犯罪者の動きをも激変させたコロナ禍… 最新の犯罪白書が示す “窃盗” “性犯罪” “薬物”関係事件の「前と後」

12月8日に公表された最新の犯罪白書からはコロナ前後の犯罪動向の変化がみてとれる(キャプテンフック / PIXTA)

12月8日。法務省は令和5年版犯罪白書を公表した。

全404ページからなる同白書からは令和2年4月7日以降、 合計3度にわたる緊急事態宣言および令和3年4月5日以降に発令されたまん延防止等重点措置における移動に伴う行動の自粛により、刑法犯の認知件数(警察が発生を認知した件数)が減少していたことが読み取れる。

しかし、両制限が解除された令和4年3月以降には前年同期比において窃盗、暴行及び傷害、強制性交等の性犯罪が増加傾向にあることが同白書からは伝わってくる。

コロナ禍と比較してアフターコロナの犯罪動向は果たしてどのように変化したのだろうか? コロナ前後にフォーカスし、同白書を読み解いていくーー。

航空旅客機による薬物等密輸はコロナ禍に激減

まず目を引くのが『覚醒剤の航空機旅客(航空機乗組員を含む)による密輸入』件数だ。

同白書によると航空旅客機による密輸入件数は23件と前年の10分の1に激減した令和2年に引き続き、令和3年も5件と大きく減少している。

しかし、入国制限等の規制が緩和された令和4年には43件と一気に増加に転じている。

大麻の航空旅客機における密輸入事犯も同様で前年に比べ21件と3分の1に急減した令和2年、6件だった令和3年に比べ、令和4年は26件と大きく増加している。

この数字の増減からはコロナ禍において「入国者数が減少した影響を受けた可能性があると考えられる」と同白書は推測している。

窃盗、暴行、強制わいせつの件数はコロナ後に大きく増加

社会機能にも甚大な影響をもたらしたコロナ禍における人流や生活スタイルの変化は薬物関係以外の犯罪動向にも影響をおよぼしたようだ。

刑法犯の認知件数の月別推移(出典:『令和5年版 犯罪白書]』https://www.moj.go.jp/content/001407767.pdf)

最も件数の多い窃盗のうち、自転車・自動車等の乗り物盗は、緊急事態の制限解除後の5月以降は、各月において前年同月比20%を超えて増加している。

人々が行動制限等で巣ごもりをしていたことからか、令和2年、3年には減少していた侵入窃盗は8月以降に増加。

窃盗以外では傷害は4月以降、暴行は5月以降、強盗は11月を除く5月以降、強制わいせつも6月を除く4月以降、それぞれ各月において増加傾向にあるとしている。

白書はこうした犯罪認知件数の増加を、「駅や華街の人流の増加を始めとする人の移動の活発化により犯罪発生の機会が増加」したことが一因としている。

ただし、令和4年の刑法犯認知件数は新型コロナウィルス感染症拡大が始まる前の令和元年、2年の水準を下回っており、犯罪動向の全体像を把握するには引き続き「令和5年以降の動向を注視していく必要がある」としている。

コロナは人々の生活だけではなく犯罪動向にも変化をもたらしたようだ……。

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