彩青のシングル第5弾は、将棋をテーマにした〝人生の応援歌〟『王手!』 「この歌が皆さんの心の支えになってくれたら嬉しいです」

最近では『千鳥の鬼レンチャン』や『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(ともにフジテレビ系)など、バラエティー番組への出演が話題になり、すっかりお茶の間でも人気者になった三刀流歌手・彩青。歌手活動も絶好調で、4月の『望郷竜飛崎』に続くシングル第5弾『王手!』/尺八:彩青(c/w『津軽よされ節』/津軽三味線:細川貴義)を12月13日にリリース。これに先立って11月には初のミニアルバム『彩青 演歌・民謡~唄の旅~―北日本・東日本篇―』も発売した。21歳になり、歌手として人間として大きく飛躍した彩青に、新曲や初アルバムへの思い、5周年を迎える来年への抱負などを聞いた。


――『王手!』は事務所の先輩でもある杜このみさんが2019年に歌われた曲です。今回彩青さんがカバーすることになった経緯を教えてください。

『王手!』は言うまでもなく将棋の世界を歌った曲。今は女流棋士の方もたくさん活躍されていますが、将棋界は歴史的にも長く男性の世界でしたし、数の上でも男性の棋士が圧倒的に多い。そこで今回は、この曲を男の声で歌ったらどんな雰囲気になるだろう、このみさんの歌とはまた違った将棋の世界を表現できるのではないかということで、歌わせていただくことになりました。

――将棋の世界をモチーフにしてはいますが、聴く人を元気づける応援歌のようでもあります。彩青さんはこの曲をどう捉えていますか。

辛いことがあっても、大きな夢を持ってその夢を叶えるための努力を積み重ねていくことが大切だというメッセージが、聴いてくださる皆さんに届けばいいな、この歌が心の支えになってくれたらいいなと思いながら歌っています。ただ、何と言うか、皆さんに曲を届けるのはもちろんですが、歌っていながら自分も励まされている、そんな気もしています。

――「大志を胸に夢と努力の積み重ね」や「親と師匠の教えはひとつ」など、歌詞を読むと確かに今の彩青さんに向かって書かれた詞でもおかしくありませんね。

このみさんの歌を聴いている時も思っていましたが、歌ってみますと、改めて自分にメッセージをもらっているように感じました。細川師匠もそうですし、両親からも、どんなことがあっても感謝の心は忘れないようにとずっと言われてきましたから、まさに歌詞の通りです。しかもデビュー5年目に入った節目の年にこの曲を歌わせていただけたというのが嬉しかったです。

――細川師匠も将棋をテーマにした『人生夢将棋』を歌っていらっしゃいますが、今回『王手!』を歌うにあたってアドバイスはありましたか。

今回は主に技術的なことのアドバイスがありました。師匠からは、これまでの彩青は高いキーの歌が多くて、ファンの方が歌うにはちょっとハードルが高かった。もっと皆さんに歌っていただけるように、キーを低めにしようという提案をいただきました。1番の歌詞の2行目、「積み重ね♪」の部分など、ここまで低い音で歌ったことはなかったのですが、今回はあえて下げて歌っています。それから彩青はせっかく三刀流で尺八もやるのだからと、このみさんの曲には入っていない尺八を入れたのも師匠から提案です。尺八のアレンジは自分で考えてやらせてもらいましたので、ここも聴いていただけたら嬉しいです。

――レコーディングはスムーズに進んだのでしょうか。

全体的にはスムーズにいきましたが、リズムがゆっくりなだけに、とにかく言葉を明確に、音をはっきりとらないといけなかったのは大変でした。大きく歌おうとし過ぎますと歌がもたれて重くなりますから、なるべく軽やかにリズムを刻みながら、でも歌の世界観を崩さないようにズシッと歌うことを心がけました。

――カラオケでかっこよく歌う際のポイントは、やはり「王手」の掛け声でしょうか。

まずは出だしだと思います。「将棋世界は~♪」の〝将〟の音を気持ちよくスカッと出していただいて、こぶしが回せる方はコロコロと。低音部分を響かせながら「王手」の掛け声に向かって大きく歌う。そしておっしゃる通り「王手」の掛け声は重みのある感じで、魂込めて歌っていただけたらと思います。

