【多可町】百年以上使い込まれた木桶を使って 昔ながらの技法と安心安全な原材料で醸す醤油

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2つの蔵で25~30種類を醸造

本社工場

兵庫県多可郡多可町にある「足立醸造」は、現代表取締役の足立裕さんの曽祖父に当たる足立一重さんが1889年に創業しました。開業当初は、国道427号沿いの現在の会社の場所から100m程離れた場所にあり、初代は別の事業を営んでいましたが、醤油の醸造会社を事業継承する形でスタートしたそうです。

左手奥にあるオーガニック醤油熟成蔵

現在は、2012年に作った本社工場と2022年に新設したオーガニック醤油熟成蔵で、15種類の自社商品、PB商品や特殊な海外輸出用の商品も含め、25~30種類の商品を手がけています。

木桶天然仕込みが特徴

代々守られてきた木桶で仕込む

この蔵の一番の特徴は、木桶仕込みで醸造していること。現在の日本の醤油醸造において、99%はステンレスやプラスチックなどのタンク仕込みで、木桶仕込みは1%未満だそう。その木桶のみを使った醸造にこだわっているのが足立醸造なのです。

歴史を振り返ると、戦前の醸造容器は木桶のみで、酒業界で使った桶のリユースが多かったそうです。

日本酒醸造は20年くらいで木桶を切り替え、古い桶は醤油や味噌蔵へ払い下げになり、醤油や味噌の醸造には中古の木桶を使って、新品を買うことはほとんどなかった時代だったとか。酒と違って醤油や味噌は塩を使うので、目詰まりして、漏れることが少なかったのもリユースの利点でした。

戦後、酒業界が衛生面、味覚面などに配慮して、タンクを木桶からステンレスやホーローに変えていく背景に伴い、醤油蔵でも同様に変えていったそうです。

奥の新しい桶は輸出用に使用している

足立醸造では現在、大小合わせて60本の木桶を使って仕込んでいます。これは関西ナンバー1の規模。木桶仕込みの良さは、まず味の複雑さが増し、香りも含め奥深い味わいが出せること。微生物が住みやすい環境も関係しているのだとか。

そして、ワインにも通じますが、地域の風土に合った作り方ができること。日本の四季を利用した天然醸造にふさわしい仕込みができるというわけです。

大型タンクを使う大手の醤油会社では、タンク内の温度を調整しながら3~6か月で製品になるものが多いそうですが、足立醸造では1年から1年半使って醸造をしています。7月中旬から8月末までの1か月半だけお休みして、9月から仕込みを開始します。

翌春にならないと発酵は始まらないので、先に仕込んだものと直近に仕込んだものとの味のブレが出ないように、ブレンドしたり調整したりするのが、職人の腕の見せ所だとか。

仕込んだ直後は毎日攪拌する

昔からのことわざに「1に麹、2に櫂入れ、3に火入れ」とありますが、醤油づくりで大切にしているのは、まさにその順番だそうです。

「麹造りから瓶詰まで一貫した自社製造をしている会社は兵庫県では数社のみ。麹づくりは本当に大切にしていて誇りを持っています」と裕さんは胸を張ります。

昔ながらの木桶

今回特別に熟成室で、代々使われてきた木桶を見せていただきました。もちろん今も現役選手です。使い込まれてきたことが分かる木肌で、微生物が活動しやすい環境だと実感しました。

※蔵見学は10人以上のグループで対応(要予約・応相談)

直営店は特徴ある商品が並ぶセレクトショップ

国道427号沿いにある直営店

商品がズラリと並ぶ店内

1990年にオープンし、2019年にリニューアルした直営店には、自社商品はもちろん、全国の自然食品やこだわりを持った生産者さんが作る調味料や食品、兵庫県産の日本酒など、特徴ある商品が並んでいます。

『かけ醤油』(900ml・950円)、『国産有機醤油』(900ml・1,642円)

