ピアノ調律師の女性が社会人落語の頂点に 同じネタで3度目の正直 桂文枝も絶賛「落語の形を破った」

「第15回社会人落語日本一決定戦」決勝大会が10日、大阪府池田市内で開催され、職業を存分に生かした創作落語「社会人ピアノ日本一決定戦」を口演したぽんぽん亭遊月(ゆうづき)こと、棗田真澄さん(61)=東京都、ピアノ調律師=が15代目名人に輝いた。

棗田さんは2010年の第2回大会以来、13年ぶりの決勝進出。ピアノ調律師という職業を生かした創作落語で会場の爆笑をさらった。審査員を務めたイラストレーターの成瀬國晴氏は「調律師なだけあってリズムが良い。楽しいね、このネタは最高」と絶賛。審査員長の桂文枝(80)も「職業を生かした社会人らしい落語」と選考理由を説明し、ピアノを弾く所作を横向きに座って表現したことを例に「いつも落語は前を向いてやるんですが、落語の形を破った」と評価した。

棗田さんが落語と出会ったのは18年ほど前。それまで民話語りが趣味だったというが「その師匠が亡くなっちゃって、どうしようと思っていた時に落語を見て『あ、これだ!』」と魅了されたという。

本業もそこそこに“落語沼”にハマっていく日々に「いつかはピアノの世界に恩返ししないとまずいんじゃないか」と思いついたのが今回の優勝ネタ。過去2度、同ネタで大会に挑んだものの決勝の舞台には届かず。改良を重ねた3度目の挑戦で一気に頂点までかけあがった。「40年間調律をやってきて、お客さんから聞いた宝物のようなお話をちりばめて作りました」と話し「皆さんに聞いていただけて嬉しいです。ピアノを弾く人がちょっとでも増えて、恩返しになってくれれば」と笑顔を見せた。

今大会には324人が応募し、148人が事前審査を通過。9日に開催された予選会を突破した10人が決勝でしのぎを削った。2位は無茶志亭肉丸(むちゃしてい・にくまる)こと、長﨑睦子さん(57)、3位は六ツ家千艘(りくつや・せんそう)こと、堤晋一郎さん(49)が選ばれた。また、当利家源内(あたりや・げんない)こと、平賀大介さん(45)が市長賞に輝いた。

文枝は今大会を総括し「皆さんが切磋琢磨(せっさたくま)して力をつけてきた」とレベルアップに手応えを感じ、「今回の結果を見て『こうすれば決勝に残れるな、優勝できるな』と感じたと思うので、もっともっとレベルアップして社会人落語らしい大会になる」と次回以降に期待を寄せた。

(よろず~ニュース・藤丸 紘生)

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