デビューから25年を超えて、どうしてこれほどにも高い熱量、時として初期衝動をも凌ぐかのようなエネルギーを保っては放ち続けられるのだろうか。間断なく浴びせられる飛び抜けてアグレッシヴなバンドサウンドにそう唸らずにはいられない。 11月にスタートして全国6カ所を回ったOBLIVION DUSTのワンマンツアー『“Dystolumina” Winter Tour 2023』、その最終日となる2023年12月9日の東京・新宿BLAZE公演で彼らが魅せたパワフルなステージングは、コロナ禍が明けてもいまだ閉塞感を抱える鬱屈した時代にどでかい風穴をぶちあけるに十二分な破壊力を宿して、詰めかけたオーディエンスを終始、鼓舞し、奮い立たせた。ツアータイトルの“Dystolumina”はディストピアとイルミナを組み合わせたKEN LLOYD(Vo.)による造語であり、そこにはディストピア的な一面も持つ今の世の中に、ライヴを通じて光を灯したいという意志が込められているのだという。 8月にはSpotify O-EASTで白熱の2マンライヴを開催したOBLIVION DUSTだが、東京でワンマンライヴを行なうのは、1月にZepp Haneda(TOKYO)にて開催された前回ツアーの最終公演以来、11カ月ぶり。久々に思う存分、オブリサウンドを堪能できるという期待が充満した新宿BLAZEの空気は開演前から尋常でなくアツイ。予定時刻を少し回って、今か今かと待ち侘びる想いがピークに達しつつあったその瞬間、ハードエッジなオープニングSEが暗転した場内に溢れ、フロアはたちまちのうちに興奮で膨れ上がった。
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「Here we go! Please!」 ステージに登場するなりハイテンションでそう呼びかけて客席を煽るKEN。1曲目を飾った「No Regrets」のオリエンタルなニュアンスを孕んだ重厚なグルーヴがオーディエンスを直撃する。K.A.Z(G.)のザクザクと斬り込んでくるようなギターフレーズ、RIKIJI(B.)が刻むベースラインはこのうえなく不敵にうねり、サポートメンバーのYUJI(G.)とARIMATSU(Dr.)も一丸となって織りあげるふてぶてしいまでのアンサンブル。あえて勢いで押し切るのではなく、みぞおちの奥から焚きつけるようにして一人ひとりの全身にじっくりと熱を回らせるのが今のOBLIVION DUSTのモードなのだろう。芯から燃え盛った炎はちょっとやそっとじゃ消えないのだ。 「新宿、こんにちは! 本日、ツアーファイナルです。よろしくお願いします!」 80年代ニューウェーヴの煌めきを彷彿させる、最新ミニアルバム『Shadows』収録曲の中でもとことんキャッチーな「Glitch」、アッパーな推進力とサビの最後にファルセットで歌われる“Take me high...”がこのうえない解放感をもたらす「Plastic Wings」とさらに熱狂を加速させたステージから、KENが改めて挨拶するとやんやの歓声と拍手にフロアが沸く。新宿BLAZEが来年7月に閉館が決定していることに触れ、OBLIVION DUSTがこの会場でライヴをするのは2回目であること、今日が最後の新宿BLAZEでのライヴになると告げると「みなさん、悔いのないように好きに暴れて、思い出に残して帰ってください。我々も最後の最後で、ここぞとばかりにやらせていただきます!」と別れを惜しみつつも力強く宣言。これまた『Shadows」からの1曲「Searchlights」をドロップして、そのアーバンかつスケールの大きな音像と英語詞に込めたシリアスなメッセージでオーディエンスを包む。
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「Under My Skin」や「Syndrome」といったライヴでもことさら人気の高いアップチューンから中盤ではバラード曲を立て続けに披露してじっくりと聴かせるなど、新旧織り交ぜて構成されたこの日のラインナップはいつにも増してバラエティに富んでいる印象だったが、なかでも際立っていたのはやはり昨年、実に6年ぶりの新作としてリリースされた『Shadows』の楽曲たちだろう。前述した「Glitch」「Searchlights」をはじめとしてセットリストの随所にまんべんなく配置された全6曲はそれぞれに新鮮な輝きをライヴという一連の流れにもたらして、OBLIVION DUSTの現在進行形をありありとオーディエンスに伝える。しかもリリースからの1年間にずいぶんとライヴアレンジも練り上げられてきたらしく、曲としてはまだ若いながらもすでに重鎮然とした佇まいをも備えつつあるのが頼もしい。『Shadows』随一とも呼びたい流麗なメロディラインが聴く者の魂を震わせる「Traces」、哀切を粛々と募らせゆく演奏に乗せてエモーションを迸らせるKENのヴォーカリゼーションにはどこか恍惚とした甘やかさも宿っていて、その儚くも朗々とした歌声は目をみはるほどに美しかった。 中盤のMCでは、KENが前日に誕生日を迎えたARIMATSUを祝い、それに乗じてRIKIJIが不意打ち的に「Happy birthday to you」の一節をベースで奏でてオーディエンスも大合唱で盛り上がるというなんとも微笑ましいワンシーンもあったが、ひとたび演奏に突入すればステージと客席が互いに挑発し合うかのごときガチンコのバトルが繰り広げられる。ヒートアップするフロアに向けてペットボトルの水を撒きまくるKEN。コロナ禍には憚られたこのお馴染みのパフォーマンスが完全復活したことも狂騒にいっそう拍車をかけて、場内のヴォルテージはついにMAXに振り切れた。炸裂するボディビート、デジタルロックな疾走感が最高にクールな「Lust & Graffiti」もまた『Shadows』の曲だ。K.A.ZがフライングVを掻き鳴らして昂揚を煽った、ストレートなロックナンバー「Goodbye」はライヴの定番曲ながら今ツアーでは初披露になるのだそう。今日で終わるツアー、そして新宿BLAZEへの餞別の意も込められているのかもしれない。“湿っぽさなど一切伴わない、彼ららしい粋な さよなら”にオーディエンスもこぞって拳を突き上げる。
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「今日、ファイナルに来てくれたみんな、そして各地に足を運んでくれた方々、本当にありがとうございます。こんなにたくさんの人が集まってくれて嬉しいです」 残る3曲を前にKENの口からこぼれたのはシンプルに素直な感謝の言葉だった。『“Dystolumina” Winter Tour 2023』は今日で終わるがOBLIVION DUSTはここからまたさらなる歴史を紡いでいく、そんな決意もそこには秘められていたように思う。それを裏付けるようにこの日、2024年3月にファンクラブ限定ライヴ、5月からは次のツアーとなる『OBLIVION DUST Tour 2024(仮)』の開催が決定したと本人より告知された。キャリアにあぐらをかくことなく、常にチャレンジングな試みを模索しては音楽に昇華し続けるOBLIVION DUST。成熟と刷新を繰り返しながら、次はどんなサウンドを轟かせるのか。オーディエンスと一体になって猛るだけ猛った「You」をラストソングに迎えた大団円の先に広がる彼らの未来に想いを馳せずにいられない。(Text:本間夕子 / Photo:石川浩章)
OBLIVION DUST “Dystolumina” Winter Tour 2023 セットリスト
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2023年12月9日(土)新宿BLAZE
01. No Regrets
02. Glitch
03. Plastic Wings
04. Searchlights
05. Under My Skin
06. Crawl
07. Syndrome
08. Forever
09. Traces
10. With You
11. Disappear
12. Lust & Graffiti
13. Satellite
14. Nightcrawler
15. Goodbye
16. Everyday Negative
17. Evidence
18. You