――ところで今、将棋界は藤井聡太八冠の話題で持ち切りです。彩青さんと藤井八冠は同じ年で、藤井さんは5歳から将棋を始め頂点を極めましたし、彩青さんも5歳から民謡を始めて数々の賞を獲ってこられた。共通点が多いと思いますが、藤井さんの活躍をどう見ていますか。

私がデビューした時には藤井さんはもう有名になられていましたから、すごいなと思って見ておりました。ただ、同じ年の方があれほどの活躍をされているというのは、自分にとっても大きな励みになります。いいな、すごいな、だけじゃなくて、自分も藤井さんを目指して頑張らなくてはいけないという思いにさせてくれますから。

――『王手!』のカップリングは『沓掛道中』以来、2度目の『津軽よされ節』ですが、今回この曲を選んだのはどうしてですか。

一昨年、細川一門に津軽三味線の細川貴義師範が加わりまして、その細川師範の三味線も皆さんに聴いていただきたいという思いがありました。『津軽よされ節』は、三味線を比較的長く聴かせる曲ですから。もちろん自分も津軽の民謡が大好きですので、カップリング曲として一番いいのではないかということで選びました。

――その民謡ですが、11月には『彩青 演歌・民謡~唄の旅~北日本、東日本篇』を発売されました。7曲入りのミニアルバムですが、アルバムは初めてですね。

実はデビューの年に民謡のアルバムを出そうという話はあったんですが、キャンペーンなどで喉が追いつかなくて取りやめになったことがありました。今回は師匠が声もだんだん成長してきていると言ってくださいましたし、周囲の皆さんからも彩青の民謡を聴きたいという声をいただき、ミニアルバムという形でまとめることになりました。

――選曲には悩まれたと思いますが、どういうふうにこの7曲に決めたのですか。

シングルの2作目からずっとカップリング曲には民謡を入れてきたのですが、まずはその4曲を収録しました。最初の『十勝馬唄』はずっと自分が民謡の大会で歌ってきた曲、2曲目は故郷・北海道を代表的する民謡『ソーラン節』、その後が津軽三味線の入った『津軽よされ節』と『津軽じょんがら節』、そして5曲目に新録音の山形の民謡『最上川舟歌』と自分の大好きな民謡ばかりです。すべてアレンジの入った伴奏なのですが、実は昔、細川師匠がレコーディングした時のオケも使わせていただいています。

――演歌は『佐渡の恋歌』と『風雪ながれ旅』の2曲。『風雪~』にはナレーションが入っていますね。

『風雪ながれ旅』は、津軽三味線のパートも自分で弾いて収録しました。で、ナレーションですが、これはどういう言葉にするか、自分で考えたのですが、言葉を考えるのも語るのも、めちゃくちゃ難しかったです。

――語ると言えば、オープニングに〝寅さん調〟で口上が入っています。そういえば尊敬する人に映画「男はつらいよ」の“寅さん”をあげていらっしゃいますが、どんなところがお好きなんですか。

寅さんの映画は小学校3年くらいの頃から見ていますが、渥美清さん演じる車寅次郎という方が、何でしょうね、ふと素敵だと思ったんですね。人情に篤いところに惹かれたんだと思います。東京へ出てきてからは、住んでいる部屋の隣が誰かも分からないような状況で暮らしていますから、よけいに寅さんのような情に篤い人を見るといいなと思いますね。自分もああいう温かい人になりたいと思います。

――今回のアルバムの口上の冒頭、第一声は寅さんの声そのものでしたね。

「歌の始まりが~」からは寅さんの映画の中の口上「物の始まりが1ならば~」をパロディにしてやっておりますが、「私、生まれも~」の冒頭部分は、あまりにも小さい時から聞いてきましたので、パッと話し出すとあの寅さんの雰囲気になってしまうんですね。別にモノマネでやっているわけではないんですよ(笑)。

――(笑)分かりました。さてその民謡ですが、なかなか若い世代が聴く機会がないのが現状だと思います。彩青さんは民謡の普及についてどう考えていますか。

そこが難しいところです。北海道の同級生に聞いても運動会で『ソーラン節』を歌ったとか「YOSAKOIソーラン祭」に行ったとか、そこ止まりで。どうしたら同じくらいの世代の人に民謡なり三味線なりを聴いてもらえるか、暗中模索しています。

