【今週のサンモニ】番組の新しい”スター”誕生?|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。毎日新聞論説委員の佐藤千矢子氏が番組初登場。番組の新しい”スター”になるか?

初登場で陰謀論を多用

2023年12月10日の『サンデーモーニング』では、毎日新聞論説委員の佐藤千矢子氏が番組コメンテーターとして初登場しました。

番組では、岸井成格氏や与良正男氏など、過去にも毎日新聞関係者がコメンテーターとして名を連ねてきましたが、ナラティヴな【陰謀論 conspiracy theory】を多用するなど、「政権批判ありき」の論理に欠くコメントが多く認められています。残念ながら佐藤氏にもその傾向が伺えます。そのコメントを見ていきます。

まずは、旧統一教会の財産保全法案が衆議院を通過したというニュースに対して次のようにコメントしています。

佐藤千矢子氏:被害者が述べているように非常に不十分な法案になってしまって、これで本当に被害者の救済ができるのか。救済しようと思った時には財産が海外に移されてしまって、原資がないということになりかねない。どうして立憲や維新が言ったような包括的な財産の保全法案にならなかったのかというと、与党側は信教の自由を保障した憲法に違反する可能性があるという理屈で包括的なことはやるべきではないと言っているが、衆院の審議に憲法学者を呼んできて話を聞いたかというと全然やっていない。衆議院は3日間審議しただけで全然学者に聞くという作業をやっていない。それで参議院に移って今週成立してしまう。

毎日新聞の佐藤千矢子論説委員

この法案は、憲法21条「信教の自由」および憲法29条「財産権」を遵守した上で、いかに被害者救済にあてるための原資を確保するかという問題の解決に取り組むものであり、内閣法制局は「憲法21条との関係から個別具体的に慎重な検討が必要」と指摘しています。

このような憲法解釈を含めた議論は相当の時間を要するものであり、議論の結果として包括的に財産を保全できるという結論に至る確証もありません。

包括的な財産保全を目指す法案に対して、衆議院で可決した自民・公明・国民案は、法テラスによる被害者支援体制を充実して現行の民事保全法の実効性を高めると同時に、教団の財産の処分を厳しく監視して実質上の制限を強化するものであり、迅速な被害者救済を目指したものです。与野党の修正協議の結果、立民・維新も自民・公明・国民案に一定の評価を与えて賛成に回っています。

これに対して、一方的に不十分と断じて与党を批判しているのが佐藤氏です。法律の厳密性と即時性はトレードオフの関係にあり、責任政党である5党は3年後の見直しを条件に法案を早期成立させることで合意したのです。

無責任にイチャモンをつけてればよいメディアとは立場が異なるのです。

無理矢理にでも自民党を貶めたい悪意

さて、佐藤氏の次のコメントには論理的に大きな問題があります。

佐藤千矢子氏:自民党が「統一教会と関係を絶つ」と言ったが、本当に絶てているのか。岸田総理が教団の友好団体の日本支部のトップと過去会っていたという写真が今出ているが、憲法に抵触する恐れがあるからというのではなくて、やっぱり旧教団との関係が絶ち切れていないというところが影響しているのではないかと疑われている。

最初に結論を言えば、このコメントは極めて暴力的な言いがかりです。無理矢理にでも自民党を貶めたい悪意に溢れています。以下、事実を見ていきます。

朝日新聞はこの面談について次のように報じています。

関係者によると、岸田氏は党政調会長だった19年10月4日、党本部で来日中のニュート・ギングリッチ元米下院議長らと面談した。この場に、教団の友好団体「天宙平和連合(UPF)ジャパン」のトップである梶栗正義議長が同席していたという。(中略)党本部では、主に岸田氏とギングリッチ氏が米大統領選の情勢などを語り合った。面談は30分以上にわたり、梶栗氏は岸田氏に名刺を渡して自己紹介したという。

実際の映像は次の通りです。

「写真がすべてを物語っている」ギングリッチ元・米下院議長 旧統一教会系団体トップと岸田総理との面会認める | TBS NEWS DIG

つまり、2019年にギングリッチ元米下院議長の一行が自民党本部を表敬訪問した際に、同行者として当該人物がいたに過ぎないということです。

また、この時の30分程度の訪問をもって、岸田政調会長が統一教会に忖度するような深い関係性が生じ、今回の法案で優遇するに至ったと考えるのは、あまりにも蓋然性が低く、常軌を逸した飛躍がみられる暴論です。

さらにこの面談は岸田総理が統一教会との関係を絶つと宣言した2022年よりも過去の話であり、この面談を根拠に「やっぱり旧教団との関係が絶ち切れていない」という結論を導くのは、絶望的なまでに不合理極まりない推論です。

ちなみに、佐藤氏は、挙証不可能な前提から「岸田氏と教団は関係がある(断ち切れていない)」と主張しましたが、岸田氏がこれを否定するのは「ないこと」の証明、すなわち悪魔の証明が必要になります。

