茨城県養殖マサバ初出荷 生食用 15日、飲食店に500匹 海洋高生が餌やり

マサバの養殖で自動給餌器に餌を入れる海洋高の生徒=ひたちなか市和田町の那珂湊漁港

茨城県は実証事業として那珂湊漁港(同県ひたちなか市)のいけすで約1年間養殖してきたマサバを15日、初出荷する。天然ものに対し、情報通信技術(ICT)を活用して脂肪量などを調整することで年間を通じて良質に育てられる上、寄生虫アニサキスの心配が少ないため生食用として期待。餌やりは県立海洋高の生徒が担ってきた。飲食店などに計約500匹を無料で提供後、年明けには小売店で販売される。

県は昨年11月から漁港内のいけすで、マサバの稚魚1万300匹を養殖してきた。アニサキスの寄生リスクが低く、刺し身で食べられるなど高い収益性が見込めるという。餌で脂肪量を調整できるため、脂が乗った良質なマサバを年間を通して提供できると期待する。

いけすは海洋高水産クラブの生徒が管理。部員9人がタブレットやスマートフォンで日々観察し、自動給餌器への補充やいけすの見回りなどを担ってきた。初出荷を控え、1年の宮田海斗さん(15)は「自分たちが育てたマサバを多くの人に食べてほしい。地域活性化に貢献できたらうれしい」と話した。

茨城県のサバ類の漁獲量は全国トップクラス。農林水産省によると、2021年は7万3800トンで全国1位、22年は3万3000トンで2位だった。県水産試験場(同市)によると、今年は茨城県沖への到来が遅く、サイズは小さめという。

県はこうした気候などによる漁獲量の変動に備えるため、海面養殖業を発展させたい考え。マサバ養殖の実証事業を成功させ、将来的には民間業者と協力し、特産化を目指す。

15日の初出荷分は、県内で水揚げされた魚介類やその加工品を扱う「いばらきの地魚取扱店」のうち、希望した26店舗に提供する。来年1~2月には小売店に計約1500匹を出荷し、販売される。県はいずれも無料で提供する。

すでに来年度の出荷を目指し、新たなマサバの稚魚2万5000匹の養殖を始めている。県水産振興課の冨永敦課長は「茨城の新たな特産品として定着させたい」と期待を込める。

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