西岡良仁「このチャンスをどう使うか」。第3回「Yoshi’s CUP」は昨年全敗の川西飛生が活動支援金300万円を獲得

西岡良仁主催の第3回「Yoshi’s CUP 2023」は川西飛生が優勝

世界ランク47位の西岡良仁(ミキハウス)が主催し、世界を目指す日本人プレーヤーを育成することを目標とした「Yoshi’s CUP 2023」(東京・昭島市/モリパークテニスガーデン 旧 昭和の森テニスセンター)の決勝が12月10日に行われ、川西飛生(TEAM KIT)が優勝した。

同大会は、本気でプロを目指す子どもたちのためにまだ現役選手として第一線で活躍する西岡が発起人となりスタート。ジュニア大会では異例の活動支援金を提供し、海外への遠征費用やコーチ代に活用してもらうことで、世界への一歩を踏み出しやすくする。

今年も16歳以下、14歳以下の全国大会で実績を残しているトップジュニア8名が出場し、9日に行われた大会初日は4名ずつのグループに分かれ、ラウンドロビンが実施。グループAでは第1シードの田畑遼(むさしの村ローンテニスクラブ)が1位、高橋光(神奈中テニススクール)が2位に。グループBでは川西が1位、松村怜(あおやま庭球塾)が2位で決勝トーナメントに進んだ。

10日に行われた決勝トーナメント準決勝では、田畑が膝を負傷しながらプレーを続ける松村を6-1で下して決勝進出。もう一つの準決勝では、昨年大会で1勝もできなかった川西が、全日本ジュニア選手権の準決勝で敗れている高橋を6-4で破って、決勝に進んだ。

ここまで全勝同士の対戦となった決勝では、隙のないプレーの田畑がテンポ良くポイントを獲得。「今まで勝ったことがない」という川西にアンフォーストエラーが多く、1ブレークを許して3-6でセットを失った。

だが、準決勝ではリードされた場面から調子を上げて逆転勝ちした川西。第2セット以降は、持ち前の強烈なサーブを生かしてリズム良くサービスキープするとともに、優勝が視界に入り気負った田畑にもミスが出始め4-3の第8ゲームで遂にブレークする。そのまま6-3でセットを奪い返すと、10ポイントマッチタイブレークとなった最終セットでは、0-1から5連続ポイントでリード。最後までラケットを思い切り振り、攻め切った川西が10-4とし第3回大会のチャンピオンに輝いた。

「(田畑に)一回も勝ったことがないので大きな舞台で勝てたことがうれしい。300万円より勝つことを意識していた」と喜びを語った川西。第1セットまではこれまでの敗戦と同じような形だったとしたが、第2セット以降は「自分から攻めていけて、ミスも減った」と勝因を明かした。優勝者には活動支援金300万円のほか内山靖崇(積水化学工業/同269位)が創設したITF大会「Uchiyama CUP」の本戦ワイルドカード、1年間の栄養士サポートなどの副賞が贈られる。

主催した西岡は、今季全豪オープンと全仏オープンで4回戦に進出し、10月のATP250珠海では準優勝。自己最高ランキング24位まで上げ、来季への期待もある。その中で今大会を迎え、「本音を言うとめっちゃ大変でした。各選手は自分のやりたいことにオフの時間を使っている中で、僕は(今大会の)スポンサーの方々と話し合っていた」と、選手としてだけでなく大会運営の柱として二足のわらじを履くことの大変さがあるとする。

だが、さまざまな人たちが関わり、時間を割いてくれているからこそ、西岡自身は今大会の開催にやりがいを感じ、練習や貴重なオフの時間を今大会に充てることを苦に思っていない。「正直1回で終わると思っていた」と笑うが、周囲からの後押しもあり大会は継続。さらに第2回が終わった後には出場選手たちが寄せ書きをもらい、第1回の出場選手からプロが出た。「僕らテニス選手は個人競技で、勝ち負けが喜びの一つ。それはいまだに変わらないけれど、こういう喜びもいいなと思った。だから、やっていても苦じゃない」と選手として活動しているだけでは味わえない部分に価値を見い出す。

今大会を振り返り、「彼(優勝した川西)がどこまで強くなるかわからないし未知数。どう支援金を使い、どう戦っていくかは彼や彼の周りが考えることで、僕はただきっかけを作ってあげたい。チャンスはあげられていると思うので、そのチャンスをどう使うかが今後の人生を左右していくかなと思う」とコメント。

「(川西は)明らかに(昨年の全敗から)結果が変わったというのは、少なくとも何かが強くなったということ。そこはうれしい。今年に関しては、全日本ジュニア優勝者の遠征が翌週となり、全員が出場してくれていい大会になった。来年もこれと同じような結果を持つ選手が出てほしい」と来年大会もハイレベルな戦いになることを望んだ。

<「Yoshi's CUP 2023」結果>
優勝(活動支援金300万円):川西飛生(TEAM KIT)
準優勝&西岡賞(活動支援金50万円):田畑遼(むさしの村ローンテニスクラブ)
第3位:高橋光(神奈中テニススクール)
第4位:松村怜(あおやま庭球塾)
第5位:逸崎獅王(トップランAIOI)
第6位:奈良恒輝(グリーンテニスプラザ)
第7位:柳宏優(石井テニスアカデミー)
第8位:神山宏正(B6TC)

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