新納忠之介、仏像修理の道 平安秘仏の模刻像 茨城県五浦美術館 北茨城

「一字金輪座像」の模刻像(東京国立博物館蔵)について解説する宮本夢花学芸員=県天心記念五浦美術館

近代的な仏像修理法を確立し、「仏像修復の第一人者」と呼ばれた新納忠之介(1869~1954年)の業績を紹介する企画展が9日、茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館で開幕した。優美な姿をたたえる平安時代の秘仏の模刻像や、修理図面、研究ノートなどを展示し、日本の文化財保存の一翼を担った新納の足跡をたどる。

鹿児島市生まれの新納は、東京美術学校に入学し、近代彫刻の礎を築いた高村光雲に学んだ。成績は優秀で彫刻家として将来を嘱望されたが、卒業後は、校長を務めた岡倉天心(覚三)の勧めで文化財修理の道を進むことになる。

新納は1909年、天心の要請で米国ボストン美術館に赴任し、仏像の修理に従事する。帰国後は、天心創設の日本美術院を母体とする国宝彫刻修理部門「美術院」の院長に就任。国宝級の神仏像を含めて、生涯で2600点を超える修復に携わった。

2014年度に、新納の遺族が旧蔵資料約2300点を同館に寄贈。同館はこれまでも、機会を設け同資料を紹介してきた。

「天心が託した国宝の未来-忠之介、仏像修理への道」と題された今回の展示は、新納の業績を同館で初めて体系的に紹介する。修理図面や研究ノート、書簡といった資料62点を並べ、日本の文化財保存に貢献した新納の足跡に光を当てている。

見どころの一つが、中尊寺(岩手県)に伝わる平安時代後期の秘仏「一字金輪座像」の模刻像。29歳の新納が中尊寺金色堂の修理に携わった際に手がけた。復元された像の優美な姿は、新納の卓越した彫刻の技術を物語っている。

担当した宮本夢花学芸員は「私たちが古い時代の仏像を容易に鑑賞できるのは新納たちのおかげ。文化財保存に携わった先人の努力を知ってほしい」と話している。

会期は2024年2月12日まで。月曜休館。問い合わせは同館(電)0293(46)5311。

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