草彅剛『デフ・ヴォイス』出演で新境地。美しすぎる手話披露

気持ちから何かを伝える、ということを大事にして、手話をおこなったと語る草彅剛(写真提供:NHK)

政治家、偉人、トランスジェンダー役など、幅広い演技で定評のある草彅剛。放送中の朝ドラ『ブギウギ』での羽鳥善一役も好評だが、12月16日、23日に前後編で放送されるドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士(NHK総合)では、手話通訳士を熱演する。

ドラマの囲み取材が行われ、冒頭で丁寧に挨拶した草彅剛。

「みなさん、お忙しいなか、貴重なお時間を使って頂いてありがとうございました。今日は宜しくお願い致します」

アカデミー俳優になっても、「いい人」は変わらず健在。ユーモアを交えた回答などで終始笑顔の絶えない取材になった。

ーー今回、手話通訳士という難役。初めて本格的な手話に挑戦されましたね。

手話は大変でしたね。3人の先生にみっちり指導していただいて2カ月くらい練習しました。次の日のシーンの手話を前日に練習したり、大阪で『ブギウギ』の撮影をしながらだったので、新幹線の中でも練習していましたね(笑)。

監督が練習の現場にも毎回来てくれて、シーンごとに細かく相談しながら最善の手話を考えていきました。

今回、実際のろう者の方とお芝居をする、ということが大きな挑戦、新たな試みでしたが、そのことによって、僕の中から溢れ出る表情が生み出されたのかな、と思っています。

ーー特に難しかった手話のシーンはどこでしたか?

レストランでろう者の人の事を悪く言う青年たちに向かってやった手話って全然映ってないんですけど、かなりやったんですよ。酷い事をやってるから映さなかったんでしょうね。映さないなら練習しなくて良かったんじゃないかなって思ったりして(笑)。

あれ、すごい長いんですよ、すごく長くて。すごい難しいんだけど、すごく汚い事ばっかりやるやつで、ああ、これは覚えないといけないな、って思っていて、十時間以上費やしたかな。だけど顔のアップしかなくて、それが一番の驚きでしたかね(笑)。

ーー言葉を発せずに表情だけでの演技で、苦労した点などはありますか。

あんまり自分ではこうしよう、ああしようとは思ってはいなくて、本当にいい空気に包まれて演技ができた、という感じなんです。

現場に入って、ろう者の方々の手話を見ていたり一緒にお芝居をしたりしていると、なんだかとても吸引力があって、その空気感に引き込まれていきましたね。

ーーろう者の方々とのコミュニケーションはスムーズにできたのでしょうか?

本当に温かい現場で、役者さんだけでなく、エキストラさんとかもろう者の方々にお手伝いいただいていたので、何か垣根を超えたコミュニケーションが取れた感じでしたね。

手話じゃなくても身振り手振りで気持ちを伝えたり、お互い同じ方向を向いて一つのシーンを作り上げようという気持ちになりました。

お芝居をしている、というより、楽しく遊んでいるような温かい雰囲気の現場でした。

ーー今でも残っている手話があったら教えてください。

残っている手話か〜(笑)。

みっちり練習してたくさん覚えたんですけどね。すぐ出てこないな(笑)

あ、「おめでとう」っていうのは覚えています。ハハハハ。

ーー草彅さんご自身がドラマの面白さを感じた部分は?

お話を頂いた時に手話を扱った作品、と聞いて、もっとヒューマンで感動的なお話だと思ったんですが、台本を読んだらミステリーだったんですよね。

ストレートな感動劇ではなく、犯人捜しがあったり、そこにろう者やコーダというポイントが散りばめられていたりして、普通の謎解きとはまた違った面白さがあると思いました。

ーー遠藤憲一さんが「草彅くんとずっと共演してみたかった」と話していましたが、初共演はいかがでしたか?

僕も昔から気になっていた方でした。実際、共演してみたら、すごくチャーミングでかっこいい方で、場を和ませてもくれました。はにかんだような笑顔で「元気?」「今日、元気?」って気遣ってくれたりして。

お芝居もほんと素敵で、エンケンさん演じる何森刑事のシーンがいい緊張感を生み、ミステリーの面白さに拍車がかかったと思いました。

「デフヴォイス2」みたいに、エンケンさんと僕とでバディ組んで続編やりたいな、って思うんですよ。

誰か考えてくれないですかね(笑)。そんな風に思わせてくださる方でしたね。

ーー印象に残っているシーンはありますか

尚人が(ろう者の)兄と兄弟喧嘩をするシーンで、久しぶりに家族で休日を楽しんでいる時に突然殴られたりしてビックリするんですが、これが本当の兄弟喧嘩なのかな、という感じがして、とてもいいシーンだな、と思いました。

兄役の役者さんがすごいワイルドな方なのですが、雄たけびのような勢いで僕に向かってぶつかって来きたので、僕もスイッチが入って、本当の兄弟喧嘩のようなお芝居ができたんだと思います。

あまり話せませんが、母親とのシーンが一番視聴者の方に届けたい場面でもあるのでぜひ、最後まで見ていただきたいです。

ーーこのドラマは家族の絆もテーマになっていますが、尚人を演じて家族のあり方について考えたりしましたか?

やはり家族はとても大切なもの。人は一人じゃ生きていけない、と思いました。尚人は自分がコーダということで思い悩んでいたけれど、恋人のみゆき(松本若葉)のように傍にいてくれる人がすごく大事だな、ということを感じましたね。視聴者の方々も、心の繋がりの大切さなどを考えることができる、とても素敵な作品だと思います。

ーー手話でお芝居をした事など稲垣吾郎さんや香取慎吾さんに話されましたか?

全然話していないんです。忙しかったですからね。でも二人にも見て欲しいドラマです。『罠の戦争』は、主題歌を歌ったこともあって、慎吾は全話見てくれました。

吾郎さんはね、一話しか見てなかったみたい。「りんご潰したシーンで寝てしまった」って。ひどいですよね(笑)。

僕は吾郎さんの出ている映画『正欲』も見ましたよ。すごく良かったです。いつも僕は吾郎さんの作品見てるのに、吾郎さんは僕の作品は見てくれないんです。でも今回はきっと見てくれると思っています。

ーー2023年はどんな年でしたか? そして来年はどんな年にしたいでしょうか?

ずっとセリフを覚えていた1年でした。いろいろお仕事を頂いて幸せな1年でしたね。(2024年5月公開の)映画『碁盤斬り』は、1手を撮るのに4時間くらいかかったりして大変な撮影だったので、ぜひ見てください。

今年は兎年、僕もぴょんぴょん飛び跳ねていたので““うさぎ賞“をください(笑)。

来年は辰年なので、大好きな龍の入ったスタジャンをたくさん着たいと思います。

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