【特集】広島市と市民グループ「比治山に賑わいを!」 かつての軍都を平和都市の象徴へ 自然と触れあい、人々の憩いの場となる新しい公園に

【動画】広島市の比治山が変化 平和の丘構想とは

広島市の中心部から少し足を伸ばしただけで、豊かな自然を感じられる比治山。ここで進行する、新たな公園構想についてお伝えします。

比治山を変えたい!

12月はじめ、広島市南区の比治山公園で開かれた、その名も『あっ“たまる”比治山』。2日間で3000人余りが訪れました。

その前日、北側にある「御便殿広場」で、会場の準備が始まっていました。

■SATOMACHI代表 和田徳之さん

「たき火の道具とか、薪がたっぷりと入っています。」

広島市とともに、今回の催しを主催した和田さんは、市民グループの「SATOMACHI」の代表。5年前から、子どもたちや住民と共に、自然と触れ合いながら、比治山に賑わいを生み出す催しを企画しています。

■SATOMACHI代表 和田徳之さん

「この比治山の取り組みに関わったときに、地元の小学校のしおりに『子どもだけで比治山公園に行ってはいけません』という言葉があったみたいで、それは鬱蒼として暗かったから。自然の中でのびのび遊ぶことが大切なんですけど、そういう環境を近場で作りたいなと思って。」

比治山公園の特性を生かす

広島市中心部の東側。平和公園からおよそ2キロにある比治山は、かつて広島湾に浮かぶ島でした。1903年に、広島市最初の公園として一般に開放。日清戦争の際、明治天皇が休憩した「御便殿」も移設されました。しかし、原爆で「御便殿」は倒壊。一帯は、劫火を逃れてきた大勢の人で埋め尽くされました。

そして1950年、原爆の放射線による健康への影響を研究する「放射線影響研究所」の前身「ABCC」が、広島市の反対をおしきって建設されます。

その一方で、一貫して流れる公園としての歴史。それは、人々の憩いの場であること。

■広島市政策企画課 平和の丘担当課長 繁喜博さん

「特性を活かしながら、比治山公園の再整備を進めていきたいと思っています。1期2期3期と段階的に整備を取り組むことにしてまして、今、2期の取り組みをしているところです。」

それが、原爆からの復興を象徴する「平和の丘構想」です。2023年3月、改修を終えた現代美術館が開館。11月には、「G7広島サミット」の各国首脳のメッセージを刻んだ記念碑が置かれるなど、計画はまもなく最終段階に入ります。

■広島市政策企画課 平和の丘担当課長 繁喜博さん

「放射線影響研究所の移転の敷地を活用した整備を、今予定をしていまして、土地所有者である財務局と協議中です。」

その移転先は、広島大学の霞キャンパス。跡地をどのように活用するのかが、今後の焦点となります。

『あっ“たまる”比治山』で、比治山を変えていく

変わる比治山。それを象徴するのが、『あっ“たまる”比治山』です。

■SATOMACHI代表 和田徳之さん

「当初は2店舗だけで、地元のおばあちゃんのぜんざいと、友達のコーヒー、それとたき火があっただけ。でもみんなが交流している光景がすごくステキで。」

イベントの中心は「たき火」。そこには、意外な狙いも用意されていました。

■SATOMACHI代表 和田徳之さん

「事前にも木を切る活動をして手入れをして、そこで出た薪を、どう活用していくかということも考えて、このイベントを組み立てています。」

自然や循環への配慮は、この催しのプログラムにも反映しています。それが「スポGOMI」。制限時間中に、どれだけ多くのゴミを集められるかで得点を競うスポーツです。ゴミの大きさや重さだけでなく、種類によって得点が変わります。タバコの吸い殻は高得点。さらに今回は、落ち葉も対象にしました。焼き芋づくりに使うからです。

■参加者は…

「ガードレールの車が通らない所に、服とか投げ捨てられていて、いっぱい取りました。」

「街がきれいになって、すごいいい気持ちになった。」

平和都市の象徴としての『比治山』へ

そして、この日のハイライト「焼き芋」。あわせて500本を用意しました。参加者が集めた落ち葉の灰の上で、下準備したサツマイモを1時間から2時間かけて焼き上げます。

■焼き芋を食べた子どもたちは…

「めっちゃ甘くて、ほくほくしておいしいです。」

「大きかったし、あったかくておいしいです。」

■SATOMACHI代表 和田徳之さん

「比治山の間伐で手に入った薪がたき火になり、スポGOMIで集めた落ち葉が、焼き芋の土壌にもなって、それを感じられるのがうれしい。」

軍都から平和都市・ヒロシマへ。その歴史を見つめてきたのが、比治山です。そして、放影研の跡地の利用が決まれば、「平和の丘」の全貌が姿を現すことになります。

【テレビ派 2023年12月11日放送】

© 広島テレビ放送株式会社