【チェーンドラッグストア協会】敷地内薬局の是非論、「議論していない」

【2023.12.12配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月8日の会見で、敷地内薬局をめぐる調剤報酬改定の議論に対して意見をまとめたとして、内容を公表した。一方、会見の中で敷地内薬局をめぐるさまざまな指摘や意見に対しての協会の見解を問われると、敷地内薬局そのものの是非論については「議論していない」とした。

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は「特別調剤基本料の薬局を有する開設者の体制評価(イメージ)に対する意見」とした文書を公表した。同日、協会内で了承がとられた内容だとして、今後、早い段階で厚労省に提出したいとした。持参か、郵送かも含め「早めに手元に届くようにしたい」とした。

意見書では、11月29日開催の中央社会保険医療協議会(中医協)において、厚生労働省から「敷地内薬局がひとつでもあれば開設者(グループ)に属する薬局全ての調剤基本料を一律に引き下げる」とのイメージ案が示されたとして問題視。この提案に対して強く反対するとした。「薬局は本来、個別にその果たしている機能に基づき評価されるべきであり、開設者の属性により評価に差を設けるべきではない」と主張。また、「何の合理性もない単なる懲罰的な措置と言わざるを得ない」としたほか、「合法的な薬局展開の一形態にすぎないとし、このような厚生労働省の施策に基づく敷地内薬局であるにもかかわらず、その存在を理由とするグループ全体の調剤基本料の引き下げは、「行政の継続性や頼性を損なう施策であるといわざるを得ない」とした。
■意見書全文
https://www.dgs-on-line.com/articles/2400

一方、敷地内薬局をめぐっては、11月29日の中医協では資料の中で「保険医療機関の敷地内にあり、不動産の賃貸借等の関係にあるいわゆる敷地内薬局に関して、構造設備規制の見直しが行われた平成28年以降の開設状況、当該薬局の収益状況や収益構造のほか、医療機関における公募状況等の関係性やかかりつけ機能の実態等を踏まえ、診療報酬上の評価をどのように考えるか」との論点が示されていた。「特別調剤基本料を算定する薬局の収益構造や経営実態等を踏まえ、調剤基本料では開設者(グループ)単位での体制評価がなれされていることも考慮すると、敷地内薬局を有する開設者(グループ)として評価することも考えられる」ともしていた。

また、中医協で日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、とどまることのない敷地内薬局出店の状況に強い反対姿勢を示していた。森氏は次のように述べた。
「敷地内薬局に関しては、令和4年度診療報酬と調剤報酬で対応されたが、その後も誘致・出店が止まらないばかりか、先日、敷地内薬局の誘致をめぐる医療機関の元事務長、敷地内薬局の運営会社の役員が逮捕・起訴されるという事案が発生しました。適切な医薬分業のためには、これは昭和50年代から繰り返し指摘され続けてきましたが、保険薬局は経営上はもちろんのこと、保険医療機関からの経済的・構造的・機能的に独立していることが不可欠であり、敷地内薬局は国の目指す医療の姿に逆行すること、保険料にかかる財源は国民皆保険制度で成り立っているため、公費・保険料をこのような使い方をするということは適切ではないと日本薬剤師会として繰り返し指摘してきたところです。このような事案が発生しまったことは、誠に遺憾としか言いようがありません。このような事案が発生した背景には医療機関側が行っている公募要件にも問題があります。相変わらず薬局の運営とは関係のない医療機関の施設の建設を敷地内薬局の誘致条件にするものや、逮捕された件に関しては先日の業界紙報道によれば、20年間で25億4700万円の家賃等の提案をして出店が決まったとの報道がありました。地元関係者の話では平均家賃の約15倍から20倍になるとのことです。今回の改定においては、誘致する医療機関側・開設薬局の双方においてさらなる強い対応をすべきと考えますが、該当薬局の調剤報酬での対応には限界があり、別の方法が必要で、資料の40ページ目に示されている(敷地内薬局を有する開設者グループとして評価する)ことも一つの方法と考えます。さまざまな側面での対応が必要と考えます。また保険薬局の保険医療機関からの独立性については、新規指定時のみでなく、更新の際にも誘致条件・契約内容などについても手続きの中でしっかりと確認することが必要なのではないでしょうか」(森氏)。

これまでJACDSでは敷地内薬局に対して個々の加盟企業の取り組みとの姿勢を示していたが、今回は敷地内薬局の改定への意見書を協会としてまとめたため、記者から「刑事事件が発生し、敷地内薬局に対してさまざまな指摘、意見がある中で協会としてどのような見解を示すのか」との質問が出た。

この質問に対し、JACDSの中澤一隆専務理事は、「率直に言いまして、敷地内薬局の是非を協会の中で議論したことはありません。それ以上でもそれ以下でもないとしか専務理事の立場では申し上げられない。今回は敷地内薬局の当該(グループ)のそれ以外の懲罰的な調剤報酬の減額ということになっているのは納得できないという仕立てにしております」と回答した。

関連して池野隆光会長は、医療機関が土地を保有している場所に出店していた場合、敷地内薬局となり、グループ全体が引き下げ対象になる可能性があるのではないかとの指摘をした上で、「なんでも全部はめこんじゃうというと、ちょっと違うんじゃないかというふうに思う」と述べた。「1店舗でもあればダメなんだということになると、急いで閉めないといけなくなる。理屈からいえばそういうことになってしまう」とした。

また根津孝一副会長は、「その是非論をやっていると、朝まで続く」とした上で、「時代の流れ、規制の流れ、そこで起きてきたこと。われわれはドラッグストアとして、一律やられたんでは、とんでもないなと。ということで反対を出したという流れ。現実的にはそういう流れだ」とした。

会見に出席していた勤務薬剤師委員会委員長の関口周吉氏は、「自社のこととして」と前置きした上で、「すべて個社判断ということだと思っています。私としては、龍生堂(関口氏が経営する企業)としてという意味ですけれど、それはこれからの面分業とか、それから地域包括ケアシステムということを考えた時に、どうなんだろうと、そういった考えはしております」と述べた。

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