――昭和の頃、津軽三味線の高橋竹山が、渋谷の小劇場「ジャンジャン」で演奏した伝説のライブに当時の若者が熱狂したことがありましたし、何か方法はあると思いますが。

竹山先生は子供の頃から大好きでお孫さんや一番弟子の方とも会お会いして、いろいろお話は伺いました。先生は西洋音楽のレコードを山ほど聴いて、例えばマンドリンの音を三味線で出すためにバチ尻で弾く奏法を編み出したり、音を小さくするためにバチを棹のところに持っていって弾いたりということもおやりになった。先生しかやる人がいない奏法ですが、私も何か新しいことに挑戦して、何が皆さんの胸に刺さるのか模索していくことが大事だと思っています。

――今年ももう12月。年が明けるとまず1月12日に『細川一門 新春コンサート』が待っています。見どころ聴きどころを教えてください。

細川一門のコンサートには、細川師匠と杜このみ姉さんと私で民謡を歌うコーナーもありますし、後ろには三味線の方々が並んでいますから三味線の音色、民謡、そして演歌を存分に楽しんでいただけます。また演歌だけではなくて、田中あいみちゃんはあの独特のハスキーボイスで素敵な歌謡曲を聴かせてくれると思いますので、それぞれお楽しみいただきたいと思います。

――1月30日には『我ら演歌第7世代!スペシャルコンサート』もありますね。こちらは皆さん同世代ですから彩青さん自身も楽しめるのではないですか。

1回目はみんな不安だったと思いますが、回を重ねるごとにだんだん打ち解けてきて、和気あいあい楽しくなってきました。私自身はありがたいことに、このコンサートをさせていただくようになって若いファンの方が増えたように思います。自分のキャンペーンでも時々、あれ?見たことのない方がいらっしゃるなと思いますから。

――他の方の歌を聴いて、勉強になることもあるのではないですか。

それはもう。例えば1曲を5人でとか、3人でとか歌い分けますと、全員色が違いますので、なるほどそこをそういうふうに歌うんだという発見がありますし、この人のこのこぶしの特徴はなんだろうとか、コンサートでインプットした音を自分のやり方と比べて研究することもできて楽しいですね。

――そういえば昨年二十歳になられて、お酒の味も覚えられたようですが、第7世代の方々と飲みに行くことはありますか。

全員ではなかなか時間が合いませんが、でもこの間、八千代市でのコンサートの後、楽屋でミニ打ち上げをした際は少しお酒もいただいて、楽しかったです。あとは、二見(颯一)さんとは時々、飲みに行きます。話の内容ですか?ほとんどが民謡の話になってしまいますね。民謡界の今後についてとか。お互いにこう、民謡クイズを出し合ったりしましてね、さあ何県の民謡でしょうなんて(笑)。ほんと、楽しいです。

――最近はバラエティー番組でも活躍されています。特に『千鳥の鬼レンチャン』は徳永ゆうきさんとのコンビで大人気ですが、周囲の反響はいかがですか。

いつも応援してくださっているファンの方も、皆さん面白かったと言ってくださいます。またそれだけではなくて、「『鬼レンチャン』見ました」と言って、街で声をかけていただくことも増えました。『FNS27時間TV 鬼笑い祭』の時に出させていただいたのが大きかったと思いますが、本当に大きな番組に出演させていただき、ありがたいです。

――今後も歌以外のお仕事にもチャレンジしようという気持ちはありますか。例えば、お芝居とか。

お芝居は……、私がお芝居をすると全部時代劇になってしまうんですよ(笑)。2020年に細川師匠の45周年の記念公演が御園座であった時に、私が師匠のデビューまでの時代を演じたことがありまして。お父さん、お母さんとの別れのシーンで私が「お母さ~ん」と駆け寄るのが、どうしても腰が落ちてしまうんです。演出の先生から「それじゃあ時代劇だ。普通に走れないのか」と言われたのですが…。結局、お母さんの方から走り寄ってもらったという。いろいろ勉強しなくてはいけませんね。

