富山に根ざす老舗菓子メーカー・日の出屋製菓 「お米に水を吸わせる」こだわりの製造 団子「生地がなめらかでおいしい」と好評〈連載4〉

1924年(大正13年)2月26日、富山県福光町新町(現・南砺市福光新町)で川合宣之氏が創業した日の出屋製菓産業は来年、創業100周年を迎える。

次の100年に向けても、富山米など富山の素材にこだわり、祖業の米菓にとどまらない製品開発に意欲をみせる。

製造拠点は福光本社工場(福光町田中)と立山工場(立山町・現「しろえびせんべいファクトリー」)の富山県の東西2ヵ所に構える。

福光工場では、もち米を原料とする、あられ・おかき・かきもちの製造を担い、立山工場では、うるち米を原料とするせんべいの製造を担っている。

日の出屋製菓産業の宮田育彦立山工場長

「どちらかというと関東はせんべい文化で、北陸や関西はあられ・おかき・かきもちの文化。したがって、富山・石川・福井の中で、流通向けなどのせんべいの工場はここ立山工場だけ」と胸を張るのは宮田育彦立山工場長。

立山工場では、4つの焙焼(ばいしょう)ラインがあり、現在4ライン体制で看板商品「しろえび紀行」の製造に集中している。

「今春まで厚焼きせんべいも作っていたが、『しろえび紀行』がコロナ禍の落ち込みからV字回復したことで供給がタイトになり、川合会長に経営判断を仰ぎ厚焼きせんべいの製造を止めさせてもらった」と振り返る。

焙焼は、昔ながらの手焼きで焼き上げた食感を大切にして遠赤外線のバーナーを使い表裏を交互に焼いている。

「しろえびせんべいファクトリー」4つの焙焼(ばいしょう)ライン

原料の仕込みや生地づくりにもこだわっている。

同社は契約農家やJAなどから原料のもち米については自社の倉庫に搬入。鮮度を保つため玄米のまま自社倉庫内で保管し自社精米所でその日に使用する必要分のみ精米している。

水は、万年雪を抱く立山の伏流水と庄川水溪を使用し洗米と浸漬(しんせき)を行っている。

団子生地も手掛ける立山工場では白米を最短2時間は浸漬している。
これは「浸漬時間をしっかり取るという昔からの製法」と説明する。

団子の生地づくりにもこだわっている。

「しろえびせんべいファクトリー」生地製造ライン

白米を一度製粉し、それを蒸かしたものを、昔ながらの杵と臼を使った“もちつき”と同じような杵つき製法を機械で再現して製造している。

立山工場は2018年、開業10周年を記念してリニューアルを行い名称を「しろえびせんべいファクトリー」へと改めた。

工場見学通路も刷新。しろえびせんべいの手焼き体験も用意して、学生や観光客の工場見学を幅広く受け入れている。

宮田工場長自らも時間をみつけ案内役を務めるようにしている。
店内飲食できる直営店・ささら屋立山本店を併設しており、案内の仕方が直営店の売上げに直結するという。

団子づくりは昔ながらの杵と臼を使った“もちつき”と同じような杵つき製法を機械で再現して製造

「工場見学は観光のお土産的な要素が強く、当社のものづくりへのこだわりを見ていただき安心してお土産を買っていただく。トークが上手くいけば直営店の売上げは上がるが、上がらなくても、当社では一般流通品も手掛けているため、スーパーなどで見かけときに思い出していただけると嬉しい」と述べる。(つづく)

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