終活・相続対策に入る前に必要なのは銀行口座と不動産の確認!やるべきことを終活カウンセラーが解説

今、「遺言書の書き方」や「認知症対策には任意後見契約」、「不動産には信託」などの終活・相続対策の情報はたくさん出ています。

もちろん、これらの対策を行なっておくことは大切です。ただし、これらを進めるには、それぞれの内容を理解した上で自分で進めるか、専門家の助言を得ながら進めていくことになります。

まずは、各対策がどんなものか、概要を理解しましょう。


全ての人にメリットがある「遺言書」

遺言書は、全ての人に作成するメリットがあります。

相続が起こると争いになる可能性の方はもちろんですが、紛争性がなくても手続きをスムーズに行うのに大変便利なものです。遺言書がない場合、「遺産分割協議」という、相続人全員で遺産を分ける話し合いをしなければなりません。

相続人の中に判断能力のない人(例えば認知症など)がいれば判断能力のない人に成年後見人(本人の代わりに財産管理をする人)を選任して代わりに遺産分割協議を行わなければなりません。一度選任された成年後見人は被成年後見人が亡くなるまで財産管理を続けることになります。また、成年後見人に就く人は弁護士や司法書士といった専門家が担うことが多いため、業務に対する報酬が発生します。このような場合も、遺言書があれば遺産分割協議をすることなく遺言書に定められた内容で財産を分けることができます。

認知症になった場合に財産管理を任せる「任意後見契約」

将来自分が認知症などで判断能力がなくなった場合の対策として、財産管理をお願いしたい人と「任意後見契約」を締結することができます。判断能力のあるうちから任意後見人になってくれる人を探し契約をしておき、いざ、その時がやってきたら財産管理を行ってもらうという方法です。

不動産の処分・管理等を託すための「信託契約」

不動産の信託契約を結んでおけば、自分が不動産を所有した状態で、第三者に管理、運用、処分を任せることができます。高齢になり不動産の管理をするのが難しくなってきたとき、認知症になり契約ごとができなくなったときも、滞りなく「受託者」と呼ばれる第三者が管理、運用、処分をしていくことができるのです。

対策を行う前に決めなければいけないこと

このように、きちんと行えば心強い対策ですが、実際に行うには、さまざまなことを決めていく必要があります。

例えば、「遺言書」を作るには、財産をどのように分けるかを考えるために、今亡くなると相続人は誰になるのか、どのような財産を所有しているのかを確認することが必要です。そのうえで誰に何を渡すのかを考えます。

「任意後見契約」は、自分が元気なうちに財産管理をお願いする人を探しておくことが必要です。誰にでも任せられるものではないため、長い期間をかけて信頼できる人を探していくことになるかもしれません。

「信託契約」は、所有している不動産の管理、運用、処分を任せる人を決めるため、慎重に考える必要があります。そもそも信託契約が必要なのかといったことも考えなければなりません。

口座のある銀行をわかるようにしておこう

自身がこれまで大事にしてきた財産にかかわることを決めるというのはとても労力がいることです。そこで、まずは比較的簡単に始められる財産の整理からスタートしてみてはいかがでしょうか。

相続が起こった際に一番困ることは、どこにどのような財産があるのかわからないことです。
ご自身で自分の財産がどこに何があるか把握していますか。例えば銀行口座であれば○○銀行に口座があるとエンディングノートに書いておくだけでも手掛かりになります。

残高まで記入する必要はありません。どこにあるかが分かればそこに行って調べることができるからです。そうすると銀行口座の棚卸ができます。わずかな残高で残したままの銀行口座はありませんか。今のうちに解約しておきましょう。最近はネット銀行の口座をお持ちの方も増えてきています。手掛かりはパソコンやスマホの中ということになります。いざというときにパソコンやスマホ等のパスワードが分かるようにしておくことも大切です。

エンディングノートにパスワードを書き記しておくのか、又はパスワードの保存場所を記入しておくのか、何かの形で残しておかないとご家族の方がとても困ります。それがないと時間、手間、費用がかかり、良いことはありません。

所有している不動産や関連書類を確認しておこう

不動産に関しても、どこに不動産を所有しているのか把握しておくこと、毎年春ごろに送られてくる固定資産の納税通知書(課税明細書)で所有不動産を把握しておくこと、完全ではないけれど、市町村で把握している所有不動産の一覧表(名寄帳)を取得し、課税されていない不動産の確認をしておくことも大事です。

また、所有する不動産の購入した時の売買契約書や、諸費用の領収書、権利証、登記識別情報などの書類が揃っているかどうかの確認も必要です。なぜ必要なのかというと、今後不動産を手放すことになった際に譲渡所得税がかかるかどうかの判断に必要だからです。

財産の整理をしながら次第に心の整理もできれば、自然に終活・相続の対策に入っていけるのではないでしょうか。今できる負担の少ないことから始めていきましょう。

一人では先に進まないことも多くあります。その際は、終活・相続の専門家にご相談することをお勧めします。

行政書士・終活カウンセラー:藤井利江子

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