患者QOL向上商品・サービス市場に関する調査を実施(2023年)~シニアサポートサービス(介護保険外サービス)市場は拡大傾向、必要なときすぐに・自由に利用できる利点が評価され、今後増加傾向で推移する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の患者QOL向上商品・サービス市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、シニアサポートサービス(介護保険外サービス)市場の動向について、公表する。

1.市場概況

本調査では、何らかの疾病により通院・入院している人、あるいは介護を受けている人の生活を支える、あるいは疾病や治療により生じる症状(むくみ、脱毛など見た目の変化)へアプローチするという視点から、患者QOL(Quality Of Life)という言葉を使用し、患者の生活の質(QOL)の維持・向上に資する商品・サービスの市場を調査した。
患者QOLについては、社会的な側面や身体的な側面、精神的な側面に分類される。社会的な側面では患者の就労支援や各種の生命保険、生活支援サービス、介護保険外のシニアサポートサービスなどが挙げられる。また、身体的な側面については、がん患者向けのがん装用支援市場[医療用ウィッグ、人口乳房、組織拡張器(乳房用)]、浮腫/むくみなどの症状を改善する医療用弾性ストッキング市場などが、精神的な側面としては患者向けのオンラインコミュニティ、疾患啓発サイトに加えて、ePRO(電子的患者報告アウトカム)システムなどが注目されている。

2.注目トピック~介護保険外のシニアサポートサービス市場(生活支援、身体介護、移動支援)

介護保険外サービスとはその名の通り介護保険が適用されないサービスであり、主に介護保険の被保険者である高齢者の生活支援や身体介護、移動支援を提供するシニアサポートサービスである。介護保険を利用しない場合は、当然ながら利用者の要望や状態に合わせて、サービス内容や時間を柔軟に設定することができる。だが、費用は全額自己負担となるため、料金は介護保険利用時と比べて高額になる。

介護保険外サービスを利用する利点としてはまず、必要なときすぐに・自由に利用できるという点にある。また、要支援・要介護認定を受けるほどの状態ではないという高齢者の利用だけでなく、本人の心理的なハードルなどから要介護認定を受けていないが、生活での介助は必要という際に利用されるケースもあるとみられる。加えて、要支援・要介護認定を受けており、介護保険サービスに加えて全額自己負担の保険外サービスを利用する、というケースもある。
2022年度のシニアサポートサービス(介護保険外サービス)市場規模は、利用者支払い額ベースで50億円と推計した。

3.将来展望

シニアサポートサービス(介護保険外サービス)市場規模は、今後増加傾向で推移すると予測する。
厚生労働省「介護給付費等実態統計」によれば、男女とも65~79歳まででは、介護給付を受けている割合は10%以下である。現状では、全額自己負担の介護サービスは手軽に煩雑に利用できるという値段ではない。しかし、今後、要支援・要介護認定を受けるまでにはいたらない、状態が軽いとみられる高齢者に対する、生活支援や身体介護、移動支援などのサービスにも成長の可能性があると考える。また、介護保険が適用されるか否かを問わず、高齢者が必要とするであろうサービス・社会資源に関する情報をオンライン上でワンストップで取得し、利用者本人やその家族が情報を入手し、判断できる環境を整備することも必要だと考える。
今後、医療技術の進歩や平均寿命の延びとともに、患者一人一人の生活全体を考えサポートする(患者QOLの維持・向上)という視点が一層重要になる見通しである。

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