カニ面求め4時間行列 金沢おでん、人気再沸騰

金沢おでんを目当てに行列をつくる観光客=金沢市片町2丁目

 金沢市中心部のおでん店に、新型コロナの流行前を上回る客が殺到している。5類移行後初めての冬とあって、平日昼間の行列はもちろん、夜は最長4時間待ちの店舗も。11月のカニ漁解禁後は「カニ面」を求める観光客が押し寄せ、混雑に拍車を掛けている。最近は国内のみならず、台湾などアジア旅行者からの人気も高まっており、地元客が入り込む余地はほとんどない状況だ。

  ●コロナ前上回る

 12月上旬、金沢駅構内のおでん店「黒百合」のカウンターでは、台湾人カップルが注文したカニ面を物珍しそうにつついていた。店によると、最近は来店客が430人とコロナ前を上回る日も多い。

 和田純店長(46)によると、客の1割強はアジアからの観光客。欧米人は少ないが、アジア系の客は1時間以上待って入店する人も多いとし、「だしの味が合うのかもしれない。皆さん、おいしそうに食べてくれる」と話した。

 金沢市片町1丁目の「おでん居酒屋 三幸」は連日、閉店まで行列が絶えない。並び始めてから席に座るまで4時間かかる人もおり、掛上努店長(65)は「ここまでのことはコロナ前でもなかった。うれしいけど、素直に喜べない」と複雑な胸

中を明かす。閉店時刻が迫り、「入店できないかもしれない」と伝えても帰らない人もいるという。

 片町スクランブル交差点の「金澤おでん 赤玉本店」(金沢市片町2丁目)には週末になると、正午の開店前から50人以上の列ができる。今月上旬、大阪府の会社員、小川智史さん(27)は「開店1時間前から並んでいる。おでんを食べるために来たので」と入店を待ちきれない様子だった。

  ●地元優先席効果なし

 ただ、各店からは地元客を心配する声もある。黒百合の和田店長は「大っぴらに常連さんを優先することもできない」と話し、「比較的すいている午後2~4時に来て」と呼び掛けてはいるが、足が遠のいたままの客も多いと明かした。

 三幸では、混み具合によって地元客の「優先席」を設けることもあるが、常に用意できるわけではなく、効果は限定的。掛上店長は「観光客と一緒に並んでもらうことも多く、本当に申し訳ない」と語った。

  ●「並ぶこと苦にせず」

 「観光公害」の解決策提案を目指す北陸観光研究ネットワークの発起人で、北陸先端科技大学院大の敷田麻実教授(観光地域経営)は、特定の店に客が殺到する現象について「観光客は非日常を求めており、時間効率よりも体験を重視する。並ぶことをそれほど苦にしないため、コントロールするのは難しい」と話した。

 金沢おでんについては「比較的安価で気構える必要がなく、冬場という時期的な要素が加わって格好のターゲットになっている」と指摘。混雑の解消には時間がかかるとし、「例えば『おでんセンター』のような施設を作れば、おでん目当ての客を誘導、分散できるかもしれない」と提案した。

人気の「カニ面」

© 株式会社北國新聞社