核軍縮の新たな課題を議論 国際賢人会議が長崎市で開幕 「長崎を最後に」

開会セッションで意見を交わす委員ら=長崎市尾上町、出島メッセ長崎

 核保有国と非保有国双方の有識者が、核兵器のない世界への具体的方策を議論する「国際賢人会議」の第3回会合が8日、長崎県長崎市で始まった。2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議までに声明を出すことを目指し、世界的な安全保障環境の悪化に伴う核軍縮の新たな課題などを2日間議論する。座長の白石隆・熊本県立大理事長は「再び戦争を起こさないことを含め、『長崎を最後の被爆地に』というメッセージを強調したい」と初の長崎開催の意義を語った。
 会議設立を提唱した岸田文雄首相は、開会セッションに「核軍縮を巡る分断は一層深まり、核兵器数の減少傾向が逆転しかねない瀬戸際。根本的課題に腰を据えて取り組める国際賢人会議の重要性が増している」とメッセージを寄せた。9日に長崎入りし、閉会セッションに出席予定。長崎原爆遺族会の本田魂会長(79)らと短時間面会する方向で調整が進んでいる。
 委員15人のうち、米国やロシアなど核保有国の出身者ら13人が対面で出席。地元有識者として、医師で被爆者の朝長万左男氏(80)も全日程に加わる。
 開会に先立ち、長崎市内で被爆者の築城昭平氏(96)の証言を聞き、長崎の被爆者4団体の代表らと対話。高校生平和大使やナガサキ・ユース代表団などの若い世代とも意見を交わした。長崎原爆資料館(平野町)を約40分、旧城山国民学校の被爆校舎(城山町)を約20分視察した。
 白石座長は開会セッションで、12月8日は82年前に旧日本軍が米ハワイ真珠湾を攻撃した日だとして「きょう目にした(原爆の)惨禍につながる戦争の始まりとなった」と紹介。意見交換した地元の若者について「(核兵器による)悲惨な状況を、被爆者の記憶としてだけでなく、今後も起こりうると認識している。教訓が正しくつながれ、真剣に受け止めていることをうれしく思う」と述べた。
 開会後のセッションは非公開。終了後、報道陣の取材に応じた白石座長によると、初日は▽安全保障環境の変化がもたらす影響や新たな問題▽人工知能(AI)などの新興技術が核軍縮に与える影響▽核兵器使用や威嚇などの道徳的、倫理的問題-の3点を検討していくと確認。9日も議論を続ける。今回の会合では成果文書などは作らず、来年以降も論議を重ねた上で、26年のNPT再検討会議に向けたメッセージを日本政府に提出する。

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