ダイコク電機社長の愛読書「マネジメントの世紀」 外からの働きかけでモチベーションは長続きしない

マネジメントの世紀

パチンコ・パチスロなどの遊技機を手掛けるダイコク電機。アミューズメントメーカーとして半世紀、ファンを楽しませてきました。社長の栢森雅勝さんは、自身の考え方を支えた一冊があるといいます。それが「マネジメントの世紀」です。

ビジネス用語の時代背景や目的を知る

ダイコク電機社長 栢森雅勝さん

――マネジメントを振り返る百年史だそうですね。

ビジネスマネジメントの話が丁寧に書かれた本です。実はビジネスマネジメントの研究は、100年ちょっとの歴史しかないそう。とても新しいジャンルですよね。しかもビジネス用語の1つ1つには、その用語が生まれた時代背景や目的があります。言葉だけを覚えるのではなくて、背景と目的も同時に学べました。

中でもモチベーションの研究について取り上げた部分が興味深かったです。気持ちによって結果は変わる。その気持ちに対してどのように働きかけるのか。そしてどんな効果があるのかなど、意外とビジネス以外でも活用できると感じました。

「新しいものに価値がある」は幻想

内心にどう働きかけるかが鍵に

モチベーションの研究はすでに、100年前に始まっていました。工場のラインによる大量生産が始まった時期に、気持ちがどのような結果を及ぼすのか研究されていたんです。ずいぶん古くからモチベーションに対するさまざまな理論が成立していた、というのは面白いです。

ビジネスにおいて、古い、新しいは関係ありません。どうやって成果を出すか、という方法の選択がビジネスです。新旧の両方を知っているのは、それだけ自分の道具が数多く取りそろえられます。「新しいものに価値がある」というのは幻想ですね。

やる気の源泉は、本人の「体験」にある

内心にどう働きかけるかが鍵に

――「マネジメントの世紀」で特に印象的だったシーンについて教えてください。

やる気の源泉は本人の体験に鍵がある、という部分は印象に残っています。人を強制的に動かすための方法として、相手にペナルティーを課したり、飴のような報酬をあげたりするものがあります。しかしどちらも長続きしないという結論がありました。「根性論」ではなく、内心にどう働きかけるかが重要だと。

ゾウに乗った子どもの「ゾウ」を動かす

考える前に体を動かすことを習慣化する

本の中に限った話ではありませんが、何かを始めるときに、頭で考えて体を動かすのは非常にパワーがいります。しかも長続きしません。体を動かすことを習慣化してしまえば、大きなパワーが必要なくなるので継続しやすくなります。

この例え話として「ゾウの上に乗った子ども」があります。知性や言葉はゾウに乗った「子ども」のような存在。大きな部分である「ゾウ」を動かすようにすれば、その後は習慣化できるという考え方です。

「銀河英雄伝説」にハマったと語る栢森さん

――楽しみとして読む本はありますか。

漫画や流行りの本を読みます。若い頃は「銀河英雄伝説」というSF小説にハマりました。歴史がテーマになった本です。歴史だけでなく、人物模様を描いた内容に引き込まれました。

本は情報の「背景」を知ることができる

20世紀はマネジメントの時代

――情報はインターネットでも手に入れられそうですが、読書の良さはどんな点にありますか。

インターネットで検索しても単なる「情報」しか出てこないですよね。結果に至るまでの前提や過程、目的といった一連の流れを知ることができます。それはインターネットにはない本の価値です。また著者自身の考え方を追いかけていく楽しさもあります。考え方を知れば、応用がききやすい。物事の理解を深めていく上で大事なことです。

(取材協力:ダイコク電機 代表取締役社長・栢森雅勝さん)

■「マネジメントの世紀 1901―2000」 スチュアート・クレイナー 著 嶋口 充輝、岸本 義之、黒岩 健一郎 翻訳

20世紀はマネジメントの時代だったと振り返るマネジメントの百年史。10年ごとに経営理論と実も手際よくまとめた一冊。

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