おとぎの国への誘い!欧州の街々は幻想イルミネーションでクリスマス一色、キリスト降誕の祝祭に向け!

12月、クリスマスの祝祭シーズンが本格化した欧州各国の街々。大聖堂、市庁舎の立つ中央広場や主な辻々にクリスマス市が立ち、クリスマス・ツリー、クリスマス飾り、子供たちや家族へのプレゼント、そして祝祭に相応しいお菓子や食材を買い求める人々が街に繰り出し終日賑わう。そして、夕暮れを迎えると多彩なイルミネーションが欧州の街々を幻想的に染めておとぎの国へ一変させる。中でも中世の面影を残す木組みの建物が建て込む欧州の古都のクリスマスは、街全体が煌びやかなイルミネーションによって浮き立ち、魔法の世界のようだ。さあ行こう、欧州のクリスマス市へ!

暖かな灯りに照らし出されるコルマールの中心街### アルザス・ワイン街道の真珠と言われるフランス・コルマールのクリスマス

街の起源は9世紀まで遡るアルザス・ワイン街道のフランス東部の古都コルマール。ドイツ風の木組みと色漆喰の壁が美しい家々が軒を連ね、麗しき「アルザスの華」と謳われてきた。花の季節には家々の窓に季節の花々が飾られ絵のように美しい。そのコルマールが、クリスマスの・アドベント(11月最後の日曜からキリストの降誕までの4週間)を迎えた。

辻々にクリスマス・ツリーや装飾品・人形・ガラス玉などを屋台一杯に並べた市が立ち、その数190店余り。夕闇となると街中に一斉に装飾電灯と多彩なイルミネーションが灯り、さながらおとぎの国に生まれ変わる。小さな街だが、見所は幾つもある。「プティット・ヴニーズ」(小ベニス)と呼ばれる運河沿いの地区は、色彩豊かな可愛らしい民家が運河の両岸に立て込み、コルマール一番の観光名所。

コルマールのプティット・ヴニーズ地区のカラフルなイルミネーション

一方、街の中心地で16世紀に帽子屋が建てた「突き出し出窓」のある「プフィスタの家」の辺りにも、人通りが絶えない。「プフィスタの家」の北隣りのサン・マルタン参事会教会の広場にも多数のクリスマス市が立って、夕刻、イルミネーションが灯るや否や、眩いばかりの光り空間に代わる。

人口7万人余りのコルマールに、今年2023年は190万人超の来訪客が見込まれている。さあ、行こう、アルザスの真珠と呼ばれるコルマールのクリスマス市を見に!(コルマールへはパリからTGV列車で約3時間)

なお、フランスのクリスマス市は、アルザス地方の主都ストラスブール、パリ、ブルゴーニュ地方の主都リヨン、ブルターニュ地方の主都レンヌでも多数が立ち並び、イルミネーションが街を彩る。キリスト降誕の日まで、各地で市民が祝祭のムードを盛り上げながら楽しく過ごすことは言うまでもない。

空からイルミネーションが降ってくるよう。フランスのアルザス地方の主都ストラスブールのクリスマス市## メルヘンの世界に誘うドイツのローテンブルクのクリスマス市

南ドイツのロマンティック街道の古都ローテンブルクのクリスマス市は、市庁舎前のマルクト市場に立ち、少し離れた聖ヤコブ教会まで伸びる小さな市だ。木組み構造で色漆喰の壁の館が居並ぶローテンブルクの街がほんのりとオレンジ色にライトアップされる光景は、メルヘンチックな世界そのもの。清楚で限りなく美しい。市庁舎近くに「ケーテ・ヴォールファルト」という老舗のクリスマス用品店がある。クリスマス・ツリーからツリーの装飾品、サンタクロースの人形、くるみ割り人形、クリスマスの食卓の食器、オルゴール時計まで5万点余りの商品を揃え、店内はクリスマス一色。この市に集まる人々をメルヘンの世界に誘い込んで夢中にさせる。

ドイツのローテンブルクの市庁舎前のクリスマス市

クリスマス・シーズンのローテンブルクは、その雪景色によって一層引き立つ。古都の南門に当たるコーボルツェレ門とジーバース塔と木組みの大きな館が建つ「プレーンライン」(小さな広場)の雪景色にオレンジ色のライトが当たるとき、誰でもおとぎの国に迷い込んだと思うだろう。(ローテンブルクへはミュンヘンからドイツ鉄道で約3時間)

世界最後のクリスマス市の街、ドイツのミュンヘン

夜空に映えるミュンヘン新市庁舎とクリスマス市

一説に起源は1310年に遡るとされるミュンヘンのクリスマス市は、ドレスデンのそれより100年古く、「世界最古」と呼ばれるクリスマス市の1つに当たる。ミュンヘンの街中至る所にクリスマス市が立つのが特徴で、市の総数が120か所にも上る。まさにドイツ最大級のクリスマス市の街。主な開催場所は、マリエン広場、ノイハウザー通り、レジデンツの中庭の3ケ所。

ドイツ最大の仕掛け時計を掲げた新市庁舎の前のマリエン広場には、高さ26㍍のモミの木のクリスマス・ツリーが立ち、広場を覆い尽くすように100軒余りのヒュッテ(屋台)が軒を連ねる。各々の店先に並ぶクリスマス・グッズは、くるみ割り人形、スモーカー(煙出し人形)など木工玩具を始め、サンタクロースやクリストキントのお人形、ツリーを飾る電飾・赤玉・星型・ベル、そして食卓を飾るキャンドルなどクリスマス用品が出揃い、昼間から子供連れの買い物客で広場はごった返す。

ミュンヘンのクリスマス市のヒュッテ(屋台の店)

ドイツ最大の観光都市ミュンヘンは、収穫の秋に行われるオクトーバーフェスト(ビール祭り)に続いて、クリスマス・シーズン到来と共に、国内外の観光客が大勢舞い戻って来る。人口130万人の都市に内外からの観光客数は、2019年には200万人に上った。

2つの戦争の重苦しさが漂うも聞こえてくる欧州人の健やかな賑わい

まずはグリューワイン(ホットワイン)を!ドイツのミュンヘンにて

幻想的なイルミネーションに輝く街で、煌びやかなクリスマス飾りや愛くるしい人形たちが屋台の店に所狭しに並んで顧客を待つ欧州の古都のクリスマス市。今にも出かけたくなる年末の欧州の古都の旅だが、遠距離の海外渡航には、航空運賃と現地宿泊費の高騰が持続するうえ、コロナ禍の後に勃発したウクライナとパレスチナ、2つの戦争の重苦しさが漂い、慎重にならざるを得ない。それでも、これまで貯めたマイレージを使って海外に出かける方々、費用の困難を乗り超えて海外旅行に踏み切る方々が増え始めている。旅行条件の改善を期して来年の旅の準備に傾注される方々も多いだろう。キリスト降誕の祝祭に向けて、欧州人の健やかな賑わいが聞こえてくるだけでも、欧州のクリスマス市は、今年2023年を締めくくる最良の機会となるだろう。(2015年、2019年の現地取材、2023年の現地情報に拠る)

寄稿者 山田恒一郎(やまだ・こういちろう) 旅行作家

© 株式会社ツーリンクス