「積みボドゲ」を消化するボードゲームや偏見を題材にしたゲームなど個性的な作品が目白押し!「ゲームマーケット2023秋」レポート

「ゲームマーケット」(以下、「ゲムマ」)とは、“電源を使用しない”アナログゲームのイベント。ボードゲームをはじめ、TRPGやマーダーミステリーといった多種多様なアナログゲームを試遊・購入できる場として、年々注目度が高まっている即売会だ。

今回開催された「2023秋」では、コロナ禍以降で初めて入場制限が撤廃。「ゲムマ」史上最大となる1115ブースが出展し、両日合わせて25,000人が来場した。本記事では、アナログゲームが好きすぎて総額40万円以上を費やしている筆者が、「これは面白い!」と思った10作品+αを紹介しよう。

11時の早期入場の時点で会場は大賑わい。

■乙女ゲー好きは必見!ゲームキャラクターのスチルシーンを作る「わたしたちの推し事会議」

最初に紹介するのは、恋愛シナリオゲームのキャラクターが最も輝くスチルシーンを提案する、ブース名「推し事会議」の「わたしたちの推し事会議」。乙女ゲーをプレイしたことのある人にとっては、なじみ深い内容ではないだろうか。

ルールはシンプルで、親が発表したキャラ設定に合わせて各プレイヤーが「キュン」とくるシーンを作るというもの。手札には「優しく」「頬に触れ」などのシチュエーションが作れる地の文カードと、「ずっと一緒だよ。何があってもね」などの甘い台詞が書かれた台詞カードがあり、これらを使ってキャラクターの魅力を最大限に引き出すシーンを作る。

各々が作成したシーンを読み上げて発表し、投票によって「1番キュンとしたシーン」に選ばれたプレイヤーが評価ポイントを得られるという内容だ。

本作の魅力は、6人のイケメンが描かれた立ち絵カード。泣きボクロが特徴のイケメンや、犬っぽさを感じるイケメン、眼鏡をかけたイケメンなど、多種多様なイケメンたちが揃っている。さらに、立ち絵カードはリバーシブルになっており、笑顔と照れ顔、真顔と不敵な笑みを浮かべた顔など、キャラクターごとに2種の絵柄が楽しめる。

キャラクター設定とシーンの組み合わせによって、プレイヤーの“癖”が垣間見えるのもポイントだ。「普段は優しいけれど、実はこんな一面も……」といったギャップに想いを馳せるもよし、「私はこの顔でこういう台詞を言うキャラが好きなんだ!」と自分の好みを貫くもよし。遊び終わった後には、思わず各キャラの裏設定などを語りたくなってしまうようなゲームだ。

■誤植に惑わされず正しい半額弁当をゲットする「半額ハンターロワイアル」

「半額」という言葉に目がない人にオススメなのが、ブース名「愉快班」の「半額ハンターロワイアル」。こちらはタイトル通り、誤植に惑わされずに正しい半額弁当をゲットするゲームだ。

舞台は、“地域で一番誤植の多いスーパー”の「スーパー ゴショク」。プレイヤーはこのスーパーの弁当コーナーで開催される半額タイムセールに参戦し、誰よりも早く正しい半額シールを見極めて弁当を購入しなければならない。誤植に惑わされずに最も多くの半額弁当を購入できたプレイヤーが勝利し、「半額ハンター」の称号を得られる。

誤植カードの種類は10種類以上あり、「半」が「羊」や「¥」になっているものや、「額」の「頁」の横棒が1本多い、そもそも「客頁」になっているなどのややこしいものばかり。しかも、次々に半額シールのカードが場に投げ込まれるため、これらが誤植なのか正しいものなのか、一瞬で判断しなければならない。

さらに、誤植カードであっても正しい半額シールとして機能する“本日のお買い得品”も存在する。“本日のお買い得品”は毎回ランダムで2種類決められるため、どれが誤植でどれがお買い得品なのか、ゲームをプレイすればするほど混乱を極めていく。

ルール自体は非常に簡単なので、アナログゲームになじみのない人や老若男女でも楽しめるのがうれしい。年末年始のセールで「半額ハンター」の称号を得るために、このゲームで予行練習をしておくのもいいだろう。

