「どんなにきれいにしても…どこにいるのかわからず防ぎようがない」急増「トコジラミ」は寝込みを襲う“ドラキュラ”か? ベッドやソファに“黒いシミ”は危険サイン

「トコジラミ」の急増がとまりません。国内では戦後、一度は激減したにもかかわらず、気づけば、“ゾンビ”のように再び姿を現したトコジラミ。その正体は、まるで“ドラキュラ”のようでした。

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SNSにアップされた1本の動画。電車の座席を動き回る虫が映っていました。よくよくみると、トコジラミ。いま、フランスや韓国をはじめ、世界各地でこの害虫が社会問題となっています。トコジラミは、熱湯や熱風に弱いとされるため、高温の水蒸気を吹きかけるといった予防が各地で盛んに行われています。

実はこの問題、日本でも起きていました。11月には、大阪の地下鉄車内でトコジラミを見たというSNS投稿が相次ぎ、全1380車両で予防作業が行われました。

「ナンキンムシ」とも呼ばれるトコジラミ。体長は成虫で5ミリから8ミリほどで、主に夜間活動し、人や動物の血液をエサにする、まるで“ドラキュラ”のような生き物です。トコジラミにかまれると赤く腫れあがり、かゆみを伴います。名前こそ「シラミ」ですが、実は「カメムシ」の仲間、カメムシ目トコジラミ科の昆虫です。

かつて日本では、トコジラミは、どこにでも潜む一般的な害虫でしたが、殺虫剤の普及で激減。しかし、ここにきて、まるで“ゾンビ”のように復活してきたのです。

飛べないはずなのに…

有害生物の駆除などを行う事業所などで組織する「日本ペストコントロール協会」の調査によると、トコジラミに関する相談件数は、2009年130件だったのに対し、2022年は683件と10年あまりで、5倍以上に膨れ上がっています。

そのワケを害虫の駆除や研究などをするフジ環境サービス(静岡市)の田辺堅太郎さんは「2000年前後から海外に頻繁に行く人、来る人といった交流が増えた、さらにコロナ明けで、国内の人の行き来が増えていることが原因」と分析します。また、従来、活動が活発化する夏場ではなく、冬になっても活動が引き続き活発な理由の一つとして、冬でも室内が温かいという住環境がかつてに比べ、格段によくなったことも挙げられるといいます。

トコジラミは、飛べないので長距離を移動することは不可能です。しかし、その代わりに衣服やカバンなどに付着することで気づかぬうちに、自宅に持ち帰ってしまうケースもあるというのです。

さらに繁殖力も強く、1匹で500個程度産卵。血液を吸わなくても半年程度生きるという報告もあり、1匹を駆除してもと安心はできないのです。

「トコジラミの生態を考えた時に、国内外問わず、宿泊施設などは、衣服やカバンなどが汚染されるリスクの高い場所といえる。そこに持ち込んだものは、なるべく気をつけて、家に持ち帰る。持ち帰った後はカバンの中を掃除機で掃除することも、自衛策としていい」(田辺さん)。

そこまで注意をしても、家に持ち込んでしまうことがあります。トコジラミの住み家となるのが、名前の通り、ベッドの周りです。さらにソファーの隅、さらにカーペットの裏、はたまた、カーテンの裏も好むといいます。

「人間の血を吸いたいのでついてくる」

では、トコジラミがいるのか、いないのか、分かる方法はないのでしょうか。田辺さんによると「必ずサインがあって、トコジラミが潜伏する場所には、必ず『血糞』という吸った血のフンで黒いシミのようなものがたくさんつく」といいます。もし血糞を見つけたら、その場所は、汚染されていると考えていいといえます。

気になるのが、もし、かまれたらどうなるのか。いまのところ、トコジラミを媒介した感染症の事例はいまのところ、報告されてないといいます。ただ、皮膚科の医師によると「かゆみや腫れが続くので、かまれたと思ったら速やかに病院へ行ってほしい」とのことです。

また、トコジラミをみつけた場合、どう駆除すればいいのでしょうか。「血を吸い、さらにカメムシの仲間なので、血の汚れと臭いに注意してティッシュに包んでからつぶしてほしい」(田辺さん)。ただ、一度増えてしまうと完全駆除には、時間も費用もかかるといいます。保健所や各地のペストコントロール協会に相談することをお勧めします。

最後に田辺さんはこう訴えます。「(トコジラミは)正直どこにいるのか、わからないので防ぎようがない。トコジラミ自体は不潔にしているからつくものではなく、あくまで人間の血を吸いたいので人間についてくる。どんなに家をきれいにしていてもつくときはつく。そこは勘違いしない方がいい」。さらに、「宿泊施設の方には、もしトコジラミの報告があれば、速やかに対処してほしい。そのまま放置すれば、立場が“加害者”になってしまう危険性がある」

かまれたくない、でも、防ぎきれない“ドラキュラ”のような害虫。人間とトコジラミとの、いたちごっこはまだまだ続きそうです。

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