鳥インフルエンザ 今シーズンも感染を確認 感染を防ぐために奮闘する経営者 「従業員の生活を守るために」 

今シーズン、既に4か所の養鶏場で発生を確認している「鳥インフルエンザ」です。昨シーズンは、全国で過去最多となる1700万羽余りが処分され、その爪痕が今も残ります。11月に佐賀県鹿島市の養鶏場で、確認された鳥インフルエンザ。今シーズン、全国では初めてでした。その後、茨城・埼玉・鹿児島の養鶏場で相次いで確認。感染が全国に拡大する気配です。

広島県世羅町で養鶏業を営む松本義治さんです。渡り鳥が飛来する季節になり、警戒を強める毎日です。

■世羅町で養鶏場経営 松本義治さん

「(鳥インフルエンザは)いつでても不思議でないと思っている。」

広島県内で、昨シーズン感染を確認した養鶏場は、世羅町と三次市内の6か所。このうち3か所は、松本さんが経営していました。

Q感染確認は何回目?

■世羅町で養鶏場経営松本義治さん

「初めて。ついにかと思った。終わりだと思った。」

世羅町にある松本さんの養鶏場は3か所。それぞれが隣接しています。2022年12月16日、最初の感染を確認。その3日後には、隣の養鶏場に拡大。その後、感染は収まったかに思われましたが、26日に北側の養鶏場でも確認されました。3か所の養鶏場で殺処分されたニワトリは、およそ43万羽。松本さんが所有するニワトリのおよそ6割が失われました。

■世羅町で養鶏場経営 松本義治さん

「対策は国が言われているものはほぼやっていた。石灰の散布であったり、定期的な周囲の消毒であったり。着替えの徹底で、鶏舎の中に入る時は長靴、作業服の着替えはしていた。(今後)事業再開なんてできないと思った。」

しかし、およそ50人の従業員の生活を守るために、再開を決意。鶏舎を徹底的に消毒し、消毒場所を増設。小さな動物などの侵入を防ぐフェンスも、追加で設けました。そして、飼育を再開したのは6月。しかし、営業活動が出来ない期間に多くの取引先を失った為、今年の売り上げは半減したと言います。

■世羅町で養鶏場経営 松本義治さん

「(卸すのは)ほとんど量販店。卵を出せないということは市場がなくなるということ。1年市場をなくしたら次の再開を待っていたと言ってもらえるところはない。再開して卵が出始めても、売り先がない卵がいっぱいでていた。」

そんな時でも取引を続けてくれたのが、得意先の「生協ひろしま」でした。メッセージを入れたTシャツやカードが届くなど、奮闘する授業員たちを応援してくれました。

■世羅町で養鶏場経営 松本義治さん

「涙が出るほど嬉しかった。これだけ迷惑をかけて、卵を供給できない中で、(従来卸していた卵と異なる)代替の卵でも買い支えてもらって、その上こういう形で『再開を待っているからね』と言われると嬉しい。」

一方、殺処分したニワトリに対する補償は、国が決めます。松本さんの養鶏場への補償額は、2024年以降に決まる予定ですが、1羽あたり1000円以上の評価にならないと、大きな損失になると言います。

■世羅町で養鶏場経営 松本義治さん

「ここ2年ほど、エサ代の高騰や諸経費の高騰で鳥1羽が自分のところ(会社)で作っても1000円かかる。卵を産むようになるまでひなを育てるだけで。」

各地に、大きな爪痕を残した鳥インフルエンザ。2023年も感染が全国に拡大する気配です。

■世羅町で養鶏場経営 松本義治さん

「(各養鶏場は)自分のところでできる精一杯のところはみんな徹底してやってもらいたいと思っている。それが雇用を守る一番のもとだと思う。」

【テレビ派 2023年12月5日放送】

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