■ボドゲフェスまでに“積みボドゲ”を遊びつくせ!ボードゲーマーあるあるのシチュエーションを題材にした「罪ボドゲ」

ボードゲームを買い漁っている人なら、誰でも一度は悩まされる“積みボドゲ”(購入したがプレイできていないボードゲーム)。かくいう筆者も、ほとんど遊べていない作品が数十作も溜まっている。

そんなボードゲーマーあるあるを題材にしたのが、ブース名「EMPLAY GAMES」の「罪ボドゲ」だ。このゲームでは、迫り来る6ヵ月後のボドゲフェスまでに山積みのボドゲを遊びつくすことが目的となる。

本作は、ボドゲを買う、買ったボドゲで遊ぶという2つのフェーズに分けてプレイが進行する。プレイヤーは最初のフェーズで遊びたいと思うボドゲを買い、友達を集めてそのボドゲをプレイする。プレイしたボドゲは“済みボドゲ”となり、難易度に応じた勝利点が獲得できるが、6ヵ月の間に遊びきれなかったボドゲは“積みボドゲ”となり、1つにつき1点が減点されてしまう。この算出式に基づき、スコアが一番大きい人が勝利する。

難易度が高いボドゲを遊べば高い勝利点が稼げるうえ、プレイが有利になる特殊効果も使えるようになるが、その分必要な人数や時間が多く積んでしまうリスクが上がる。つまり、プレイする作品を絞って重量級のゲームをしっかり遊ぶか、軽いゲームをたくさん遊んで数をこなしていくかを考えながらボドゲを消化していくことが重要になる。

試遊ではボドゲフェスまでの期間を3ヵ月に短縮したルールでプレイしたが、難易度1~2のゲームを3作品選んで遊んだ結果、最終月になんとか遊びきってスコアを伸ばすことができた。現実と同様に、ゲームでも買い過ぎないことが重要なようだ。

なお、本作に登場する11種類のボドゲカードは「こおろぎポーカー」や「KADAN」など、ボードゲーマーなら既視感を覚えるものばかり。「これよく積むんだよね~」「軽ゲーはやっぱり遊びやすいわ」など、自分の経験談に照らし合わせてプレイするのもまた一興だ。

■今の時代だからこそ!?“人を見た目で判断する”ゲーム「偏見プロフィール」

「人を見た目で判断するゲームです!」という紹介に引き寄せられたのが、ブース名「ゲーム工房カコムタク」の「偏見プロフィール」。AIが作った架空の人物のプロフィールを作成し、お題の人物が誰かを当ててもらう協力ゲームだ。

このゲームでは親と子に分かれ、親はお題の人物を当てる、子はお題の人物のプロフィールを考えて親に当ててもらうことが目的となる。

子は55枚の人物カードから1枚引き、場にある3枚のプロフィールカードを使ってお題の人物のプロフィールを考える。その後、お題の人物カードと他の人物カード4枚をシャッフルして場に並べ、親がプロフィールをもとにお題の人物が誰かを当てれば成功だ。

人物カードに使われている写真は、絶妙にリアルだが全てAIが作り出した架空の人間。そのため、いくら偏見を持っても誰も傷つくことはないし、その人に対して好き勝手言うことができる。また、プロフィールカードも「人生最大の失敗」や「ストレス発散法」など現実感のあるお題が多く、より“その辺にいそう”感が高まるものとなっている。

お互いの偏見について語り合いながらプレイするのはもちろん、何度か遊んで架空の人物同士の関係性を考察したり、そこから生まれるドラマを作り出したりする遊び方も面白いだろう。

■本物のショットグラスが同梱!グラスを回して相手に押し付ける“飲まない飲みゲー”「One Shot」

アルハラが問題視されて久しい昨今、“飲まない飲みゲー”として販売されていたのが、ブース名「イチブンノニ・ラボ」の「One Shot」。このゲームは、なんと本物のショットグラスを使って遊ぶ内容となっている。

ルールは簡単で、各プレイヤーは手札を順番に出し、そのカードに書かれたアクションを実行するだけ。カードには「ショットグラスを動かす」「『もう我慢できない』と言いながらグラスを渡す」などが書かれており、その内容に従ってゲームを進めていく。

全プレイヤーが手札を出し終えたらラウンド終了となり、終了時にグラスを持っているプレイヤーが“ワンショット”を飲む(=“ワンショット”カードを受け取る)。これを5ラウンド行い、最も多くの“ワンショット”を持っているプレイヤーが敗北する。

