難しい「目利き」

 適任だと思い仕事を任せた部下がなかなか期待通りに働いてくれない。そんな「目利き違い」はしばしばあるものだ▲戦国武将の黒田如水は「職にふさわしくない者はすぐ処分したりするが、よく考えると、役を十分務められると見たのは、そのあるじだ。目利き違いなのだから、あるじの罪は臣下より重い」と戒めたという。どこぞの国の首相にも聞いてほしい言葉だ▲今季のサッカー・J1で神戸を初優勝に導いたのは吉田孝行監督。個の強さを生かす戦術を徹底し、好不調の波が少ないチームをつくりあげた。見事な手腕だった▲吉田氏は2021年にJ2のV・ファーレン長崎を率いたが、開幕から2カ月余りで解任された。もうちょっと吉田氏に任せていたら、と今更ながら思う。もちろん結果論なのだが▲V長崎は吉田氏に続き後任の松田浩氏も解任。ファビオ・カリーレ氏に指揮を任せたが、今季もJ1昇格には届かなかった。チームの明確な方向性が見えず、J2屈指の戦力を生かせたとは言い難い。監督の目利きをするのは実に難しい▲来年10月には新本拠地の長崎スタジアムシティが開業する。もうサポーターを失望させるわけにはいかないだろう。来季もカリーレ監督が指揮を執る。3季目-。続投は見事な目利きだった、となればいいのだが。(潤)

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