レース数の増える2024年シーズンは、全スタッフに参加制限を設けることを検討。FIA、F1、F1チームが議論中

 2024年シーズンに向けて、FIA、F1、およびF1チームの間で、シーズンを通して全スタッフが参加できるレース数に上限を設ける可能性について議論が進行中であることが明らかになった。

 F1のカレンダーは拡大し、2024年シーズンは全24戦と大幅に増えることから、各チームとスタッフたちに影響が出ることは間違いない。レース数が非常に多いので、移動時間と物流上の課題が増え、チームは常に移動して異なるタイムゾーンや仕事環境に適応する必要がある。こうした絶え間ない移動は個人の習慣や人間関係、睡眠パターンを壊すことから、疲労、ストレス、燃え尽き症候群につながる可能性がある。

 こうした課題を踏まえると、チームはスタッフの健康と福利を優先させる必要があるだろう。効果的な移動戦略を実施して定期的な休暇を計画し、ストレス管理やメンタルヘルスのためのサポートサービスを提供することは、拡大したカレンダーの悪影響を軽減するために不可欠な方策だ。

 いくつかのチームでは、過度の疲労からクルーを守るため、すでに交代制の導入の可能性について話をしているが、F1の予算制限があるのでF1チームがレースチームの人員を増やす余地はほとんどない。

 しかしメルセデスのテクニカルディレクターを務めるジェームズ・アリソンによると、FIAとF1は全スタッフを対象としたレース制限を検討しているという。これにはチーム代表も含まれるが、当然ながらドライバーは対象外だ。

2023年F1第12戦ハンガリーGP ジェームズ・アリソン(メルセデス テクニカルディレクター)&アンドリュー・ショブリン(メルセデス トラックサイドエンジニアリングディレクター)

「ウインターテストも考えると、移動するスタッフの場合は1年の半分以上を旅に費やすことになる。それに仕事の環境はかなり負荷が高く要求が厳しいものだ」とアリソンは、ポッドキャスト『Performance People』で説明した。

「ファクトリーでライブでサポートをしているスタッフもみな、その重荷を背負わなければならない」

「だからF1はこのことに対処し始めたばかりだ。なぜならコスト制限のせいで、『今ではレース数が十分な数に増えたので、同行スタッフを2倍に増やして交代で参加させる必要がある』などというように合理的な検討ができないからだ」

「財政面の現実として、それは予算制限の範囲内では禁止されている。とにかくこの管理が非常に困難なシーズンにおいて何かしらの救済案を出すために、F1はルールを持つべきか否かについての議論を内部で始めたばかりだ」

「24戦のシーズンでは、ドライバー以外の個人が24戦すべてに参加することは許されないということだ。制限が課されるが、もしかしたら20戦ということになるかもしれない。つまり、これまでは全員が全レースできつい仕事をこなさなければならなかったが、それが20戦しか行けなくなるということだ。そしてチームは年4回、レースに同行するメンバーの不足に対処するための代替案を自分たちで見つけなければならない」

 アリソンは全チームが「このハードルにともに立ち向かう」ので、不公平なアドバンテージを得るチームはないと主張している。

「しかしこの件に効果的に対処しているチームは、巧みな方法で組織的に管理することでアドバンテージに変えることはできるかもしれない」

「なおトータルでプラスになることは、レースに同行するスタッフは、少なくとも年に数回の週末は休みを取って充電できるかもしれないということだ」

「そうなればトト(・ウォルフ/メルセデスF1のチーム代表)のようなチーム代表たちも、このルールを尊重しなければならない。ドライバーと最も密接な関係にあるレースエンジニアもだ。ボノ(ピーター・ボニントン/ルイス・ハミルトンの担当エンジニア)やショブ(アンドリュー・ショブリン/メルセデスF1のトラックサイドエンジニアリングディレクター)のことは無線を聞いて多くの人たちがその関係性を知っているだろう。年に4回、ドライバーは違う声を聞かなければならなくなる。これをうまく管理する方法を考えなければならない」

2023年F1第11戦イギリスGP ピーター・ボニントン&ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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