12月は新規公開株への投資チャンス?「IPO祭り」開催の期待が高まる

2023年もあと1か月。株式相場でも、1年の終わりである大納会(2023年は12月29日)が近付いています。実は、12月の残り1か月に、1年のうち最大の投資チャンスになる可能性があることをご存じでしょうか? それが新規に上場した銘柄、「IPO」株への投資です。

今回は、「なぜ12月がIPO投資のチャンスなのか」「どんな銘柄を狙えばいいのか」などについて述べていきましょう。


IPOには株価大化けの夢がある

テレビのニュースで、どこかの社長が満面の笑みで吊り下げられた鐘を打ち鳴らすシーンを目にしたことはありませんか? あれは、会社が新規に上場を果たした当日に行われる上場セレモニー。株式が証券取引所に上場することを「IPO(アイピーオー、Initial Public Offering)」と呼び、日本語では「株式の新規公開」と言われます。IPOする前の株式(未公開株)を売買することは容易ではありませんが、IPO以降は、証券取引所を経由して投資家が自由に売買できるようになるわけです。

IPOを行う理由は会社によってさまざまですが、株式を上場させることで知名度の上昇や信用力の増加につながるほか、資金調達がしやすくなるなど、多くのメリットがあります。その一方で、上場を維持するためのコストが発生するほか、コンプライアンス(法令順守)の厳格化が求められたり、株式が第三者に買い集められるリスクが発生したりするなど、デメリットもあります。

IPO株は個人投資家の注目度が高く、上場直後から人気化するケースも少なくありません。IPO株が人気を集める理由は、なんと言っても高い将来性。いまでは世界的に知られるトヨタ自動車も、当然、最初はIPO株の1つに過ぎませんでした。トヨタ自動車が新規上場したのは1949年ですが、上場直後に買っていれば、2000年代には10万倍超になったとされます。上場直後に1万円投資し、約50年間保有し続けていれば10億円超になった計算です。

「それは日本経済が急成長した時期を経ているからだろう」と思われる方がいるかもしれません。日経新聞によると、2002年以降の20年間で、2007年、2008年、2010年の3年間は、IPOの2社に1社がテンバガー(10倍高株)になったとのこと。2014年以降はテンバガー達成の比率は2割以下にまで落ち込んでいるようですが、それでもかなり高い確率でテンバガーが狙える「お宝株」であることは間違いありません。IPOにはテンバガーという投資家の「夢」が眠っているのです。

IPO銘柄への投資は「セカンダリー投資」がメイン

IPO株への投資は、大きく2つに分けられます。1つは、上場する前に抽選に応募し、当選を待つ方法。もう1つは、上場してから買う方法です。1つ目の抽選に応募する方法は、上場の際の主幹事(上場前後に必要な手続きに関して中心的な役割を務める証券会社)になるケースが多い証券会社から応募したり、複数の証券会社に口座を開いたりすることで当選確率を上げることは可能です。

また、IPO投資を得意とする著名投資家によると、「時には証券会社の営業と懇意になるために勧められるままに投信を買ったり、その口座で大口の取引をしたりすることでも当選確率を上げられる」とのこと。しかし、こうした方法は、あくまで資金や投資経験が豊富な投資家向け。初心者向きの方法とは言えないでしょう。人気のIPOの当選確率は1~2%、あるいはそれ以下とも言われていて、基本的には辛抱強く応募を続け、当選を待つしかありません。

もう1つの「上場してから買う」方法は「セカンダリー投資」と呼ばれ、IPO株投資のメインルートになります。上場後は、証券会社に口座を開きさえすれば、他の個別銘柄などと同じように売買することが可能です。IPO株の抽選に外れてしまった場合でも、こちらの方法であれば、自分の資金力と相談しつつ、自分の好きなタイミングで売買することができます。

初値が公開価格の2倍以上に値上がりしたIPO株には要注意

実は、12月は最もIPO投資がアツい月。それは、12月が1年のうちで最もIPOが多い月だからです。2022年までの10年間で、その年の全IPO件数に占める12月の割合は、平均で24%程度。その年のIPOの約4分の1が12月に集中しています。

1つの月にIPOが集中すると、個人投資家の資金は1銘柄に集中せず、買いが分散します。そんな状況においても、初値(上場してから初めてついた株価)が公開価格(株を売り出す価格)の何倍にも上昇するような人気の銘柄は誕生しますが、そうした「超人気銘柄」以外のIPO株に関しては、買いの資金が分散し、「普通ならもっと高く評価されてもいい」銘柄が出てきます。ここがターゲットになるわけです。

2018年から2022年の5年間、12月に上場したIPO株で、「初値が公募価格割れ」した不人気銘柄は全部で25銘柄。そのうち、6割の銘柄で「セカンダリー投資」によって大きな利益を得るチャンスがありました。中には、ライフドリンクカンパニー(証券コード:2585)やメドレー(4480)のように、初値から4倍前後に上昇している銘柄もあります。

一方で、やはり2018年以降の5年間、12月上場のIPO株で「初値が公開価格の2倍以上」になった=当時は人気が集まった銘柄に関しては、2023年の11月30日時点で現在の株価が初値を上回っている銘柄は、なんとWDBココ(7079)の1銘柄のみ。現在の株価が初値から10分の1以下になっている銘柄が2銘柄あるほか、それに近い暴落になっている銘柄も少なくありません。

2023年12月は「IPO祭り」開催となるか

2018年以降は、東証マザーズ(現在は東証グロース)を中心に新興市場が低迷しており、人気銘柄といえども買いが長く続かなかったため、人気がすぐに離散してしまっていたことが、これらの実績に大きく影響しているものと思われます。ただ、初値が公開価格の2倍以上に上昇した人気銘柄については、初心者は手を出さないのが無難と言えそうです。反対に、初値が公開価格を割り込むような不人気銘柄は、狙ってみる価値がありそうです。

2023年は、日経平均株価が年初の2万6000円割れの水準から、11月下旬には3万3853円まで大きく上昇しました。IPOを含む新興企業が多く上場する東証グロース市場は、東証グロース市場250指数(旧マザーズ指数)が6月に一度高値をつけたものの、それ以降は急落し、新興市場を中心に売買している個人投資家にとっては、厳しい年になっています。ただ、同指数は10月下旬から急上昇に転じていて、ようやく反撃ののろしを上げたといったところ。IPOの相場は新興市場の動向に影響を受けるため、2023年12月は個人投資家の資金が集中し、IPO株が次々と値を上げる「IPO祭り」開催となるかもしれません。

11月末時点で、すでに15社のIPO株が12月に新規上場する予定です。新興市場が弱含みで推移していたせいか、ここ数年に比べると数が若干少なくなっていますが、その分、多数の人気銘柄が出てくる可能性があるでしょう。もっとも、前述したように、将来有望だからといって、初値が暴騰した銘柄に飛び乗ろうとするのはハイリスク。そうした銘柄の買うのであれば、少なくとも1、2カ月は株価の動向を見てからのほうが良さそうです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

© 株式会社マネーフォワード