マドリードでのF1開催計画は“初期段階”。スペイン自動車連盟会長は「重要な第一歩がまだ踏み出されていない」と明かす

 F1スペインGPをマドリードに移転する計画の契約締結が近いとのうわさがあったが、FIAがこれに冷水を浴びせた。プロジェクトはまだ初期の重要な段階にも達していないという。

 1年以上前のことだが、マドリード市は将来のある時点で市街地でグランプリレースを開催したいという意向を、フォーミュラワン・マネジメント(FOM)に伝えていた。その意向は正式なプロジェクト発足へとつながり、IFEMAが支援することになった。IFEMAは公的機関によって運営されているマドリードの主要な会議及びコンベンションセンターであり、F1のストリートサーキットに適した地域にある。

 2023年の夏、IFEMAが運営するマドリードの会場で『F1 Exhibition』が開催された。そこでプロモーター向けに示された資料では、F1計画は着実に進行中であることが示唆されていた。先週になり、マドリードでのレース開催は承認を待つばかりとなり、FOMとの折衝も最終段階に入っているとのうわさが流れた。

 ところがFIAは、マドリードとF1との契約締結が進行中であるとの観測を打ち砕いた。スペイン自動車連盟会長でもあるFIA評議員会のカルメロ・サンズ・デ・バロス会長によると、スペインGPの移転計画はまだ初期段階であり、公式発表が行えるようになるまでには依然としてさらなる重要なステップが控えているということだ。

「グランプリをある開催地で行うためには、さまざまな手順を経なければならない。しかしその手順は、皆さんの記事に書いてあるようには進んでいない」とデ・バロスは代表取材で述べた。

「スペイン自動車連盟がすべての手続きの出発点になる。というのは、スペインで新たなモータースポーツ競技会を開催したいのであれば、スペイン自動車連盟にまずは申請する必要があるからだ」

「では、スペイン自動車連盟が現時点でこのプロジェクトについて分析、調査、審議を行うための申請を受理しているだろうか。答えは否だ。この重要な第一歩がまだ踏み出されていない」

「次に、スペイン自動車連盟がこのプロジェクトを正規なものとして認め、その有益性も確認したとして、どこが次段階の審査を行うのか。それはFIAだ。ホモロゲーションが必要となるからだ。準市街地サーキットを計画しているのであれば、まずはホモロゲーションを取得して認可を受けなければならない。そうした手順となる」

「スペイン自動車連盟がまだ何も受け取っていないということは、FIAに何も送れないということであり、FIAも何も手にしていない。ここ数日の報道とは反対に、FIA内部でこのプロジェクト関連の仕事に着手している人はまだ誰もいないのだ」

バルセロナ-カタロニア・サーキット

 デ・バロスは、マドリードGPの申請が提出されさえすれば、彼もFIAも審査に取りかかる準備ができていると強調した。しかしながら、デ・バロスは水面下で政治的な思惑が動いているのではないかという懸念も口にした。まだ正式な認可が下りていない段階でメディアにうわさがリークされているからだ。

「マドリードがバルセロナから奪おうとしているとか、モントメロに引導を渡そうとしているとか、そういったことだ。こうしたやり方は明らかに間違っている」とデ・バロスは述べた。

「こうした話は、マドリード対バルセロナという、今の社会の政治的状況のなかから出てきたものだろう」

「また、これは公表されたかどうか分からないが、過去にも似たことがあった。マドリードに2030年のオリンピックを招致する計画があったのだが、情報がリークされ正規の手順を踏まなかったことで中止に追い込まれた。マドリードGPもこうした事態に陥らないことを願いたい。マドリードでレースが開催されるのをぜひ見たいからだ。しかし、マドリードでF1を開催することを目指す計画はこれひとつだろうか。いや、少なくともあとふたつの計画があることを私は知っている」

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