G7茨城水戸 議論活発、食も交流も 五つの会合や視察 閣僚らから高い評価

G7水戸内務・安全担当相会合で意見を交わした各国閣僚ら=水戸市民会館

G7内務・安全担当相会合の議論が本格的に始まった9日、閣僚らは五つの会合や会場地である茨城県水戸市内の視察を行った。生成人工知能(AI)などをテーマに問題意識を共有する一方、剣道体験や県産食材が使われた食事など地域の伝統や食にも触れた。合間に2国間の会談もあり、慌ただしいスケジュールとなったが、閣僚らからは高い評価が寄せられたという。

同会合事務局によると、会合議題に各国共通の課題を幅広く取り上げたことに対し、閣僚らから歓迎の意が表され、どの議論も意見が活発に出たという。

国際刑事警察機構(ICPO)のユルゲン事務総長は同日午前8時半ごろ、市民会館に到着。松村祥史国家公安委員長が出迎え、固い握手を交わした。開会式で松村委員長は「この会合がより安全な世界を実現する一歩となるよう、有意義な議論を行いたい」と決意表明。閣僚らに「タイトな日程だが、水戸を十分に堪能していただければ」と呼びかけた。

昼食会は市内の老舗料理店「中川楼」で開かれ、閣僚らはうな丼や茨城県名産の常陸秋そばを味わった。

その後、市内の道場「水戸東武館」で水戸の伝統文化に触れ、剣道体験を満喫。刀がぶつかり合う様子や喉元に剣先が迫る演武や立ち合いの様子を真剣な表情で見つめた。

夕食会は偕楽園南側の施設、迎賓館であり、茨城県沖で揚がった伊勢エビの新ブランド「常陸乃国いせ海老」や銘柄牛「常陸牛」を使った料理が振る舞われた。

生成AIに関する会合は夕食会を兼ねて行われた。冒頭に松村委員長があいさつする映像が、英語からイタリア語やフランス語、ドイツ語へと突然切り替わり、各閣僚から「インクレディブル(信じられない)」などと驚く声が上がった。

上映終了後、松村委員長は生成AIで作成されたフェイク映像と〝種明かし〟。「テクノロジーの進化は素晴らしいが、裏に抱える脅威を感じる映像だった」とAIの功罪に触れた。専門家を交えた議論は午後9時まで続いた。

■剣道体験、閣僚「メーン」 水戸東武館

G7閣僚らは9日、茨城県水戸市北見町の道場「水戸東武館」を訪れ、日本刀を使った演武や剣道の立ち合いを見学した。水戸藩から続く弘道館建学の精神「文武不岐」を体験する文化視察の一環で、師範らの演武を興味深そうに見つめ、剣道体験にも挑戦した。

小澤智館長(85)は同館の歴史とともに学業と武道の両立を重んじる文武不岐について説明。厳かな雰囲気の中、北辰一刀流の「一ツ勝」「高霞」など八つの形が披露され、閣僚らは演武を熱心に見つめ、動画を撮影する姿も見られた。

現代剣道の立ち合いでは、激しい踏み込みや気勢を上げる「ヤアーッ」というかけ声に息をのむ場面もあった。

英国のトゥーハゲンハット内務省担当大臣はジャケットを脱いで剣道体験に参加。「メーン」とかけ声を上げて打ち込んだ後には、「ソーリー」と相手を気遣った。

閣僚らは館内の木札にも興味を抱き、「強くなれば上に行くのですか?」と質問した。

高山陽好師範(79)は「海外からの見学者が増えている。世界に知ってもらう機会が増えることは大変喜ばしい」と満足そうな表情。小澤館長は「(閣僚らは)目を輝かせ、熱心に見ていただいた」と手応えを語った。

■児童 バラで「ウエルカム」

会場の水戸市民会館に到着した閣僚らは、松村祥史国家公安委員長に出迎えられた後、同市立五軒小6年生17人の歓迎も受けた。児童は国旗を振りながら、来場した閣僚らに「ハロー」「ウエルカムトゥーミト」と声をかけ、茨城県産バラの花束を手渡した。

閣僚らと記念撮影した垪和(はが)藤太君は「大臣たちは優しくてオーラがあった。一生思い出に残る経験だった」と感激した様子。広木遙さんは「温かい表情をしてくれた」とうれしそうに話した。

館内には水府提灯(ちょうちん)などの工芸品や菓子などを並べたおもてなし会場も設けられ、ユネスコ無形文化遺産の結城紬(つむぎ)の着付け体験も行われた。

剣道を体験する松村祥史国家公安委員長と英国のトゥーハゲンハット内務省担当大臣(右から)=水戸市北見町の水戸東武館
小学生と記念撮影するフランスのサブリナ・アグレスティ長官(中央)=水戸市民会館

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