茨城・鹿嶋、イノシシ生息域拡大 市、住民交えた講座開催

イノシシの鼻が触れる電気柵の柵線の高さについて学ぶ地元住民ら=鹿嶋市山之上

沿岸部のイメージが強い茨城県鹿嶋市でも、農作物に被害をもたらすイノシシの生息域が広がっている。10月末までで69頭を捕獲し、既に年間捕獲頭数を更新した。市はこれまでに電気柵設置の補助などを行ってきたが、さらなる対策が必要として、農家以外の地域住民を交えた被害対策講座を初めて開くなど、被害防止に懸命だ。

同市では、2017年ごろからイノシシによるコメやサツマイモなどの被害が出始め、19年には被害額が225万1千円に上った。市は20年に市鳥獣被害防止対策協議会を設置し対策を強化。猟友会の協力を受け捕獲頭数を増やしてきた。

しかし、被害の報告は収まらず、発見地域は拡大している。そこで市は、行政や農家がそれぞれ単独で対策を講じるのではなく、地域全体で実行していく必要があると判断し、生態などについて学ぶ講座(県主催)を1日に開催し、約30人が参加した。

参加者はまず行動範囲がおおむね1キロ四方で、デンプン質が高いものを好む食性であり、繁殖能力が高いことなどを学んだ。その後、被害が出ている山之上地区の田畑に出向き現地調査。地図を広げ、作付地と不作地を色で塗り分け、隠れ場所になりそうな位置を確認した。

さらに足跡や鼻で土を掘り起こした跡などを見つけ、電気柵を設置している田を見学して、鼻が触れやすい柵線を張る高さを確かめた。現地調査後は、会議室で集落地図を基にワークショップを開き、課題と対策について話し合った。

同地区で水田を所有する原弘さん(66)は「地域住民全体で対策を講じないと解決しないことだと実感した。このままではイノシシがさら増え、農作物被害には収まらず、人的被害も出てしまうのではないか」と危機感を口にした。市は今後、隠れ場となってしまう雑草が生い茂る場所を整備するなどして、被害拡大を食い止めたい考えだ。

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