長い週末が始まる…/原ゆみこのマドリッド

[写真:Getty Images]

「要はバランスが悪いのよね」そんな風に私が不満を覚えていたのは木曜日、今週末のマドリッド勢のリーガ戦が金曜から月曜まで毎日、あるのに気がついた時のことでした。いやあ、何故か今季前半は1部の4チームのうち、アトレティコ、ラージョ、ヘタフェが同時にホーム開催となることが多く、その際、レアル・マドリーだけがアウェイに。おかげで14節など、マドリッドで3試合が土曜開催となり、時間帯によっては梯子観戦可能とはいえ、移動が難しい場合はどれかを諦めざるを得ないことも。逆にこの16節はホームゲームの3チームが金曜にヘタフェ、日曜にアトレティコ、月曜にラージョと分かれてくれたため、見に行くのには問題なくとも、ええ、平日開催試合は原則夜9時キックオフになりますからね。

最近はマドリッドもだんだん、真冬モードに入ってきたため、できれば昼間の試合の方が嬉しいんですが、まあ、文句を言っていても始まらないので、今週ミッドウィークにあったコパ・デル・レイ2回戦の結果も含めて、各チームの近況をお伝えしていくことにすると。先週のラス・パルマス戦から続いて、金曜にバレンシアをコリセウムに迎える弟分のヘタフェはコパの日程も早く、火曜にアトセネタ(RFEF3部/実質5部)戦に恙なく勝利。ただ、結果は0-12で大勝した1回戦のタルディエンテ(地方リーグ1部/実質6部)程、派手なものではなく、ええ、前半など、0-0で終わっていましたからね。

どうやら、相手のホームが古い人工芝のピッチだったのが影響したようですが、それでも後半になると、8分にはラタサがエイラ内からのシュートで先制点をゲット。そのほんの3分後、GKフサトがハイボールをクリアミスして、同点ゴールを奪われていたのは頂けませんでしたが、ボルダラス監督もとうとう本気になったか、ボルハ・マジョラルを投入し、ラタサ、マタとの3人FW体制となった29分、今度はアレニャのクロスをラタサがヘッドで決めて、1-2と勝ち越すことに。そのままリードを最後まで保ち、延長戦でムダに体力を使うこともなく、32強対戦に進出できたのは良かったかと。

一方、バレンシアも火曜のコパでは前半8分にヤレンチュクの挙げたゴールでアローサ(RFEF3部)に0-1と辛勝しているんですが、金曜の対戦で注目となるのは、その試合ではお休みをもらったウーゴ・ドゥーロ。ええ、2年前、ボルダラス監督がバレンシアの指揮官に就任した際に引き抜かれたヘタフェのカンテラーノ(下部組織出身の選手)なんですが、今季は晴れて背番号9をもらい、7得点を引っ提げて、コリセウムに凱旋帰還することに。恩師の方は2021-22シーズンを9位で終え、コパでは決勝でベティスに負けて準優勝したものの、ガットゥーゾ監督が招聘されたため、バレンシアに残れなかったことを思うと少々、運命の皮肉を感じてしまいますが、そのおかげで昨季終盤、キケ・サンチェス・フローレス監督を引き継いで、ヘタフェを2部降格から救ってくれたんですものね。

そんなしがらみもあるのか、昨季途中からガットゥーゾ監督から代わったバラハ監督がカンテラーノを活用して、オーナーのピーター・リン氏のせいで、ほとんど補強のないバレンシアを中位に保っているのについても、「Gran parte de los jugadores que están en Valencia debutaron conmigo/グラン・パルテ・デ・ロス・フガドーレス・ケ・エスタン・エン・バレンシア・デブタロン・コンミーゴ(バレンシアにいる選手の大部分は私がデビューさせた)。ママルダシビリ、ハビ・ゲラ、ディエゴ・ロペスらをね」と、ボルダラス監督も試合前日記者会見では胸を張っていたんですが、ということは彼らの弱みもしっかりわかっている?

何せ、今季は未だにアウェイ勝利がなく、前節もラス・パルマスに負けているヘタフェですからね。この金曜はアンデレテ、ディエゴ・リコ、ダミアン・スアレスと出場停止の選手が多く、カルモナもまだケガから回復していないという逆境はあるものの、貴重なホームゲームでは必勝を目指してもらいたいかと。順位的にもバレンシア、ヘタフェ、そして弟分仲間のラージョは同じ勝ち点19で9位から11位に並ぶ、似たり寄ったりなレベルとあって、ここで勝っておけば、月曜にエスタディオ・バジェカスにセルタを迎えるラージョにもいい顔ができるかと思いますが、そんな弟分仲間は水曜にコパのジェクラーノ(RFEF2部/実質4部)戦をプレー。

それがずっと0-0が続いたため、一歩間違うと、憲法記念日の祝日正午の同じ時間帯にサント・ドミンゴでカルタヘナとの同カテゴリー対決となったアルコルコンのように、延長戦でも点が入らず、最後はPK戦4-5で敗退。2年前にレガネスを率いていたナフティ監督の初陣を飾れなかったという、2部の弟分みたいになりかねなかったんですが、大丈夫。後半44分にはウナイ・ロペスのアシストでファルカオがゴールを挙げると、ロスタイム4分にはRdT(ラウール・デ・トマス)がエリア内から自身今季初得点を決めて、0-2で勝ってくれたから、ホッとしたの何のって。しっかり1部チームの矜持を示してくれましたが、うーん、今季はまだ、リーガのホームゲームで1勝しかしていないからですからね。

