新NISAとiDeCo、どちらを優先したほうがよい? 年代別で考える割合

2024年に大幅アップグレードされる「新NISA」。非課税期間が無期限になり、投資金額が大幅拡大、売却枠の再利用になるなど使い勝手が良くなり、さらに柔軟性が増します。また、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠が併用可能になるので、投資信託に加えて個別株投資をする投資家も一気に増えそうです。

ちなみに、非課税投資制度には「iDeCo」もありますが、こちらは運用益非課税に加えて、毎月の掛金が全額所得控除になるという、NISA以上に節税効果が高い側面があります。毎月の掛金に余裕があるなら、併用したほうが良いですが、掛金に制限がある場合どちらを優先した方がよいのでしょうか。

今回は、新NISAとiDeCo、どちらを優先するのかの判断基準について一緒に考えていきたいと思います。


新NISAとiDeCo、どっちを優先する?

新NISAとiDeCoを比較した表は次のとおりです。

両制度を比較して、有利だと思われる点を赤字にしました。

なお、投資できる商品において、どちらも赤字にしています。理由としては、投資できる商品の種類や数でいえば新NISAに軍配が上がりますが、中には元本確保型の定期預金や保険がいいという方にとってはiDeCoが有利に映るからです。

とはいえ、「運用益にかかる税金がゼロ」というメリットを最大限に活かすならば、iDeCoでは投資信託を選び、コツコツと増やしていく方が税制優遇の恩恵をより受けられます。

資金に余裕があるならば、併用して堅実にお金を増やしたほうがいいのですが、投資できるお金には限りがありますよね。どちらを優先すべきか、という判断軸の1つが「年齢」です。

節税効果が高いのはiDeCo

節税効果が高いのはiDeCoですが、iDeCoは老後資金しか貯められず、毎年、口座管理手数料がかかるのがネックです。したがって、ライフイベントが控える20代・30代であれば、新NISAを優先するとよいでしょう。新NISAで貯めたお金はさまざまな用途に使うことができます。

一方、40代・50代ならば、iDeCoを優先することを検討します。年齢が進めば、ある程度のライフイベントをこなしてきている可能性が高いこともありますが、年収が高く納める所得税・住民税も増えている時期だからです。特に50代は、年収が生涯で一番高い時期だと考えられます。

著書「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)より

年収が高いほどiDeCoは優先したほうがいいと考えます。iDeCoに毎月2万円積み立てた場合を考えてみましょう(年間の掛け金は24万円)。

所得税率5%のとき、住民税率10%(所得税率に関わらず一律)と合わせて税率は15%になりますが、iDeCoの所得控除による節税効果は24万円×15%=3万6000円です。この金額は毎年節税できます。

これが、所得税率20%であれば、iDeCoの所得控除による節税効果は24万円×30%=7万2000円と倍の節税額になります。おおよそ年収650万円(所得控除が基礎控除と社会保険料控除のみで考えた場合)を超えてくると、所得税率20%に該当しますので、iDeCoの優先順位を高めた方がいいでしょう。

iDeCoの掛金上限額は、会社員であれば、企業年金の有無で異なり月1万2000から月2万3000円となっていますが、新NISAと比べると低めです。

iDeCoで上限額いっぱい積み立て、新NISAも併用するという戦略の方がベターでしょう。そもそも、iDeCoは65歳未満までしか新規の投資ができない、期間限定活用できる制度です。新NISAは年齢の上限なく無期限で非課税の投資ができるので、取り返せる税金があるうちはiDeCoを優先したいところです。

新NISAとiDeCo、向いている人は?

新NISAとiDeCoどちらを優先するのかの判断基準をまとめたのがこちらです。

著書「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)より

新NISAは多くの金融機関では1000円、ネット証券では100円と少額から始められますので、少額から投資を始めたいという方に向いています。また、老後資金以外のさまざまな資金用途でお金を貯めたい人、個別株に投資したい人、60歳以上で長期投資したい人は新NISAがいいでしょう。

iDeCoは60歳まで原則として資産の引き出しができないため、老後資金以外での目的で活用するのは適していません。また、どの金融機関でも口座開設時に2829円(税込)、運用中に毎月171円(税込)の手数料がかかり、金融機関によっては月数百円の口座管理手数料がかかることもあります。よって、iDeCoの掛金は最低月5000円からですが、掛金額を少なくしていると、掛金に占める手数料の割合が大きくなり、資産を増やす面では効率が悪くなります。「毎月1万円以上」と記載しているのは、そうした手数料面を考慮したためです。

月10万円など、まとまった金額が投資できるなら、新NISAとiDeCoは併用すべきでしょう。たとえば、企業年金のない会社員なら、月2万3000円をiDeCo、残りの7万7000円を新NISAで投資します。

著書「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)より

年3%で運用できれば、新NISAとiDeCo合わせて、20年後には3283万円になります。

新NISAだけを利用するよりも、iDeCoを活用することで、所得税率20%であれば、所得控除の効果で税金は年8万2800円安くなり、20年間では165万6000円得する計算です。

はじめての新NISA&iDeCo

著者:頼藤太希・高山一恵
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