農山漁村発イノベーションの推進について

1、はじめに

中山間地域をはじめとする農山漁村では、少子高齢化・人口減少が都市に先駆けて進行している一方で、若い世代を中心に地方移住への関心が高まっており、農山漁村の持つ価値や魅力が再評価されています。

こうした動きの受け皿となる「しごと」の場づくりに向け、農林水産省ではこれまで、農林漁業者が加工・販売等に取り組む6次産業化の取り組みを支援してきましたが、この動きは近年伸び悩んでいます。

こうした状況を踏まえ、農林水産物に限らない景観、文化・歴史等の多様な地域資源や農林漁業者に限らず、地元企業などの多様な主体の参画によって新事業や付加価値の創出を図る取り組みとして、従来の6次産業化を発展させた「農山漁村発イノベーション」を推進しています。

2、「農山漁村発イノベーション」推進の取り組み

(1)農山漁村発イノベーションの取り組み事例

ア 竹林資源をフル活用

ワカヤマファーム(竹林利用)

栃木県宇都宮市の民間事業者は、タケノコや栗の加工販売に加え、美しい竹林の景観を活かして、映画のロケ地や観光商品としても活用する取り組みを行っています。

これは、「農林漁業者、地元企業」が、地域の「農産物、景観」を「加工販売、観光・旅行」の分野で活用している取り組みと言えます。

イ 森林を活用したサバイバルゲーム事業

フォレストーリー(サバイバルゲーム)

長野県諏訪市の民間事業者は、長野県や栃木県の森林をフィールドとしたサバイバルゲーム事業を行うとともに、参加料の一部を森林所有者に還元しています。

これは、「ベンチャー企業」が、地域の「森林」を「スポーツ」の分野で活用している取り組みと言えます。

(2)農山漁村発イノベーションの支援策

ア 農山漁村発イノベーション創出支援型

農林水産物や農林水産業に関わる多様な地域資源を新分野で活用した商品・サービスの開発やこれらに係る研究開発、デジタル技術の活用に係る専門的な知識を有する人材(デジタル人材)の派遣・育成等を支援する事業で、以下の3種類の事業に大別されます。

(ア)農山漁村発イノベーション推進支援事業

農山漁村発イノベーションの実施に必要な経営戦略策定、販路開拓、ビジネスアイデアの創出、研究・実証事業等の取り組みを支援する事業です。

具体的な支援対象のは以下のとおりです。

①2次・3次産業と連携した加工・直売の取り組み

②新商品開発・販路開拓の取り組み

③直売所の売り上げ向上に向けた多様な取り組み

④多様な地域資源を新分野で活用する取り組み

⑤多様な地域資源を活用した研究開発・成果利用の取り組み

(イ)農山漁村発イノベーション中央サポート事業

農山漁村発イノベーション中央サポート事業には以下の事業が含まれます。

①農山漁村発イノベーション中央サポートセンター運営事業

中央サポートセンターにおいて、都道府県サポートセンターと連携し、農山漁村発イノベーションに係る高度な課題を抱える事業者等への専門家派遣の取組に加え、高度なデジタル人材の派遣等を支援する事業です。

②農山漁村発イノベーション促進事業

農山漁村で新事業を興す起業家と農山漁村のマッチングの取り組み等を支援する事業です。

本事業では、起業家や課題を持つ地域が双方向でマッチング可能なウェブプラットフォーム「INACOME」()を運営しています。

(ウ)農山漁村発イノベーション都道府県サポート事業

各都道府県のサポートセンターにおける、農山漁村発イノベーションに係る経営改善等の多様な課題を抱える事業者等への専門家派遣に加え、デジタル人材の派遣・育成の取組等を支援する事業です。

イ 農山漁村発イノベーション産業支援型

農林漁業者等が多様な事業者とネットワークを構築し、制度資金等の融資又は出資を活用して6次産業化等に取り組む場合に必要となる、農林水産物加工・販売施設等の整備に対して支援する事業です。

終わりに

以上のように、農林水産省では「農山漁村発イノベーション」を推進するための支援を幅広く用意しています。

農山漁村発イノベーションの詳細については、こちらよりご覧いただけます。

各事業の活用に向けた相談や要件等の詳しい内容については、農林水産省のウェブサイトに掲載の各地方農政局等へお問い合わせください。

今後も農山漁村における所得と雇用機会の確保を図ることで、農山漁村の振興に資する取り組みが一層進展するように「農山漁村発イノベーション」を推進していきます。

寄稿者 野原努(のはら・つとむ)農林水産省農村振興局農村政策部都市農村交流課企画官

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