【香港国際競走】血のライバル「神姬・ディヴィーナと吉典娜・ジェラルディーナ」 異国の地で勝利目指す同志へ

10日、香港のシャティン競馬場で香港国際競走が行われる。4競走で計13頭の日本馬が参戦予定だ。

香港国際競走と言えば、なにを思い起こすだろうか。世界のカナロアとも称されたロードカナロアの衝撃のラストラン、晩年にして海外を転籍しGI3勝を飾ったラヴズオンリーユーの有終の美、ロードカナロアとの父仔制覇を果たしたダノンスマッシュ、待望のGI初勝利を飾ったサトノクラウンやウインマリリン、香港で何度も駆けたウインブライトやグローリーヴェイズなど、数々のドラマが生まれてきた。

今年、我々はどんなシーンを目の当たりにするだろうか。

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■初めて2頭が会したエリザベス女王杯

香港ヴァーズに出走予定のジェラルディーナ(牝5、栗東・斉藤崇史)は昨年エリザベス女王杯でGI初制覇を果たし、4歳終わりにしてようやく能力開花。しかし今年は5戦して3着すら1度もない。完全に低迷してしまっているように映る。

香港マイルに出走予定のディヴィーナ(牝5、栗東・友道康夫)はOP入り後は6連敗と苦しい時間が続いたが、今年のヴィクトリアマイルで15番人気ながら4着に激走し、中京記念で2着と重賞で初めて馬券内入り。次走・関屋記念も2着すると秋の府中牝馬Sでついに重賞初制覇を果たし、5歳夏から本格化した。

この2頭は母同士が三冠を競った「血のライバル」。ご存じの通り、ジェラルディーナの母ジェンティルドンナが三冠を制し、ディヴィーナの母ヴィルシーナはすべて2着に泣いた。そしてこの2頭の仔が初めて会した前走・エリザベス女王杯は、ジェラルディーナが5着、ディヴィーナが7着と2頭とも好走を果たせずに終わった。しかし、どちらも敗因は明らかだ。

ジェラルディーナは2馬身の出遅れが最大の敗因と言えるだろう。いつの間にか中団に構えていたのは“さすがR.ムーア”といったところだったが、終始外々を追走することになり、4角も外を回る競馬。京都コースではさすがに無理のあるレース運びとなった。さらに1~4着馬は内を通った馬で、勝ち馬とは0秒3差。出遅れさえなければ……と思わずにはいられない結果だ。

ディヴィーナは距離。母ヴィルシーナは3歳時にエリザベス女王杯を2着しているが、ヴィクトリアマイルを連覇しているように本質はマイル向き。ディヴィーナもデビューしたては2000m前後で走っていたものの、現状はマイル前後がベストとなっており、2200mは長すぎた。4角ではジェラルディーナよりも外を回って、同馬と0秒1差に健闘しているのだから落ち目は感じない。

■復活と悲願を求めて……

ジェラルディーナは今年5連敗中だが、前走は能力自体が落ちたとは思えないレースぶりだっただけに、復活の可能性を秘めている。母ジェンティルドンナも晩年は勝利こそするものの不安定な成績に陥り、ジャパンCは1番人気で4着敗退。しかし次走・有馬記念は、三冠牝馬でGI6勝もの実績がありながら4番人気に甘んじたが、牡馬を蹴散らし有終の美を飾った。

なにより問題はゲートだが、今回はゲートボーイをつけることができる。ゲートボーイとは安全に発走できるようにすることを目的とした発走補助員のことで、アメリカや香港などで取り入れられている。ゲートを互角に出られれば、変わり身があっていいはずだ。

ディヴィーナもヴィクトリアマイルでは、3歳からトップマイラーとして活躍してきたソングラインとソダシに0秒2差に迫り、ジャパンC3着のスターズオンアースにあわやの内容。エリザベス女王杯の敗因は明らかで見直す余地は大いにある。

相手はゴールデンシックスティ、カリフォルニアスパングルと香港勢が圧倒的な強さを見せ、日本馬もマイルCS覇者ナミュール、2着のソウルラッシュなど手ごわい。

しかし、母のきょうだいは海外遠征が好きな血統。叔母のヴィブロスが香港マイル2着の実績があり、ディヴィーナも海外で真価を見せる可能性は十分だ。現地で調教を務めたのはシュヴァルグランも担当していた松館昇平調教助手。鞍上は主戦を務めていたM.デムーロに替わって弟のC.デムーロへ。全てのバックボーンが心強い。

さらに、C.デムーロ騎手はジェラルディーナをGI馬へと導き、今度はジェラルディーナの血のライバルであるディヴィーナに跨るのだから、期待せずにはいられない。

ジェラルディーナの香港での漢字表記は「吉典娜」。「娜」は女性のしなやかなさまを表す。母譲りの負けん気の強さを持ちながら、しなやかなで柔らかくも鋭い走りをするジェラルディーナにぴったりの漢字だ。ディヴィーナは「神姬」。可愛いらしくも気高い、小さい馬体ながら勝負根性があるディヴィーナをまさに表している。

前走時は敵対関係だったが、今回は香港の地で勝利を目指す同志となった吉典娜と神姬。2頭がそれぞれの舞台でいまいちど、輝くドラマがあってもいいのではないだろうか。

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(Asuka.F/SPREAD編集部)

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