連休中とあって、試合後、バレンシアに近いジェクラまで応援に行ったラージョファンが歌う「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を聴きながら、選手たちは勝利を祝っていたそうですが、早くこの楽しみをバジェカスのスタンドを埋める大勢のファンと分かち合ってくれないとねえ。実際、彼らはここリーガ5試合で白星がなく、前節にはサン・マメスで4-0と大敗を喰らってきた後だけに、降格圏にいるセルタにはしっかり勝って、流れを変えてほしいところですが、さて。ちなみに相手の方は木曜試合でセスタオ・リバー(RFEF1部/実質3部)にドゥビカスの2ゴールで1-2と勝利。

折しも最下位のアルメリアは水曜にバルバストロ(RFEF2部)に1-0で敗退し、1回戦でのalineracion indebida/アリネラシオン・インデビダ(出場資格のない選手の起用)により、一足先に姿を消していた19位のグラナダに続いたため、18位にいるベニテス監督のチームはコパを捨てていないだけ、頑張っているかと思いますが、そうそう、木曜にはカディスもアランディーナ(RFEF3部)に2-1で負け、この2回戦ではとうとう、コパ生き残りの1部チームが17チームに。2部チーム同士の対決では、レガネスもラシン・フェロルに1-0で負け、4年ぶりの1部復帰という目標に専念することになったため、32強対決を迎えるマドリッド勢は1部の4チームだけになっちゃったんですけどね。

その組み合わせは来週火曜の抽選で決まり、試合は1月最初の週末となるんですが、このラウンドからはスペイン・スーパーカップ出場により、1、2回戦が免除されていたバルサ、マドリー、アトレティコ、オサスナも参加。彼らは2回戦で残ったRFEF2部の2チーム、そしてRFEF1部の4チームと優先的に組み合わされることになりますが、2部の生き残りが9チームしかないため、正月早々、1部同士となるカードも1つ、生まれることに。それがラージョとヘタフェでないことを今は祈るばかりですが、え?それより、この日曜午後2時(日本時間午後10時)、アトレティコがメトロポリターノに迎えるのはコパ敗退組のアルメリアじゃないかって?

そうなんですが、何せ、シメオネ監督のチームは前節、モンジュイックでバルサに1-0と負けて、4位に後退。ジローナと共に首位グループを形成するお隣さんとの差も勝ち点7に開いてしまいましたからね。年内残り4試合、とりわけ18連勝中のホームゲーム3試合は絶対に勝って、21連勝にしてもらわないと困ってしまうんですが、今週はあまりニュースがないんですよ。いえ、練習は休養日にした火曜以外、ずっとやっているんですが、こちらは負傷者もアキレス腱断裂のレマル、そして半月板損傷のバリオスと長期リハビリの2人しかおらず。もう後はすでにヒザの靭帯断裂を克服して、ここ3試合、ベンチに入っているレイニウドがいつ再デビューするぐらいしか、戦力的な興味はありませんからね。

あとはもう、ゴールから遠ざかって4試合になるモラタの運気がそろそろまた、上がってくれるのを期待するぐらいですが、守備陣の方ではここ5試合、出場がなかったサビッチが先発に戻ってくるという話も。まあ、来週は首位突破にあと勝ち点1が必要なCLグループリーグ最終節、ラツィオ戦も水曜にホーム開催となりますし、とにかくここ2試合は心おきなく、内弁慶ぶりを発揮してくれればいいんじゃないでしょうか。

そして今週末、唯一、マドリッド勢でアウェイゲームとなるマドリーは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、ベニト・ビジャマリンでベティス戦なんですが、相手は水曜にコパ2回戦でビジャノベンセ(RFEF2部)に1-2で逆転勝利。それもアブデ、ボルハ・イグレシアスがゴールを決めたのはかなり終盤だったため、ええ、コパも最初から参戦し、来週にはまだ突破が決まっていないELグループリーグ最終節のレンジャース戦もあるペレグリーニ監督のチームは11月の各国代表戦の後、クリスマス休暇まで、ずっと週2試合が続く4チームの1つですからね。そろそろ疲れも見えてくる頃かと。

常識的に考えれば、体力的にはマドリーの方が完全に有利なんですが、何せ、アンチェロッティ監督のチームは未だに負傷者数が7人と変わらず。水曜から練習にフル参加しているモドリッチ、そして前節グラナダ戦ですでにベンチに入っていたGKケパの復帰は見込めるものの、その試合でカルバハルがふくらはぎに肉離れを起こし、全治1カ月とプラマイでは全然、使える選手数が増えていないのはある意味、凄いんですが、それでもロドリゴとベリンガムが当たっていますからね。おかげでしっかり首位の座をキープできているんですが…何はともあれ、今週末は日曜夜にバルサとジローナが対戦するだけに、マドリーも一足先に勝って、高みの見物と洒落こみたいんじゃないでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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