ウェア(11.8得点)、谷口光貴(11.0得点)まで4人いる2桁得点。兒玉貴通(8.5得点)、村上駿斗(7.9得点)、加藤寿一(7.6得点)らもコート上で脅威になっている。アギラールと谷口はそれぞれ3P成功率ランキングで8位(41.4%)と5位(42.1%)。ラモン・ロペス・スアレスHCのオフェンスには、相手が気を抜けるスペースがほとんどないのだ。

ライジングゼファー福岡が好調な理由はいくつもあるだろうが、池田祐一のプレーメイクもその一つだ(写真/©B.LEAGUE)

連勝が10で途切れた第7節の対青森GAME2と、翌週熊本ヴォルターズと戦った第8節GAME1を続けて落としたほかには連敗がなく、修正力の高さも感じさせている。1月後半には、現時点で東地区1位・2位のA千葉と越谷に2週続けて立ち向かう。直近の第10節は、調子を上げてきたバンビシャス奈良とのGAME1で黒星を喫したが、まずはそれまで好調を維持できるか注目だ。

3. 躍動し始めたバンビシャス奈良

上り調子のバンビシャス奈良にとっては、12月9日・10日の滋賀レイクス戦は重要な節目となるかもしれない(写真/©B.League)

序盤戦の不振から11月に入って調子を上げてきたチームがB2にはいくつかあるが、バンビシャス奈良はその一つだ。開幕から白星がないまま9連敗で10月を終えた後、11月4日に山形ワイヴァンズを76-70で破ったところからの直近10試合は、6連勝を含む7勝3敗。7勝の中には前述のとおり、第10節の福岡とのGAME1で手にした68-60の白星が含まれている。また6連勝中は、7日間でアウェイの4試合すべてを勝ち切るという頼もしさも示した。

福岡戦の勝利後、小野秀二HCは「ベースにあるのは、やはりディフェンスです。今日も60点に抑えることができました。チームディフェンスが機能し始めたと思います」とチームの成長に関する手応えを語っている。実際に奈良は、9戦全敗だった10月中の平均失点が83.0だったのに対し、11月に入ってからの直近10試合は72.4まで低下しているのだ。それに伴ってオフェンス面でも69.6得点から73.3に上昇。ここにきて、新任の小野HCとプレーヤーたちの個性がかみ合ってきたことを感じさせている。

ただし、福岡とのGAME2にはふたたび64-84と差をつけられての黒星。アウェイで滋賀レイクスと戦う第11節は、今後を占う一つの試金石になるかもしれない。

4. 明暗分かれるB1からの降格組、B3からの昇格組
今シーズンB1から降格してきた滋賀レイクスと新潟アルビレックスBB、B3からの昇格組である岩手ビッグブルズとベルテックス静岡は、それぞれ明暗が分かれる流れとなっている。

滋賀は開幕当初の4試合が1勝3敗だったが、その後の15試合を12勝3敗として現在13勝6敗(勝率.684)で西地区2位に上昇してきている。6敗のうち4敗は、B2東西のトップチームであるA千葉と福岡に対するもの。しかしその4敗も決して簡単に引き下がるような負け方ではなかった。10月15日の福岡戦GAME2は第4Q序盤までリードし、最終局面で逆転を許して81-84で敗れるという展開。10月29日のA千葉とのGAME2はダブルオーバータイムの大激闘だった(最終スコアは91-96)。このA千葉戦の黒星の後、滋賀は直近10試合は9勝1敗だ。

滋賀のキーファー・ラベナは毎試合10得点、5アシスト、3リバウンドといったバランスの良い活躍を期待できるプレーヤー。懸命にチームをけん引している(写真/©B.League)

対して新潟はここまで1勝18敗(勝率.053)。東地区の最下位に低迷している。ケイシー・オーウェンズHCが外国籍プレーヤーたちの得点力不足を不振の要因の一つに挙げていた中、新潟は11月29日にポイントガードのジョシュ・ニューカークとの契約解除を発表。同日新たに身長198cmのフォワード、ステイシー・デイヴィスをロスターに加えた。その後12月2日・3日の第10節でも東地区6位の岩手(5勝14敗、勝率.263)にホームで敗れたが、この動きが好転のきっかけになることを期待するばかりだ。

岩手にとっては、この新潟に対する連勝は非常に大きかったに違いない。直近10試合では4勝6敗と持ち直してきている事実は、今後の躍進に向け期待を膨らませる。チームスタッツを見ると8.5スティールはリーグ2位、2.3ブロックがリーグ9位タイ、平均失点77.6はリーグ7位。いずれも、B3を制した昨シーズンからのディフェンス面の意識の高さを感じさせるデータだけに、まだ41試合残っているレギュラーシーズンで巻き返しを期待させる状態だ。

もう一つの昇格チーム、ベルテックス静岡に関しては、コート上のパフォーマンスについては十分に明るい話題として語ることができる。しかし冒頭で触れたニュースがどのような影響を及ぼすか。その点を最後にまとめてみたい。

5. 健闘中のベルテックス静岡が今年のB1ライセンス申請を断念
静岡は現時点で10勝9敗(勝率.526)と勝ち越しており、西地区5位、リーグ全体でプレーオフ圏内の8位につけている。昇格直後のシーズンとして健闘と呼べる戦いぶりだろう。ただ、直近の第10節で熊本ヴォルターズに連敗を喫し、そして表題のニュースが明らかになったという流れはやはり気になるところだ。

オレンジに染まるホームアリーナでのベルテックス静岡は7勝4敗。熱いホームコートアドバンテージがはぐくまれているだけに、今回の発表は残念ではあるが、試練を乗り越えた後の喜びはひとしおに違いない。まずは今シーズン、チームが検討を続けてくれることを期待しよう(写真/©B.League)

12月6日の会見で、2024-25シーズンに向けたB1ライセンス不申請を発表したことにより、静岡は今シーズンたとえB2で優勝してもB1昇格はかなわない。ただし、2025-26シーズンのB1ライセンス取得に向けホームタウンの静岡市と今後も連携し、準備を進める意向も明らかにしている。

こうなった最大の理由は、現時点で静岡市に新B1(B.LEAGUE PREMIER)の基準を満たす5,000席以上収容のアリーナが存在しないことだ。また、静岡市では、JR東静岡駅北口の市有地で大規模アリーナを整備する構想が伝えられているが、新設アリーナ計画がある場合の特別な取り扱いを理事会で受けるにあたって必要な「3年以内着工、もしくは5年以内竣工」の蓋然性の表明が現時点ではできないのだという。

静岡県内には静岡市外の地域で5,000席以上の施設が複数あるが、クラブの母体である株式会社VELTEXスポーツエンタープライズの代表取締役社長を務める松永康太は、「現行B1ライセンス取得のためだけに、これまで育てていただいたホームタウンである静岡市を離れる選択肢はない」とコメント。ホームタウン移転の考えを否定し、静岡市を中心にこれまではぐくんできた各地域との関係性を崩さず、“オール静岡”のスタンスで前進したいとの思いをにじませている。今シーズンのチームについては、「”昇格なき優勝”を目指し、最後の1分1秒まで持てる力を全て出し切り、しっかりと経験、自信、チーム力をつける事に注力します」と全力プレーを誓った。

静岡市側は、難波喬司市長が8月に沖縄アリーナを視察するなどアリーナ構想に前向きで、年度内に方針を固めていく意向も報じられている。ここはスピーディーな進展を望みたいところだ。

Bリーグ公式サイト(B2スタンディングス)

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