挙証責任がある側が責任を全うすることなく、陰謀論を展開して挙証不可能な悪魔の証明を批判する対象に課すのは、公共の電波を悪用した明確な言葉の暴力です。あえて言えば、このような非論理的な言説の論者が、毎日新聞の「論説委員」を務めていることに大きな疑問を感じます。

政権の行動を逐次チェックして必要に応じて批判することは、ジャーナリズムに課せられた使命です。しかしながら、疑いの蓋然性が極めて低いばかりか挙証不可能である事案に対して無理やり強い疑いをかけて批判するのは、公共の電波を悪用した卑劣な魔女裁判に他なりません。

根拠なき中国への希望的観測

この日の『サンデーモーニング』は、「風をよむ」のセグメントで「香港のいま」と題し、香港の民主化運動のリーダーとして逮捕され最近カナダに事実上亡命した周庭氏の発言を中心に中国共産党に対する批判を展開しました。

「香港のいま」27歳“民主化の女神”が語ったこととは―?【風をよむ】サンデーモーニング | TBS NEWS DIG

2020年に中国共産党の支配下にある当局から逮捕された周庭氏は、民主化運動へ参加しない誓約書を書かされたり、警察が同行する形で中国本土での愛国主義の展覧会に行くことを強制されたりしたという中国共産党による脅しの実態を告白しました。

周庭氏(VTR):中国共産党と政府が中国の経済発展のために何をしたとか、中国はどう素晴らしい国なのかという展覧会だったので。『愛国者にならなければいけない、ならないと自由を与えない』という脅迫の意味だと思う。

周庭氏は日本国民に対して自由や権利を大切にすることを訴えています。

周庭氏(VTR):台湾は香港と違って民主的な選挙制度があって、市民の言論の自由、集会の自由、そういう自由や権利も保障されている。多分日本人にとって遠い話になると思うけど、権利や民主的な制度、自由も当たり前ではない。自分がいま持っている自由や権利を大切にすることが大事だと思う。

さて、佐藤氏は、このトピックに対し、スタジオトークで次のようにコメントしています。

佐藤千矢子氏:周庭氏にはメディアの取材が殺到している。なぜメディアの取材に応じているかというと、「香港のことを忘れてほしくない」と。香港の一国二制度は完全に形骸化していて、おそらく数年単位では元に戻らない。
ただ、10年先、20年先に中国自体も変化して行くであろうし、『忘れない』『諦めない』の二つが大事だ。台湾に関して言えば、投票がどんな結果になっても、武力による統一とか、あそこを戦場にすることがないように、日本も知恵を出し、台湾も知恵を出し、平和を守ることだけは肝に銘じたい。

極めて不自然なことに、佐藤氏は、中国共産党が香港市民の自由を奪っていることを名指しで批判することなく、むしろ「10年先、20年先に中国自体も変化して行く」などと根拠のない希望的観測を述べています。

加えて、中国共産党が台湾に対して武力行使する権利を主張していることを批判することもなく、「武力による統一とか、あそこを戦場にすることがないように」などと日本と台湾に知恵を出すよう求めています。これは、人権を奪う側を無視して、人権を奪われる側に問題解決を要求する本末転倒のコメントです。

「毎日新聞と中国は関係がある」

ここで、なぜ、極めて不自然にも佐藤氏が極悪非道の中国を直接的に批判しないのか、考えられるのは「毎日新聞と中国は関係がある」ことです。

2018年、英・ガーディアン紙は、中国は世界的なプロパガンダ・キャンペーンを展開していると報じました。

Inside China's audacious global propaganda campaign

これは、中国国営の新聞社「チャイナ・デイリー」が外国の新聞社と契約を結び、中国共産党の政治プロパガンダに与する『チャイナ・ウォッチ』という折り込み広告を購読者に配布しているというものです。

そして、日本においてこの広告を購読者に配布していたのが毎日新聞なのです。

(英・ガーディアン紙より引用)

実際に毎日新聞は2016年から「チャイナ・ウォッチ」を配布していたことが報じられています。

中国が世界でばらまく「広告」の正体

中国共産党によって、周庭氏が逮捕され、香港市民の自由や権利が蹂躙されている時も、毎日新聞は「チャイナ・ウォッチ」の配布を継続していました。

このように、毎日新聞は、周庭氏をはじめとする香港の市民が自由と権利を求めて命がけで中国共産党に抗議していた民主化運動を覆い隠すような中国共産党の公然たるプロパガンダ・キャンペーンに協力していました。

その毎日新聞の記者が、「香港を『忘れない』『諦めない』の二つが大事だ」と発言したところで何の説得力もありません。

佐藤氏は、岸田氏と統一教会の根拠薄弱な関係を指摘するよりも、人権よりも商売を優先していると世界的に指摘されている毎日新聞と中国のズブズブの関係を自己検証した方がよっぽど社会正義に貢献するものと考えます。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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