15種類ある自社商品のなかから、売れ筋&おすすめを紹介しましょう。

まずは『かけ醤油』です。少し甘口で深みがあって印象的な味。兵庫県内では一番人気で、長らく一番の売れ筋商品だった看板商品です。200ml、300ml、360ml、900ml、1800mlの5サイズで展開しているのもうれしいところ。

10年ほど前から、売れ筋トップの座を奪った『国産有機醤油』は、全国の契約農家からの有機大豆や有機小麦、赤穂の塩を使った木桶仕込みの醤油です。こちらも、200ml、300ml、500ml、900mlとバリエーション豊かに展開しています。

その他、国産有機醬油ベースのだし醤油やゆずぽん酢なども人気です。

『しぼりたて有機生しょうゆ』(100ml・400円)

直売所限定の商品もありますよ。

国産の有機原材料を使用した『しぼりたて有機生しょうゆ』は、冷奴、お刺身、サラダなどにおすすめの醤油です。

直営店店内

直営店の北側には、主に調味料や日本酒などが置かれています。

1990年のオープン時には、周りにコンビニエンスストアや道の駅などもなかったので、カップラーメンや調味料など、よろず屋的になんでも置いていたそう。

兵庫の地酒コーナー

裕さんのお父さんである4代目・足立達明さんが、山名酒造や本田商店など兵庫県内の日本酒を中心にセレクトして置くようになったとか。

調味料コーナー

調味料コーナーには、きちんとおすすめできるものを選んで置いています。

オーガニック食品も多彩な品ぞろえ

リニューアルと同時にセレクトを強めたオーガニック商品は、こだわりを持った生産者さんの商品をおいています。

「スーパーのように、一回売れなかったら仕入れないというのではなく、長く継続して買っていただけるようないいものを厳選しています」と裕さん。

ギフトコーナーも充実

ギフトコーナーも充実しており、自社商品の詰め合わせはもちろん、自社商品と他の商品との組み合わせや、「多可の里直行便」として、多可町の卵やウインナーとともに醤油も組み合わせ“多可町のおいしいもの”を詰め込んだギフトパックもあります。

こんなギフトが届いたら、気分が上がりますよね。

年に5回イベントを開催

写真提供:足立醸造 蔵まつりのようす

写真提供:足立醸造 蔵まつりのようす

3月、5月、7月、10月、11月の年5回、「足立醸造蔵まつり」として、毎回3日間イベントを開催しています。3日間を通して、自社商品を割引価格で販売するだけでなく、多可町内をはじめ、西脇市や丹波市の店舗とコラボし、飲食・物販ブースとして10店舗ほどが軒を連ねます。

また、予約不要で蔵見学(11:00~、14:00~)を開催しています。

「地域とのかかわりとして、蔵まつりを大切にしています。今後の展望としては、大きく変えることはなく、木桶仕込み、オーガニック商品を大切にしつつ、新たな商品展開やブランディングができたらいいですね」と裕さん。

今回買って帰った『かけ醤油』が本当においしくて、卵かけごはんにピッタリ。また、違う商品を買いに行きたくなりました。

足立醤油蔵まつり日時:11月17日(金)、18日(土)、19日(日) 9:00~17:00内容:飲食・物販ブース出店、自社商品(醤油・味噌・ギフト)割引販売、蔵見学(11:00~、14:00~)

(ライター 歌見)

※本記事は2023年9月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

基本情報

足立醸造

住所:兵庫県多可郡多可町加美区西脇81-1

電話番号:0795-35-0031

営業時間:9:00~17:30

定休日:不定休

アクセス:西脇市駅よりウイング神姫 山寄上行きで約45分、「月ケ花」下車徒歩1分播但連絡道路神崎南ICより22分、中国自動車道滝野社ICより33分

駐車場:10台

HP:https://adachi-jozo.co.jp/

SNS:Instagram

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