レンズ部門発表。 老舗と新興メーカーから進化を遂げたレンズ新製品登場[PRONEWS AWARD 2023] Vol.02

まずは2023年のレンズ業界を振り返ろう。

昨年に引き続き今年もXelmus、Viltrox、Atlas、DZOFILMなどのメーカーからアナモフィックレンズが続々と登場。合わせて、今年はカメラ側にアナモフィックレンズに関係するアップデート公開が多かったのも印象的だった。

ミラーレス向けレンズでは、ソニー大三元ズームレンズの第2世代リニューアルが話題になった。小型や軽量化、最短撮影距離の短縮化の実現で、競合メーカーから一歩抜け出た印象だ。シネマレンズでは、SAMYANGからAF対応、LAOWAから小型軽量を実現したズームが登場。新興メーカーによる民主化によって、手の届きそうなシネマレンズがさらに増えてきている。

放送用レンズでは富士フイルムからシネマライクな映像表現と放送用を両立した「FUJINON HZK24-300mm」に注目が集まったが、2024年春発売のため残念ながら今年はノミネート外とした。

厳正なる選考の結果、選ばれた2023年レンズ部門ファイナリストは以下の通りだ。

ソニー FE 20-70mm F4 G

発売日:2023年2月10日
希望小売価格:オープン 税込184,800円(ソニー公式ストアの価格)

数あるソニー新製品の中から、動作撮影を意識したワイド側20mmスタートのフルフレームズームレンズを選んだ。20mmから70mmまでの全域で、開放F値4を維持したまま撮影が可能。レンズの小型・軽量化(全長99mm、質量約488g)を実現し、複数人でのVlog撮影や自撮りに最適としている。ズーム全域でαシリーズカメラのブリージング補正機能にも対応する。

富士フイルム FUJINON HZK25-1000mm

発売日:2023年3月23日
希望小売価格:オープン

2つの大型センサーに対応するデュアルフォーマット方式を採用した40倍ズーム・最望遠1000mmの放送用ズームレンズだ。浅い被写界深度によるボケ味を生かしたシネマライクな映像表現を実現し、スポーツ中継やライブ・コンサート中継などに最適としている。「Dual format live lens」の意味を込めた「Duvo Box」を同レンズの愛称として使用し、製品拡販を図っていくという。

SAMYANG V-AF T1.9シリーズ

発売日:2023年4月21日
希望小売価格:オープン 24mm FEマウントは税込103,400円/35mm FEマウント/75mm FEマウント/45mm FEマウントは税込各102,850円(ケンコー・トキナー公式ストアの価格)

動画撮影をより便利にするフルフレームEマウント対応のシネAFラインナップだ。フォーカスリングに0.8Mピッチのギアを装備し、広角から中望遠まで72.2×72.1mmの小型サイズと280gに統一したフォームファクターを採用。録画状態が撮影されている側からわかる、タリーランプをレンズ前面と側面に装備する。フォーカスリング回転角度は300°のリニアMF、フォーカスのスピードはレンズマネージャーソフトで調整可能としている。

LAOWA Rangerシリーズ

発売日:2023年7月28日
希望小売価格:税込590,000円前後

Rangerシリーズはフルフレームセンサー対応のコンパクトシネマズームレンズ。重さ1.4kgという軽量なボディでありながら、28-75mmもしくは75-180mmという幅広い焦点距離をカバーしており、多くの機材を持ち運ぶことが困難な映像制作者や映像制作会社に最適な設計を実現。ズーム中にフォーカスを維持するパーフォーカルデザインは、フォーカスブリージングがほとんどない状態でフォーカストランジションが可能。最短撮影距離はそれぞれ28-75mm:49cm、75-180mm:89cmという近距離でフォーカスするため、魅力的なクローズアップショットを可能としている。