カードのアクションには「英語禁止」などのペナルティ系のものもあり、中には「ペナルティを破ったらその場でワンショット」など、どこかで聞いたことのあるようなルールも存在する。さらに、負けたプレイヤーには罰ゲームが用意されているなど、陽気な飲み会を経験したことのある人にとっては既視感を覚える内容となっている。

なお、上記の「シラフver.」のほか、実際にお酒を使う「飲みver.」のルールも用意されている。実際の飲み会で遊んでも、おおいに盛り上がること間違いなしだ(飲みすぎには要注意)。

■日本人が使いがちな“あの言葉”を題材にしたゲーム「行けたら行くわ」

人から遊びに誘われた時、誰しも一度は「行けたら行くわ」と返したことがあるのではないだろうか。ブース名「ほっちゃれ」の「行けたら行くわ」は、そんな行くのか行かないのか曖昧な返事を題材にした心理戦カードゲームだ。

このゲームでは、親は誘う人数が書かれた予定カードを裏向きで出し、それに対して子が“行く”か“行かない”かを選択する。予定カードをオープンしたとき、親が誘った人数より来た人数の方が少ないかピッタリかの場合は親も子も得点になるが、誘っている人数より来た人の方が多い場合は全員が無得点となる。この得点が多いプレイヤーが勝利する。

予定に参加するために必要な時間カードはオープンになっているため、誰が何枚の時間カードを持っているかを全員が常に把握できるようになっている。そのため、「あいつは時間がないから行かないな」「あの人は暇そうだからそろそろ来るだろう」など、お互いの動きを読み合いながら自分の動きを決定していく。

ただし、カードの中には相手の家まで迎えに行って強制参加させる“迎えに来たよ”や、そもそもの予定を変えてしまう“やっぱ違うことしない?”などの特殊カードがあり、これによって他プレイヤーを翻弄したり、自分にとって有利な展開にしたりすることもできる。「お前、行くって言ったじゃん!」「いや、行けたら行くって言ったし……」など、現実によくある(?)シーンをゲームでも再現できる作品となっている。

■具材がこぼれないようにお好み焼きをひっくり返すアクション系ゲーム「オコノミ」

ブース名「コスメボックス」の「オコノミ」は、お好み焼きに具材を乗せてひっくり返すアクション系ゲーム。思わずよだれがでてしまいそうなコンポーネントが目を引く作品だ。

ルールは、お好み焼きの生地に好きな具材を10枚乗せてヘラカードをひっくり返すだけの“名人コース”と、前者に神経衰弱や駆け引きなどの要素を加えた“達人コース”の2種類。どちらも集めた具材を乗せて、お好み焼きをひっくり返すのが基本となる。

一見簡単そうに見えるが、ひっくり返す途中で具材が飛んで行ったり、お好み焼きが箱の外に飛び出して台無しになったりすることも。それに加えて、“達人コース”の場合は「10枚以上チップをひっくり返す」や「チップを1枚も箱からはみ出さない」など、“ワザ”の成功が必要となる。つまり、いかに美しくお好み焼きをひっくり返せるかが勝利のカギとなるのだ。

レトロかわいい見た目のパッケージと、老若男女問わず楽しめるシンプルなルールは、普段アナログゲームになじみがない人にもオススメ。「オコノミ」でワイワイ遊んだ後に、みんなで鉄板を囲んで本物のお好み焼き返しにチャレンジするのもいいだろう。

■素体や髪、靴、服を組み合わせてドールを作る「ドール工房と気まぐれな魔女」

着せ替えゲームが好きな人にオススメなのが、ブース名「ジョイアブル」の「ドール工房と気まぐれな魔女」。プレイヤーは東西南北それぞれの国のドール職人となり、1年を通して世界一のドール職人を目指して競い合う。

ドールを作るために必要な素材は、素体、髪、靴、服の4種類。これらのパーツが描かれたクリアカードを重ねることで1体のドールが完成する。素材カードは120枚収録、3万通りの組み合わせがあり、多種多様なドールを作れるのが特徴だ。

もう一つの魅力は、ゲーム性の奥深さ。本作は「今まで中重量級のボードゲームを遊んだことがない人の初級編として楽しんでほしい」という思いから制作されたとのことで、ルールも戦略性がありながらわかりやすいものとなっている。

その代表的な要素が、ダイスにある“魔女”の目。この目が出ると、プレイヤーは強い効果を得られる代わりに対価を支払うなどの代償が与えられる。一見やっかいな要素にも思えるが、この魔女の効果をうまく使うことでゲームを有利に進められるのだ。

