国際賢人会議閉会 岸田首相「政治的意志結集を」 核兵器のない世界へ

閉会セッションでスピーチする岸田首相=長崎市尾上町、出島メッセ長崎

 核兵器のない世界への具体的方策を有識者が議論する「国際賢人会議」の第3回会合は9日、長崎市内で2日間の日程を終え閉会した。岸田文雄首相は閉会セッションに出席し、国際社会の分断が深まる中で「現実的かつ実践的な取り組みを進め、核軍縮の機運を高めるため、世界中から強い政治的な意志を結集することが必要だ」と訴えた。会議は「長崎を最後の被爆地に」するため、核兵器の不使用の規範を維持することで合意したという。
 核保有国と非保有国双方の委員15人のうち13人が対面で出席。座長の白石隆・熊本県立大理事長は閉会後の記者会見で、核軍縮を巡り▽安全保障環境の変化による新たな課題▽人工知能(AI)など新興技術の影響▽倫理と規範-の3点を議論したと説明。「核リスク低減のため外交や交渉の強化、政治的リーダーシップが重要だ」と述べた。
 長崎の被爆者で医師の朝長万左男氏(80)も、地元有識者として全日程に加わり、会見にも出席。朝長氏は2017~19年に前身の「賢人会議」委員を務めたが、今回再び議論に参加して「核抑止論の克服が継続した課題だと分かった」と指摘。米国の「核の傘」に安全保障を委ねる日本政府について、会議の中では「岸田首相が『核兵器のない世界』に到達するプロセスを説明しなければ、唯一の被爆国としての指導力は発揮できないと申し上げた」と明らかにした。
 会見では委員が核抑止論を巡る多様な見解について発言。米国のジョージ・パーコビッチ委員は「核抑止力を持つと使用の可能性があり、持たないと他国から守れない。人々がどちらを心配するかの問題で、意見を集約するのは難しい」と述べた。
 一方、中国の趙通(ジャオトン)委員は「核抑止は世界平和のための一時的なツール。多くのリスクを伴い、永続的な解決策ではない」と強調し、「なぜ核兵器に安全保障を依存するのかという根本的な課題に、国際社会が体系的に取り組むべき」と注文。フランスのブルーノ・テルトレ委員は「核抑止を支持する私も、一時的なものだと思う。核兵器の良き管理者であるためには、想像もできない破壊的性格を持った兵器だと認識しなければならない」と話した。
 賢人会議は来年以降も年2回をめどに会合を重ね、26年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議までに提言をまとめる。

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