Cooke SP3シリーズ

発売日:2023年9月

映画業界の中で影響力のあるレンズ「Speed Panchro」をベースにした新しい単焦点レンズシリーズ。SP3は、光学的および機械的にフルフレームミラーレスカメラに最適化されたまったく新しい設計を特徴としている。SP3の登場により、より多くの映画制作者はストーリーの視覚的表現を強化できるという。SP3のレンズマウントは、ユーザーで交換可能。Eマウントを標準搭載としており、交換可能なキヤノンRFマウントも付属する。LマウントやMマウントはアクセサリーとして入手可能としている。

DZOFILM PAVO 2X

発売日:2023年10月
希望小売価格:税込907,390円

スーパー35のイメージサークルと2倍のスクイーズを備えたアナモフィックレンズシリーズ。2倍の圧縮率により、より広い視野の提供を可能としている。ブルーとニュートラルのコーティングのデザインにより、PAVOレンズは複数の光源下で水平方向のブルーまたはその他の異なるフレアを生成し、鮮明さを維持しつつ魅惑的で映画のようなシーンを作成可能。アナモフィックレンズの特徴である古典的な樽型歪曲収差を制御するだけでなく、開放でも色収差を最小限に抑え、自然な肌色と鮮やかな色の再現にも優れているという。

キヤノン RF24-105mm F2.8 L IS USM Z

発売日:2023年12月8日
希望小売価格:オープンプライス 税込495,000円

24mmから105mmの焦点距離をカバーしながらズーム全域で開放F値2.8と高画質を実現。「RFマウント」の特長である大口径・ショートバックフォーカスを生かし、撮像面の近くに大口径レンズを配置することでこのスペックを実現。高度なズーム制御と優れた操作性を実現するパワーズームアダプター「PZ-E2」「PZ-E2B」が用意されており、撮影者の意図に合わせて無段階に低速から高速まで細かくズーム速度の調整が可能。ズーム駆動には、放送用レンズやシネマレンズで実績のあるDCモーターを採用し、素早いズーム操作と、滑らかな低速ズームを両立している。

以下がカメラ部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2023レンズ部門 ファイナリスト

  • ソニー FE 20-70mm F4 G
  • 富士フイルム HZK25-1000mm F2.8-5.0
  • SAMYANG V-AF T1.9シリーズ
  • LAOWA Rangerシリーズ
  • Cooke SP3シリーズ
  • DZOFILM PAVO 2X
  • キヤノン RF24-105mm F2.8 L IS USM Z

はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!

PRONEWS AWARD 2023 レンズ部門 ゴールド賞

キヤノン RF24-105mm F2.8 L IS USM Z

24-105mmの焦点距離をドロップなしでF2.8を実現してきただけでも驚きなのに、パワーズーム対応で動画撮影にも対応。絞りもスムーズでクリックレスの絞り制御に対応など、フルサイズミラーレスカメラ用の大口径標準ズームレンズでありながら完全に動画撮影を意識してきている。次元の高い静止画と動画のハイブリッドレンズの登場を評価して、ゴールド賞とした。

オプションのパワーズームを使えばズームスピードは2種類でズーム操作が可能。手動では難しい動画撮影中のズーミングを高精度に実現できるほかに、レンズ本体にはフォーカスブリージングの軽減機能の搭載も評価となった。

PRONEWS AWARD 2023 レンズ部門 シルバー賞

Cooke SP3シリーズ

老舗レンズメーカーのCookeが、これまでのユーザー層とまったく異なるフルフレーム用ミラーレスレンズの新製品を発表。まさかの発表に、シネマやコマーシャルの撮影業界は大いに色めき立った。

筐体は小型ながらも、同社の伝説的なSpeed Panchroをしっかりと再現してきている。5つの焦点距離は、すべてT2.4で統一されており、ユーザーが交換可能なマウントを備えている点も評価とした。SP3の登場をきっかけに、各社シネマレンズからもミラーレス対応新製品が増えていきそうだ。

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