授業を「AI」で改善 和歌山・田辺市の会津小、データで可視化し分かりやすく

分析結果の報告会で、自身が教室内をどのくらい動いたかを示すデータを見る教員ら(和歌山県田辺市下万呂の会津小学校で)

 和歌山県田辺市下万呂の会津小学校で、若手・中堅教員の授業の内容をデータで可視化し、質を高めるきっかけにしようという試験的な取り組みがあった。人工知能(AI)による分析を受けた教諭は「面白い」「自分の授業を見直すきっかけになる」と前向きに受け止めている。

 11月7日にあった1年2組の国語の授業では、教室にカメラや集音マイクを設置した。担任の村上安澄教諭(27)は、胸元にマイクを付けて授業を進めた。電機メーカー大手の「コニカミノルタ」(東京都)が提供するサービス「授業診断」を受けるためで、この日は、村上教諭を含め3人の教諭が診断を受けた。

 授業診断では、教員や児童の声、動きを集めて人工知能で分析。発話比率のほか、どのくらい教員が机と机の間を動いたかや、板書の時間、児童の挙手の具合などが時系列でグラフ化される。

 分析結果の報告会が12月4日にあり、授業の内容がさまざまなグラフになって示された。机間移動の頻度や問いかけの数は教諭によってまったく異なり、教諭らは興味津々だった。

 村上教諭は「授業を見られることはあるが、客観的なデータとして見られたのは新鮮だった。発問の仕方、内容を考える上でも生かせそう」と話した。同様に診断を受けた5年1組担任の向井大嗣教諭(34)は「改善点が明確に出やすい印象を受けた。質を高めるための議論のきっかけになると思う」と語った。

 会津小では20代、30代の教諭が計17人いる。若手をどう育てるかが課題という亀井陽一校長(59)は「診断を受けた先生たちには、子どもたちにとってより分かりやすい授業につなげてほしい」と期待した。市教育委員会も、会津小の取り組みに注目している。

 教育の現場では「研究授業」という取り組みがある。ある教員が、周囲の教員らに授業の様子を見てもらい、助言をもらうことで質を高めようという趣旨だが、経験や勘に頼りがちで、可視化できるようなデータはあまりなかった。

 会津小は、デジタル端末の活用を促す文部科学省の事業の指定校になっており、情報通信技術を積極的に取り入れようとしている。これが縁で、授業診断の試験導入につながった。

■「評価」とは一線

 コニカミノルタによると、試験的な実施も含めて県内での導入は会津小が初めて。他府県では、小中学校や教育委員会で導入しているところがある。

 サービスの目的は教員の指導技術の可視化、指導力の向上で、教員を評価することではないという。

カメラが設置された教室で、胸元にマイクを付けて授業を進める教諭

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