高齢化進む山あいの集落に「ユニクロ」「JINS」…急務「買い物弱者」対策で静岡市が企画

栗田麻理アナウンサー:「あたりを山々に囲まれた人口150人ほどの小さな集落、静岡市葵区の平野地区です。いわゆる“オクシズ”と呼ばれるこの地区で、きょうは移動販売車などが集まって出張販売を行っています。出張販売自体はこれまでも行ってきましたが、きょうは、衣料品を扱う「ユニクロ」や眼鏡を扱う「JINS」など、山あいでは珍しい、市街地でよく見られる有名店が来ているのです」

オクシズの高齢化率は45%超

静岡市街地から車でおよそ1時間、静岡市の面積の8割を占める中山間地の1つ「オクシズエリア」の「平野地区」です。オクシズといえば、のどかで美しい自然が広がる風光明媚な土地。しかし、人口減少や少子高齢化など、課題も抱えています。

オクシズの人口
2013年9月末 3万1457人 (高齢者の割合 32.4%)
2023年9月末 2万4306人(高齢者の割合 45.2%)

実際、2013年からの10年間で、人口は7000人以上減少。そのうち65歳以上の高齢者が、今では全体の45%を占めるなど、高齢化問題は年々深刻化しています。

「オクシズかいもの広場」

また、食料や日用品を買う場所が近くにない地区も多く、いわゆる「買い物弱者」と呼ばれる住民への対策は急務となっています。そこで、静岡市が企画したのが「オクシズかいもの広場」というイベントです。

静岡市中山間地振興課 竹澤昌利主査:「中山間地域は買い物関係が大きな課題の一つになっている。去年から民間の事業者が移動スーパーの展開を開始して、日常品の買い物については課題が解決されてきたが、衣料品など地域ではなかなか購入できない物が存在する。そういったところを含めて買い物を支援できればということで昨年度からこの事業を開始した」

昨年度から年に数回、オクシズエリアで実施しているこの取り組み。今回の開催では地域住民からの要望が多かった衣料品を取り扱う「ユニクロ」や眼鏡の「JINS」などが初出店しました。イベントには市内を中心に過去最高となる11の店舗が集結。出店時間は午前11時から午後1時までの2時間でしたが、11時を前に予想以上のお客さんが集まったため30分前倒しでのスタートとなりました。

「ユニクロ」には人だかり

イベント開始直後、さっそく「ユニクロ」には人だかりが─

地域住民 80代:「いい。気晴らしにもなる。山の中にずっといてもね。こうやって(外に)出てきて、気分が晴れる。大抵娘がネットで買ってしまうので、(普段は)ネットで買ってもらっている」
Q.自分で見て買うのは久しぶり?
A,「そうです。なかなかいいじゃないですか。」

地域住民 70代:「なんか色々あって面白いね」
Q.ヒートテックを買っているが?
A.「息子のです」

こちらのユニクロは、同じ静岡市内にある「静岡国吉田店」が出張販売を実施。寒い地域ということでアウターやヒットテックなど暖かいものを中心に、オクシズ仕様のラインナップとなっています。

なかにはそんなユニクロを目当てに来たという人も─

地域住民 80代:「ユニクロが楽しみで来た。靴下を買おうと思って、寒いから。息子が(ユニクロに)行くので、たまに何か買ってくれるので、きょう(出張で)来たから自分で見てみようと思って。静岡市内に出ていくのが遠いから楽しみで。目の保養になるのでいいと思う」

大いに賑わいを見せる「オクシズかいもの広場」。一方で地域住民の楽しみは“ユニクロ”だけではありませんでした。

山あいに『新鮮な魚』…絶品グルメも大集結

お昼時ということもあり、食べ物を販売する店舗には多くの買い物客の姿が。こちらの店では新鮮な魚を使った海鮮丼やお寿司が販売されていました。

地域住民 70代:「足が弱いので、週に1回子どもに(スーパーへ)乗せて行ってもらっている。うれしいよ。やってもらえて助かっちゃう、無ければ困っちゃう」

やまあいの地域では普段、買いに行くのにも時間がかかる新鮮な海鮮。オクシズのみなさんにも大人気なようです。

さらにこちらでは車の荷台を活用してパンを販売。焼きたてのパンを求めて行列ができていました。

地域住民 60代
Q.移動販売はどう?
A.「いいですね。近所のおばちゃんたち声をかけて、10人ほど来ている」

Q.パンをたくさん購入しているが?
A.「楽しみです。うちできょうのお昼にします」

荷台いっぱいに並べられていたパンは、販売開始から1時間も経たずに完売したといいます。パンが売り切れたことで、空いたスペースにやってきたのは静岡のブランド地鶏、「駿河シャモ」の焼き鳥を提供するお店です。

店主:「結構、人が集まって、にぎやかでいいと思う。「駿河シャモ」はスーパーなどには並んでいないので、なかなか食べる機会もないので、(地域の人にとっては)いいんじゃないですかね」

普段は飲食店やホテルなどに卸しているため、なかなかお目にかかることができない駿河シャモ。これもイベントならではです。

店主:「こういうイベントに出店して、初めて一般の人に食べてもらう。だから喜んでくれるとありがたい」

市担当者「地域の方々の交流の場所に」

きょうは一段と賑やかになった平野地区。地元住民を中心におよそ110人が利用しました。

静岡市中山間地振興課 竹澤昌利主査:「地域の方々から『こういう商品があってよかった』『買い物できてたのしかった』『日頃会えない方と会えてよかった』という話をいただいた。僕らも買い物だけではなくて、地域の方々の交流の場所としてやれるといいと思うので、ぜひ続けていきたい」

市の担当者は、住民の満足げな表情を見て手ごたえを感じる一方で今後の課題解決に向けても言及しました。

静岡市中山間地振興課 竹澤昌利主査:「中山間地域で暮らしていくうえで、いろんな機能が必要になる。その一つが買い物であったり移動であったり、そういった機能を市としてどう維持・利用していくかということをこれからも考えていかなければならない。」

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