長崎の識者「首相のリーダーシップ」課題 国際賢人会議で指摘

閉会後の会見で意見を述べる朝長氏=長崎市尾上町、出島メッセ長崎

 長崎市で初めて開かれた「国際賢人会議」の第3回会合が閉会した9日、「長崎を最後の被爆地に」する認識で合意したとされる一方で、長崎の識者は「日本政府の核政策に対する岸田文雄首相のリーダーシップが今後、問われる」と課題を指摘した。
 長崎大核兵器廃絶研究センターの河合公明副センター長(58)は長崎開催について「使う側の視点になりがちな核兵器の問題に、使われた側の議論を考えさせる意義がある」と語った。
 議題の一つ「人工知能(AI)の技術発展」に触れ、「武器の能力向上で核兵器が『抑止の兵器』から『使う兵器』になる危険性がある。AIは国際的にも関心が高いテーマ」と解説。もう一つの議題の「倫理と規範」は、前身の「賢人会議」で国際人道法などの法的要素や核抑止論とともに議論、提言されていると指摘。「前回を踏まえなければ、同じ議論が繰り返されるだけだ」と苦言を呈した。
 さらに、岸田首相が閉会メッセージで「世界中からの強い政治的意志の結集」と言及した点に注目。「過去にもここまで踏み込んだ発言はなく、極めて重要。(会議の)最終提言にも期待する」と述べた。
 地元有識者として会議に加わった長崎の被爆者で医師の朝長万左男さん(80)は「良い議論ができたが、政府が成果物をどこまで政策に取り入れるか。それがないと核なき世界へつながらない」と分析した。
 鈴木史朗長崎市長は閉会セッションに出席後、「委員は口々に『長崎を最後の被爆地に』という思いを確認していた。その思いを胸に、今後も建設的、積極的議論を期待したい」と報道陣の取材に答えた。

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