岡山県庁食堂 出店事業者応募ゼロ 採算面がネックか 年明け再公募へ

モダンな設計が特徴の新しい岡山県庁食堂。工事が進む一方、出店事業者はまだ決まっていない

 岡山県が庁舎(岡山市北区内山下)の耐震化に伴う大規模改修で、新たな交流拠点としてリニューアルオープンさせる「県庁食堂」の出店事業者の公募が応募ゼロだったことが12日、県への取材で分かった。公共施設の食堂を巡っては食材・人件費の高騰を背景にした事業者の撤退が全国で相次いでおり、県庁食堂の公募が不調に終わったのも採算面がネックになったとみられる。県は応募条件を練り直し、年明けにも再公募する方針。

 県庁食堂は2016年まで営業した旧食堂を一新し、職員更衣室などがあった地下1階の約600平方メートルをリノベーション。一般来庁者にも開放する計画で、戦後日本を代表する建築家・故前川国男氏が設計し、1957年の庁舎創建時に設けられた金属製らせん階段を空間に取り込むなどモダンなフロアとしている。

 県は来年6月ごろのオープンを目指して今年10月末から1カ月間、事業者を公募。年間の仮算使用料を約180万円とするといった条件を設定した。県幹部によると、数社から問い合わせがあったものの、契約には至らなかったという。

 公共施設の食堂運営を巡っては、岡山県内の高校などが委託していたホーユー(広島市)が16億8千万円の負債を抱えて今秋に破産。食材費や人件費が膨らむ一方、価格転嫁しにくい業種とされ、県は応募しやすい条件の検討を急ぐ。

 県幹部は取材に「食堂事業者を巡る環境は激変している。岡山城や県立図書館近くの好立地といった強みもPRし、早期の決定につなげたい」と述べた。

 県庁の大規模改修は耐震性能を確保するとともに、前川建築の特徴を紹介するコーナーを新設したり、庁舎見学ツアーを企画したりして観光資源としての発信を強化する。

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