沖ノ鳥島、南鳥島はどんな場所? 知られざる「国境離島」イベント開催、東京都が“行けない島”PRする狙い

沖ノ鳥島の周辺は“日本でもっとも厳しい海”とも言われている(写真提供:東京都)

日本の最南端、最東端として知られる「沖ノ鳥島」「南鳥島」。いずれも東京都に属するが、都心から約1800kmも離れた“絶海の孤島”であり、定期航路もなく、渡島手段の確保が難しいことから、民間人が簡単に近づくことはできない。

この“秘められた島”をテーマにしたイベントが、14日から26日まで葛西臨海水族園(東京・江戸川区)で開催される。ほとんどの人が訪れることのできない両島をPRする狙いについて、イベントを主催する東京都に聞いた。

473の島が「国境」に位置する

島国である日本には、周囲が100m以上の島だけでも約1万4000島あり、小さなものまで含めると10万島以上あると言われている。

そのうち473島(2023年2月2日現在)は「国境離島」と呼ばれ、国土面積(約38万㎢)の約12倍もある日本の領海と排他的経済水域の「外縁」を根拠づける重要な役割を担う。沖ノ鳥島、南鳥島も、そんな国境離島のひとつだ。

国境離島には人が住んでいる島も少なくなく、2017年に施行された「有人国境離島法」では、29地域148島が「有人国境離島地域」に指定された(※)。内閣府のサイト「日本の国境に行こう‼」を確認すると、礼文島(北海道)、八丈島(東京都)、佐渡島(新潟県)、屋久島(鹿児島)など、旅行先として人気の島々も多く含まれていることに驚く。

※ 各地域と島では法律に基づき、文化継承や、漁業・海洋調査などの活動拠点としての機能を維持するため、さまざまな取り組みが行われている。有人国境離島地域のうち、沖ノ鳥島や南鳥島を含む小笠原諸島や沖縄は「小笠原諸島振興開発特別措置法及び沖縄振興特別措置法」、奄美群島は「奄美群島振興開発特別措置法」に基づいた振興策が実施されている。

「沖ノ鳥島」には何がある?

沖ノ鳥島、南鳥島ともに小笠原諸島に属するが、本州との定期航路が就航する父島からはいずれも約1000km離れている。

沖ノ鳥島の緯度は、ハワイ・ホノルルとほぼ同じ。日本で唯一「熱帯」に位置し、年間平均気温は26.8℃、海水温は27.7℃と温暖だ。しかし台風の発生する海域に近く、例年多くの台風が通過することから、周辺は“日本でもっとも厳しい海”とも言われている(台風接近時には16mを越える波や50m/秒以上の強風に襲われる。年平均でも波の高さは1.3m、風速は6m/秒)。

礁外から島を見ると周辺の波の高さがよく分かる(写真提供:東京都)

沖ノ鳥島といえば、護岸コンクリートと消波ブロックに守られた姿をイメージする人も多いかもしれないが、実は島の全容は東西約4.5km、南北約1.7㎞、周囲11㎞の準卓礁(周辺部が浅く、内部が水深3~5mのサンゴ礁)。満潮時でも海面上に残る北小島、東小島が、前述のような厳しい自然条件による浸食を防ぐために直径約50mの護岸コンクリートと消波ブロックで囲まれ、上部はチタン製の防護網で守られている。

ナスのような形をしている沖ノ鳥島。礁内の面積は約5.8㎢で、東京ドーム107個分にもなるという(写真提供:国土交通省関東地方整備局特定離島港湾事務所)
消波ブロックや護岸コンクリート、チタン製の防護網に守られた北小島。沖ノ鳥島には他に灯台や観測施設などもある(写真提供:国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所)

「南鳥島」には何がある?

無人島である沖ノ鳥島に対し、南鳥島には「気象庁など国の職員が交代で駐在している」(都の担当者)という。沖ノ鳥島と同様にサンゴ礁でできた島だが、こちらは皇居とほぼ同じ大きさの約1.5㎢の島内に、滑走路や波止場、国の職員の駐在施設がある。

熱帯と亜熱帯の推移帯に位置し、年間平均気温は約25.6℃。気温変化は一年を通して小さい。日本最東端であることから、日本で一番早く初日の出を見ることができる。

島は正三角形に近い形をしている。最高標高は9m程度(写真提供:第三管区海上保安本部)

“行けない”島、なぜPR?

東京都には、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島といった、旅行でも訪れることができる国境離島が複数ある。そんななか、ほとんどの人が近づくことすらできない沖ノ鳥島と南鳥島を都がPRする狙いはどこにあるのだろうか。

「沖ノ鳥島と南鳥島は、東京都小笠原村に属しています。両島の周囲に広がる排他的経済水域は、それぞれ約42万㎢と約43万㎢で、いずれも国土面積(約38万㎢)を上回ります。

両島によってもたらされる海の恵みは、私たちの暮らしに欠かせないものであり、国土保全上とても重要な島です。東京都では、両島の重要性を多くの方に知っていただきたいと考え、今回のイベントを含めて情報発信に力を入れて取り組んでおります」(都の担当者)

14日から26日まで開催されるイベントでは、両島の「現在」「未来」をテーマにしたプロジェクションマッピングの上映やデジタルクイズラリーのほか、両島の様子を360°の映像で感じられるVR体験会(23日、24日限定)も開催される。

今回のイベントをきっかけに沖ノ鳥島、南鳥島に興味を持ち、行ってみたいと思う人も多いかもしれない。今後、現地への見学ツアーを開催する予定はないのだろうか。

「東京都では、現地へのツアーという形ではなく、VR技術を使って島を訪れたような体験をしていただけるツールを公開しております。今回のイベントに参加できない方でも、ご自宅などからWEBやYouTubeでご覧いただけますので、体験をしていただければ幸いです」(都の担当者)

■イベント概要
ホエールくんと大冒険!サンゴが育むみんなの島~東京都 沖ノ鳥島・南鳥島~
開催期間:2023年12月14日(木)~26日(火)
※12月20日(水・休園日)を除く
開催場所:葛西臨海水族園(東京都江戸川区臨海町6-2-3)
※入園料(一般700円、65歳以上350円、中学生250円)が必要です。小学生以下、都内在住・在学中学生は無料です。
開催時間:10~16時
※葛西臨海水族園の開園時間は9時30分~17時(入園は16時まで)

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