[社説]自民の裏金問題 改造ではなく総辞職を

 内閣や党の要職にある議員の裏金疑惑が相次いでいる。岸田文雄政権の信頼は失墜し、もはや内閣を改造して済む話ではない。

 自民党安倍派の政治資金パーティー裏金問題を巡り、岸田首相は閣僚、副大臣、政務官の計15人を交代させる方針を固めた。

 事実上の更迭となる閣僚は松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農相の4人。

 党側も高木毅国対委員長と萩生田光一政調会長が交代する見通しだ。

 他にも塩谷立座長や世耕弘成参院幹事長ら安倍派幹部がパーティー券の売り上げからキックバック(還流)を受けた疑いが浮上している。大量の更迭方針には党や内閣の要職から安倍派を一掃する狙いがある。

 同派閥で裏金とされた総額は2022年までの5年間で1億円超に上るとみられる。パーティー収入の一部の「裏金化」は常態化していたともされており、事実なら悪質性は高い。

 しかし、いずれの議員も疑惑について説明を逃れようとする姿勢が目立つ。

 まともに説明しようとしない松野氏に対し、立憲民主党は「内閣の情報発信者として機能を停止した」として不信任決議案を衆院に提出した。

 萩生田氏は自らの進退について「自分で決めたい」とするが、その前に疑惑についての説明責任をまず果たすべきである。辞任や更迭で曖昧にすることは許されない。

■    ■

 自民最大派閥である安倍派の所属議員は99人。還流を受けたのは数十人に上るとみられており、東京地検特捜部は事務方や議員秘書ら少なくとも10人以上に、任意で事情聴取している。

 パーティー券を巡っては、二階派でも億単位のノルマ超過分について、派閥側の政治資金収支報告書に記載されていないとみられることが判明した。特捜部が実態解明を進めている。

 大勢が不正に関わったり、不正を知っていたりする可能性があるのではないか。この際、組織のうみを徹底的に洗い出す必要がある。

 要職の首のすげ替えで問題を覆い隠すようなやり方は認められない。

 資金還流はいつから始まったのか。多額の裏金は何に使われたのか。

 党総裁である首相自ら先頭に立って疑惑の解明を図るべきだ。

■    ■

 自民党では政治とカネを巡る不祥事が繰り返されてきた。

 1988年に発覚したリクルート事件では竹下登内閣退陣に発展。日本歯科医師連盟からの1億円献金隠し事件では、村岡兼造元官房長官が2004年に在宅起訴された。

 昨年もパーティー収入の不記載で薗浦健太郎氏が衆院議員を辞職し、略式起訴されたばかりだ。

 今回は裏金疑惑はもとより、一向に説明責任を果たそうとしない対応もさらに深刻だ。政治不信はかつてないほど高まっている。岸田内閣は責任を取って総辞職すべきだ。

© 株式会社沖縄タイムス社