「思ったより元気そう」周囲の言葉で人間不信に 息子亡くした遺族、被害者支援充実訴え

「誰でも犯罪被害者になる可能性がある」と話した岩城順子さん(宇治市宇治・市生涯学習センター)

 犯罪被害者の支援について考える講演会が、京都府宇治市宇治の市生涯学習センターで開かれた。息子を暴行事件が原因で亡くした府犯罪被害者支援アドバイザー岩城順子さん(71)=木津川市=が「社会全体で関心を持って、正しく理解してほしい」と訴えた。

 岩城さんの長男道暁(みちあき)さんは大学生だった1996年、見知らぬ男に殴られ、けがが元で重い障害を負い、3年後に亡くなった。

 講演で岩城さんは、当時は犯罪被害者のための相談窓口や公的支援はなく、医療や福祉の対応も十分でなかったと振り返った。「お気の毒に」「思ったより元気そう」といった周囲の言葉に傷つき、人間不信になった。一方、親身になってくれる人もいて救われたという。「長い時間をかけて手探りではい上がってきた」と話した。

 きょうだいに対する心のケアの必要性にも触れた。道暁さんと2歳離れた妹が母親に心配をかけまいと無理をしていたことに後になって気が付いたとし、「子どもを亡くした親と同じように、きょうだいにも配慮が必要だ」と呼びかけた。

 この間、犯罪被害者等基本法や自治体の支援条例ができてきたことを踏まえ、「行政の窓口が被害者の道しるべになりますように」と願いを込めた。

 講演会は宇治市と京都犯罪被害者支援センターが犯罪被害者週間(11月25日~12月1日)に合わせて主催し、市民ら約60人が耳を傾けた。

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