テノール歌手の秋川雅史さん、富山で夢の仁王像作りに挑む 井波彫刻師の関さん協力、南砺でのみ入れ式

関さん(左)に見守られながら原木にのみを入れる秋川さん=南砺市北川

 ヒット曲「千の風になって」で知られるテノール歌手、秋川雅史さん(56)が木彫刻の仁王像制作に挑戦する。歌手活動の傍ら富山県の井波彫刻の仏師、関侊雲(こううん)さん(50)が都内で開く教室に10年以上通い、腕を磨いてきた。仁王像制作は長年の夢で、関さんらの協力を得て取り組む。11日は関さんの工房でのみ入れ式があり、関係者が無事の完成を祈った。

 秋川さんは愛媛県西条市出身。幼少期に地元の曳山(ひきやま)祭りで繰り出されるだんじりに施された彫刻を見て以来、木彫刻に強い関心を持ち続けてきた。

 2010年に関さんの彫刻教室の門をたたいた。地道に努力を続け、親交のある寺院に仏像を納めるようになったほか、美術展「二科展」で入選を果たすほどに成長した。

 以前、彫刻を納めた天明寺(群馬県)から今年に入り、仁王像を設置してほしいと提案を受けた。鈴木辨望(べんもう)住職(51)は関さんの高校の先輩。関さんが指導した秋川さんの腕前を評価し「仁王像を見て、訪れた人が一つのことを成し遂げる素晴らしさを感じてほしい」と期待を寄せる。

 像は阿形(あぎょう)、吽形(うんぎょう)の2体。完成は5~6年後を見込む。寸法はどちらも秋川さんの身長とほぼ同じ高さ約1.7メートル、幅約1メートル、奥行き約90センチ。筋肉の動きや骨格を研究し、人間らしさや躍動感を表現する。関さんの工房のメンバーと共に、部材を組み上げる寄せ木造りで完成させる。

 11日に南砺市北川(井波)の関さんの工房で行われたのみ入れ式では、鈴木住職らによる読経の後、秋川さんらが約3メートルのクスの原木に一刀目を打ち付けた。

 秋川さんは「千、2千年と皆さんに手を合わせてもらえるような像を作りたい」、関さんは「大作に挑戦するのは初めてなので、技術面や安全面でアドバイスし、いいものを作り上げたい」と意気込んだ。

読経を行う関係者
粘土で作ったミニチュアの仁王像

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