また、プレイヤーが所属する東西南北の国ごとに特殊能力があり、メンバーに合わせてゲームバランスを調整することも可能。作ったドールの点数が高くなる初心者向けの能力もあれば、交渉に役立つ上級者向けの能力もあるので、プレイスタイルに合わせて楽しめる。

遊び終わった後には、ドールの撮影会や品評会を楽しめるのも本作の醍醐味。ゲームプレイも感想会もじっくり遊び倒せる作品だ。

■観客の反応から“盛り上がる言葉の法則”を見極めろ!「何故か盛り上がるMC ライブハウスイェーイェー」

トーク系のゲームでひと際目を引いたのが、ライブハウスのMCをテーマにした「何故か盛り上がるMC ライブハウスイェーイェー」。「ガムトーク」や「不謹慎王」など、会話を題材にしたゲームを多く制作する「角刈書店」の作品だ。

プレイヤーはバンドマンと観客に分かれ、バンドマンは話題カードの内容に合わせて短いトーク(MC)をする。観客はそのMCを聞きながら、自分たちだけが知っている2つの“盛り上がる言葉の法則”のうち、どちらか1つが当てはまっていたら拍手、2つとも当てはまっていたら歓声を挙げる。

バンドマンは観客の反応をもとにこの法則を予測し、これに当てはまる言葉を曲名として発表する。例えば、「か行の言葉」と「食べ物」で盛り上がっていると感じたら、「次の曲は『キュウリ』です!」と答えるようなイメージだ。

3人以上であれば、プレイ人数に制限がないのがうれしいポイント。むしろ、人が多ければ多いほど盛り上がったり「今のは法則に当てはまっているかな?」といったザワつきが発生したりと、ライブハウスさながらの喧騒が楽しめる。話自体が面白くなかったとしても、法則に則れば観客が盛り上がってくれるので、トークが苦手な人にもオススメだ。

■個性的な馬たちを勝利に導く戦略型レースゲーム「ジャンブルダービー」

最後に紹介するのが競馬をテーマにしたボードゲーム、ブース名「ララチラゲームズ」の「ジャンブルダービー」。馬の能力やキャラクターカードなどを駆使して、自分の競走馬を勝利に導く戦略型レースゲームだ。

実際の競走馬同様、馬カードにはそれぞれ距離適性や脚質が設定されており、これらを考慮してどの馬をレースに出走させるかを選択する。1枠の馬から順に30秒程度でカードを紹介(パドック)した後、いよいよレースがスタート。レース中に使用できる“レースカード”や、調教師や牧場主などのキャラクターカードが持つオーダースキルを駆使して、自分の馬が1着になるように進めていく。

本作の魅力は、さまざまなイラストレーターによって描かれた個性的な馬カードだ。スラッとした出で立ちの葦毛馬や図太そうな馬をはじめ、個性的な面々が揃っている。また、賭けた馬がなぜか2マス後退するレースカード“ある男の呪い”など、競馬ファンならクスっとくる要素も散りばめられている。年末の競馬の祭典に合わせて、ぜひ遊んでみるといいだろう。

■会場内では知らない人とカードバトルできる“街角デュエル”も!幅広い年齢層が“ボドゲ沼”にハマるイベント

コロナ禍以降、最多の入場者数を記録した「ゲムマ2023秋」。会場では歴戦のボードゲーマーたちだけでなく、家族連れなど幅広い年齢層の人たちがアナログゲームを楽しんでいた。

さらに、今回は会場内で“街角デュエル”ができる「デュエルボーイ ポケット」も実施。ここでは子どもから大人まで、幅広い年齢層の人々がアツいバトルに興じていた。

筆者も何人かと戦わせていただいたが、「カードバトルしませんか!」とお互い声をかけ合ったり、バトル後にお互いのカードを交換したりというマンガのような体験をすることができた。初対面の人にも気軽に戦いを申し込めるのは、アナログゲームならではのよさではないだろうか。

なお、2024年4月27日・28日には、早くも「ゲムマ2024年春」の開催が決定。面白いゲームを探している人や、アナログゲームの魅力を肌で感じたい人は、ぜひ次回の「ゲムマ」に参加してみてほしい。たくさんのアナログゲームとの出合いが待っているはずだ。


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