MLBロサンゼルス・ドジャースと10年総額7億ドル(1014億円)で契約を結んだ大谷翔平選手。
その契約総額はリオネル・メッシを上回り、スポーツ史上最大となった。
サッカー通である影山優佳さんは、ABEMAの番組で「10年単位っていうのが本当に感覚としてなくて…」、「サッカーでいうと、怪我とかもあるから、2~3年契約が長いほうだったりするじゃないですか。びっくりじゃないですか?」と驚いていた。
史上最高額の契約を結んだアスリートの上位10人中7人はMLBの野球選手で、その契約年数は9~14年と非常に長い。
一方、サッカー選手は、2位メッシとバルセロナとの契約期間は4年、4位のカリム・ベンゼマもアル・イティハドとの契約期間は2年だ。
野球界と異なり、サッカー界で10年契約に聞きなじみがない理由はなぜなのか。
まず、大前提として、FIFA(国際サッカー連盟)の規則がある。
「FIFA REGULATIONS FOR TRANSFERS」には、「契約期間は最長5年。18歳未満は3年以上のプロ契約を結ぶことはできない」と明記されているのだ。つまり、サッカー界では原則的に契約期間が5年以内。
ただ、例外もある。よく知られているのが、近年のチェルシーだ。
ミハイロ・ムドリク、エンソ・フェルナンデス、モイセス・カイセドとは2031年まで、ブノワ・バディアシルとは2030年までと5年を超える契約を結んでいるのだ(それ以前にもアーセナルとセスク・ファブレガスが8年契約、トッテナムとハリー・ケインが6年契約を結んだこともある)。
彼らが契約期間を長くしている理由は、UEFA(欧州サッカー連盟)が定めるファイナンシャル・フェアプレー規則への対策。コストを長期間に渡って分散させるためだ。
ただ、チェルシーはなぜ5年以上の契約を結べたのか。
それはFIFAの規定にこのような但し書きがあるからだ。「契約期間の上限は5年とする。それ以上の長さの契約は、(当該国の)国内法に合致する場合のみ認められる」。
イギリスには制限がなかったため、チェルシーは5年以上の契約を結ぶことができたというわけ。
そして、チュルシーのこの長期契約戦略には、大谷が入団するドジャースも間接的に関係している。
2022年にチェルシーはアメリカの実業家トッド・ベーリー氏に買収されたが、彼はドジャースの共同オーナーのひとりでもあるのだ。
チェルシーが獲得選手と異例の長期契約を結ぶようになったのはベーリー氏のオーナー就任以降のこと。
『CBS』は、ベーリー氏がMLBでお馴染みの長期契約をチェルシーに持ち込んだとしている。
「チェルシーで面白いのは、常に成功レベルで前オーナーを上回りたいということ。出来るだけ早くトップに立つために、アメリカスポーツ界で学んだ教訓をイギリスで実践している。それこそああいう契約になっている理由だ。ベーリーが野球界で学んだのは、選手と長期契約すれば、より長期間に金を分散できるということ。そうすることで収益、収入、キャッシュフロー、そして、理論的にはFFPにも貢献する」。
MLB選手の契約期間があれだけ長くなるのも実際に10年後までプレーするかというよりもコストの分散という側面もあるようだ。
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ただ、チェルシーの長期契約手法は形骸化しうる。UEFAが2023年7月から移籍金の分割期間は最長5年と規定したためだ(遡及的な適応はされない)。
契約期間自体はこれまで通り各国の規定に基づく(5年以上もありえる)が、移籍金の支払いを5年以上に延長することはできない。契約を延長することでコストを分散させることはできるが、その延長期間も5年未満に定められた。