「昭和喪失」 ~あと数年も経つと「遺産」となる~ そのような時代を迎える前に 第11章 東京都巣鴨から板橋へ~旧中山道・とげぬき地蔵と滝野川稲荷湯~

おばあちゃんの原宿~巣鴨地蔵通り商店街

巣鴨にある「とげぬき地蔵・高岩寺」は1596年に湯島にて創建。1891年に巣鴨に移転してきた曹洞宗の寺院。東京大空襲で全焼し1957年に再建された。その由緒は、誤飲した針を地蔵菩薩の御影を飲み込んだところ、針を吐き出すことができ、その針が御影に刺さっていたという伝説からとげぬき地蔵と呼ばれるようになった。そのため、病気の治癒に利益があることから高齢者の参拝人が多い。そして、目の前を通る巣鴨地蔵通り商店街が「おばあちゃんの原宿」と呼ばれて久しい。

昨今、古きお店が業態を変え若者向きのお店も増え、昭和の商店街が、令和の若者の町へと変化している。

地名にもなった庚申塔

商店街は旧中山道に沿ってにぎわいをみせている。また、街道最初の宿場である板橋の宿までは、古き建物などがそのまま残っている場所もある。そして、地蔵通り商店街の終わりには、猿田彦大神を祀る庚申塔を奉戴する「庚申塚」がある。ここは、板橋までの街道沿いの休憩所として当時から茶屋があったため、この辺りの地名ともなった。今では、都電荒川線の停留所もあり、停留所内にその名残の甘味処もある。

種苗を商売にした商人たち

足を進め、大正大学「鴨台観音堂(栄螺堂)」を抜けると明治通り。この辺りからは「種屋街道」と呼ばれていた。その謂れは、「瀧野川三軒家」と言われて、牛蒡や人参といった種苗を扱う商人がたくさん集まっていたからだ。また、関東大震災や第二次世界大戦の被害をかろうじて受けなかったため、古き建物が多数残っていた。

しかし、昨今では新しい建物への建替えが進みつつある。まだまだ平屋木造住宅なども多く、街道を一本それると迷路のような小道も存在する。

映画のロケも行なった登録有形文化財

そのような場所に「滝野川稲荷湯」がある。

明治の創業で、現在の建物は1930年という古き銭湯。2019年12月に都内銭湯では2軒目となる登録有形文化財に指定。映画「テルマエ・ロマエ」のロケ地にもなった都内でも群を抜いた銭湯だ。訪れた日は水曜日、残念ながら、定休日であった。そのため、中を拝見することができなかった。しかし、その佇まいは、昭和を越え、明治大正を彷彿させるものだった。帰り道、建物の甍に西陽がキラキラと輝いていた・・・

江戸時代に整備された街道筋に残る昭和遺構。令和に新たな芽吹きがあると同時に、さまざまなものが木造から鉄骨に変わっている姿は、まさしく昭和喪失そのものである。

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表

(次のページには、巣鴨地蔵通り商店街から滝野川稲荷湯までの様子をご覧いただけます)

撮影・取材 2023年11月22日

巣鴨地蔵通り商店街・とげぬき地蔵へ

高岩寺山門、コンパクトなその姿、すこしびっくり!

通りの中に何軒も塩大福屋さん、繁盛してますね!

帽子だけを売っている、なかなか渋いお店

おばあちゃんの原宿、定番の洋服屋さん

境内から商店街を

新しいお店もちらほらと、令和への動き

年季の入った焼き処のやきとりやさん

畳屋さんから業態変更した雑貨屋さん

かの有名な榮太郎のお店

アンティークな時計・眼鏡工房## 庚申塚から種屋街道へ

交差点にひっそりと巣鴨庚申塚

旧中山道を通り抜ける電車

徒歩0分の甘味処(庚申塚停留所内)

電車に乗って、どこに買い物にいくのだろうか?

歴史を感じる古き建物の散髪屋さん

石造りの会社の建物、どんな仕事なんだろう?## 滝野川稲荷湯

車一台が通り抜けるのがやっとの小径にひっそりと!

銭湯には、なぜランドリーが併設される?

裏手には、稲荷湯が経営するカフェが!

昔の町並みには、よくあった「通り抜け禁止」

本日は定休日、木造の看板が象徴的!

西陽が甍をキラキラさせて!

(これまでの寄稿は、こちらから)

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