2023年サンダンス映画祭でUSドキュメンタリー部門観客賞を受賞し、「2023年 ベスト・ドキュメンタリー」の呼び声も高いドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』が、2024年1月12日（金）より全国公開となる。

圧倒的な報道量に反し、その実像はベールに包まれた北朝鮮に迫る注目映画が今、本作以外にも続々と公開されている。

「脱北」の実像に迫るドキュメンタリー、北と南に分断された祖国に翻弄されるふたりの男の葛藤、朝鮮半島の軍事境界線を挟み繰り広げられる衝撃の南北会談、そして今すぐ観られる配信作まで、様々な角度から掘り下げられる映画作品を通じて、その一端を覗いてみては？

金正恩が“見てほしい”北朝鮮の“裏側”に迫る『ビヨンド・ユートピア 脱北』

“地上の楽園”と信じてきた故郷北朝鮮を離れたある家族、その家族の脱北を支援する人々の姿などを通じて、私たちが報道や多くの韓国映画を通じて接する「脱北」の実像を、痛ましいほどに克明に描き出した衝撃のドキュメンタリー。

この映画の中心となるのは、北朝鮮を離れ、中国の山間部で立往生してしまった2人の幼い子どもと80代の老婆を含む5人の家族だ。彼らが自由を手にするために、各地に身を潜める50人以上のブローカーが協力し、中国からベトナム、ラオス、タイを経由する移動距離1万2,000キロに及ぶ、文字通り命がけの脱出ミッションが展開。その危険な道程に、スマートフォンや折りたたみ式携帯電話の撮影により生々しく密着していく。2023年サンダンス映画祭でUSドキュメンタリー部門観客賞を受賞し、海外の各映画メディアや評論家の間では「2023年のベスト・ドキュメンタリー」の呼び声も高い注目作だ。

映画では、隠しカメラなどを通じて捉えられた北朝鮮に生きる人々の過酷な暮らしや抑圧の様子も映し出されていく。本作の監督マドレーヌ・ギャヴィンは、「私たちが北朝鮮について見ているもののほとんどは、金政権が私たちに見てほしいと望んでいることです。私にとって重要だったのは、それらの裏側に迫り、さらに掘り下げて、2,600万人もの人間がその体制下で生活しており、彼らも私たちと同じように欲望や恐怖、個々の視点を持っていることを外の世界に感じてもらうことでした」と、北朝鮮を描く上で意識したことを明かしている。

2024年1月12日（金）よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開

日本最終上映！ ソン・ガンホ×カン・ドンウォンＷ主演『義兄弟 SECRET REUNION』

男同士の熱い絆が感動を呼ぶ、バディムービーとしてこれまで数多くの映画ファンに親しまれてきた名優ソン・ガンホ×実力派俳優カン・ドンウォンのＷ主演作が2023年12月で上映権利終了を迎え、ついに国内最終上映となる。

ソウル市内の団地で起きた銃撃事件。国家情報員のイ・ハンギュは、多くの死傷者を出し北朝鮮の工作員を取り逃がした責任を問われ組織をクビになった。事件から6年。イ・ハンギュは、逃げた妻や外国人花嫁など探す探偵まがいの稼業で何とか暮らしているのだったが、ある日、ハンギュは銃撃事件の現場から逃亡した北朝鮮の工作員ソン・ジウォンに出くわし……。

北と南、それぞれの国に翻弄された二人の男の葛藤を描き、韓国公開当時550万人以上の観客を動員したヒット作だ。

2023年12月15日(金)大阪・シネマート心斎橋にて1回限定上映（※日本最終上映）

もし南北の補給官が遭遇したら？『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』

今なお北緯38度線付近の軍事境界線を挟んでにらみ合う韓国と北朝鮮。この休戦ラインを隔てて、前代未聞の南北会談が勃発する爆笑コメディ。

ソウルの居酒屋で捨てられた一枚の宝くじが、ひょんなことから朝鮮半島の軍事境界線付近にある韓国軍監視所に流れ着く。くじを偶然手に入れた韓国軍の兵士チョヌは、それが賞金6億円の当たりくじだと知り、すっかり舞い上がって夢心地となるが、風のいたずらで軍事境界線を越えたそのくじは、北朝鮮の兵士ヨンホに拾われてしまう。くじの所有権を巡る交渉は彼らの上官や同僚を巻き込んで、3対3のチーム戦に発展し……。

監督が、撮影のためのリサーチの中で知ったという最前線監視警戒所に水を引いてくる“補給官”を足掛かりに、「もしも韓国軍の補給官と北朝鮮軍の補給官が互いに遭遇したら？」という想像を膨らませたというリアリティにも注目だ。

2023年12月29日（金）より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

＜北朝鮮の実像に迫る必見配信作＞

『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』 各社配信中

家族のために北朝鮮から中国へと出稼ぎに来たはずが騙され、貧しい農村に売り飛ばされてしまった北朝鮮人のマダム・ベーに密着した、2017年に日本公開されたドキュメンタリー。憎んでいた中国人の夫と養父母との生活を受け入れた彼女はそこで生きていくために、北朝鮮からの脱出を請け負うブローカーとなることを決意する。そして彼女は、北朝鮮に残してきた息子たちの将来を案じて、自らの手で息子たちを脱北させ、一緒に韓国へと渡るという危険な計画を実行に移していく……。

マダム・ベーの中国での生活だけでなく脱北の道中にも密着。断片的に切り取られた脱北シーンからはただならぬ緊張感が漂い、複雑な事情を抱えるブローカー達の素顔に迫っていく。『ビヨンド・ユートピア 脱北』の予習として観るにはうってつけの作品だ。

『MOLE（ザ・モール）』 Netflixで独占配信中

すべての始まりは、本作の監督のもとに届いた一通のメッセージだった。その送り主は、デンマークのコペンハーゲン郊外で妻子と暮らす元料理人のウルリク。謎のベールに覆われた北朝鮮に並々ならぬ興味を抱く彼は、この独裁国家の実情を探る“潜入捜査”のドキュメンタリー映画を作ってほしいという。まずウルリクが目をつけたのは、コペンハーゲンにある北朝鮮友好協会という団体だった。

ごく平凡なデンマークの元料理人が、CIAさえ容易に情報を掴めなかった北朝鮮の国際的な闇取引のネットワークに潜り込み、その実態を赤裸々に暴いていく。10年間にも及ぶ、欧米、アジア、アフリカの14ヵ国で撮られた映像で構成され、分厚い謎のベールに覆われてきた北朝鮮国家が持つもうひとつの顔、複雑怪奇な武器取引の実情を具体的かつ克明に記録したドキュメンタリー。

『トゥルーノース』 各社配信中

北朝鮮の政治犯強制収容所で、過酷な毎日を生き抜く日系家族とその仲間たちの姿を3Dアニメーションとして完成させた衝撃作。絶望の淵で、人は「生きる意味」を見つけられるのか？

1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民した家族の物語。平壌で幸せに暮らすパク一家は、父の失踪後、家族全員が突如悪名高き政治犯強制収容所に収容されてしまう。過酷な生存競争の中、主人公ヨハンは次第に純粋で優しい心を失い他者を欺く一方、母と妹は人間性を失わず倫理的に生きようとする。そんなある日、愛する家族を失うことがキッカケとなり、ヨハンは絶望の淵で「人は何故生きるのか」という究極の問いの答えを探究し始める――