――プライベートなお話も少しお聞かせください。三味線のバチ作りは以前からおっしゃっていましたが、最近は彫刻もされるとお聞きしました。

いや、彫刻やってますなんて語れるレベルではなくて、ちょっとやったら面白かったというだけで。先日、細川流の名取札を書かせていただく機会があって、その時の余った木片にお地蔵さんを描いて、周りを掘っていって、こう丸味を出してというふうにやっていったらすごく楽かったんです。私の中ではプチブームという感じですね。

製作のきっかけとなった、2023年9月18日初代・高橋竹山のお墓参り
お墓の三味線を持ったお地蔵様を模して、彫刻を製作中

――お料理を作るのもお好きだと伺いました。

最近は地方へ行くことが増えて料理をする機会も少なくなってしまいましたけれど、でも時々、自分の味付けのお蕎麦が食べたいと思うことがあって、そんな時は出汁をとって、みりんやなんかも入れてつゆから作ります。うちの母は私のお蕎麦を食べた後に、つゆの作り方が分からなくなってしまったというくらい美味しかったと言っていました。まだそばを打ったことはありませんので、今度そば打ちセットを買って挑戦したいと思っています。

――先ほどもふれましたが、早くも12月を迎えました。今年一年はどんな年でしたか。

あっという間の一年というのが本当のところです。4月に『望郷竜飛崎』を発売して、そのキャンペーンや細川師匠のコンサート、民謡や三味線の公演などで日本全国、いろいろな場所にうかがわせていただいて、新しいご縁にも恵まれた一年だったと思います。

――では、充実した一年を送れたということですね。

そうですね。充実と言えば新しいことに挑戦できた一年でもありました。三波美夕紀先生から長編歌謡浪曲をやってみませんかと、お話をいただいて、BSテレ東の『徳光和夫の名曲にっぽん2時間スペシャル<長編ドラマチック歌謡>』で、『元禄花の兄弟 赤垣源蔵』に挑戦させていただきました。浪曲の独特のこぶし回しや、そこに講談のテイストも入ってくるということで非常に難しかったのですが、収録を終えてみると楽しかったですね。

――来年に向けての意気込みや目標をお願いします。

第七世代の観点からいいますと、来年は全国、47都道府県を回ってみたいという目標を持っています。彩青自身としては、昨年ファーストコンサートが実現できましたので、来年は彩青の単独コンサートやライブをやらせていただけるよう頑張りたいと思います。

――では最後に、新曲『王手!』を改めてファンの皆さんにアピールしてください。

先ほどもお話ししましたが、『王手!』は歌いながら自らも励ましてもらっているような、〝人生の応援歌〟でございます。将棋の駒のように一歩前進、二歩前進とこの『王手!』で自分自身も成長しながら歌っていきたいと思っておりますので、皆さまにもたくさん聴いていただいて、歌っていただければ幸いです。一生懸命歌いますので今後とも、応援の程、宜しくお願い申し上げます。

彩青『王手!』ミュージックビデオ

彩青『王手!』

2023年12月13日(水)発売

品番:COCA-18192
価格:¥1,500 (税込)

【収録曲】

1. 王手! 作詩:多手石松観/作曲:市川昭介/編曲:南郷達也/歌・尺八演奏:彩青
2. 津軽よされ節【青森県民謡】
3. 王手!(オリジナル・カラオケ)
4. 津軽よされ節(オリジナル・カラオケ)*津軽三味線演奏のみ
5. 王手!(半音下げ オリジナル・カラオケ)
6. 王手!(2コーラスカラオケ)
7. 王手!(半音下げ 2コーラスカラオケ)

彩青『彩青 演歌・民謡〜唄の旅〜−北日本、東日本篇−』

発売中

品番:COCP-42143
価格:¥2,500 (税込)

【収録曲】

1. オープニング(口上)
2. 十勝馬唄【北海道民謡】
3. ソーラン節【北海道民謡】
4. 津軽よされ節【青森県民謡】
5. 津軽じょんがら節【青森県民謡】
6. 最上川舟唄【山形県民謡】
7. 佐渡の恋唄
8. 風雪ながれ旅(ナレーション入り)

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